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「そんなお父様!」

 カレイナが声をあげた。

「お前はよほど父親思いらしい。一緒に処刑されたいと」

 美丈夫の言葉に、カレイナが首を激しくふる。そしてハッとして上目使いで美丈夫を見た。


「私はどんな扱いでも受けます! あなた様の慰みとなっても構わないですから! ですから、お父様の命だけでも!」

 ルーナはカレイナの言葉に首をゆるゆるとふった。その表情は嫌悪感に溢れている。

「口が塞げないなら、今すぐここで処刑するしかなくなるが」 

 カレイナが真っ青になって口をつぐんだ。


「どうだ、ルーナ、皇太子の案には満足したか?」

 美丈夫の言葉に、ルーナは首をかしげる。

「……わからないわ。私はこの人たちの一番の幸せを壊したいって気持ちしかなかったから。もうそれをやり遂げたから、どうでもいいわ」

 ルーナの光のある目は、もはや6人など見てはいなかった。美丈夫がククク、と笑う。


「ルーナは甘いな。私ならば、全員処刑の上、血のつながりのある者は全て根絶やしにしてしまうがな」

 美丈夫の言葉を聞いて、一部の人間たちがぶるりと身ぶるいした。

「そんな下らないことで手を血に染める必要などないわ。あの人たちと同じになってしまうだけよ」

 ルーナが首を振る姿に、美丈夫が愛おしそうにルーナの頬を撫でる。


「ならば、皇太子の案、受けよう」

 美丈夫の言葉に、頭を下げたままの皇太子が、ホッと息をついた。

「それと、『魔の森』との不名誉な名前はどうにかしてくれないか。お前たち人間たちは忘れてしまったのかもしれないが、あの森を統べる私との盟約でこの国の平和は保たれている。それを、忘れるな。……次、もしあの森を荒らすような輩がいれば……もう、盟約は反故にする。そう、王に伝えてくれ」


「ハッ。森の王よりの伝言、間違いなく王に伝えます」

 皇太子がより一層頭を下げた。

 ルーナがホッとして美丈夫を見れば、美丈夫はとろりと甘い眼差しでルーナの腰を抱いた。

 ルーナと美丈夫はゆっくりと会場を後にする。

 その間、誰も顔を上げる人間はいなかった。


 二人の気配がなくなると、ようやく皇太子は息をついた。

 伝承として聞いてはいたが、実際に会った人間はここ数百年いないと言われていたため、どう対処するのが正解だったのか、終わってしまった今でもわからなかった。


 皇太子が立ち上がると、第3王女も立ち上がる。第3王女も、あの美丈夫が誰なのか理解している表情だった。そして、他の貴族たちが恐る恐る顔を上げた。

「お前たち、先ほどの話の通りだ。メソフィス伯爵家とダーカン侯爵家は爵位をはく奪、国外追放とする。メソフィス伯爵については、先程言った通り処刑とする。加えて、メソフィス前伯爵夫妻の殺害および、ルーナ伯爵令嬢の殺害未遂に関わりのあった者も同等の処罰とする」

 皇太子は会場を見回して、貴族たちのちょっとした変化も見逃さないようにした。

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