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「そして、カレイナは……私の婚約者であるアーノルドが欲しくて欲しくてたまらなかったんですわよね?」
ルーナの言葉に、カレイナも頭を下げたまま、首を激しく横にふる。
「あら、私の目を盗んでアーノルドを体でおとしてしまったのに?」
なおもカレイナは首をふり続ける。
「私が森に捨てられる前から、二人の関係には気づいていたわよ? 私を殺して、そしてようやく大手をふって婚約することができたのよね?」
まだ首をふり続けるカレイナから、ルーナはアーノルドに視線を移した。
「アーノルドも、美味しいお茶をいれてくれてありがとう」
にっこりと笑うルーナの声に、ピクリとアーノルドが反応した。
「正式に婚約破棄をする理由がないから、私を亡きものにするために手を貸すなんて、よほどカレイナの体は素晴らしいんでしょうね」
アーノルドが力なく首を横にふる。
「私が大好きなお茶に薬を混ぜるなんてことをしてくれたお陰で、私はあのお茶を飲めなくなってしまったのよ。本当に素敵な裏切りをありがとう」
そのルーナの瞳は、アーノルドの両親に向かう。
「そして、おじさま、おばさま。まさかお二人まで心を悪魔に売り渡してしまうなんて思いもよらなかったわ」
アーノルドの両親も激しく首を横にふる。
「あの日はおじさまもおばさまも、妙にお茶を薦めてきたのよ。まさか、アーノルド可愛さにあんなおぞましい計画に手を染めるなんて……私の両親にも直接毒をすすめたのよね? 叔父上の計画とはいえ、本当に、おぞましいわ。信頼していたあなたたちからすすめられたら、私の両親は疑いもしなかったでしょうね。私のように」
はぁ、と大きくルーナが息をはいた。
「ルーナ、大丈夫か?」
美丈夫がルーナを支える。
「ええ。大丈夫よ。ちょっと喋り疲れただけ」
美丈夫がうなずいて、皇太子を見た。
「さて、この6人は殺人に手を染め、自らの益を追い求めたわけだが、どう対処する?」
皇太子がおずおずと顔をあげる。
「この2家の爵位を剥奪し、国から追放いたします」
「そ、そんな!」
声をあげたメソフィス伯爵に、皇太子が冷たく視線を向ける。
「私は忠告したはずだ。口を開くなと。これでも十分温情をかけたつもりだったが……もう救いようがない。メソフィス伯爵は、処刑いたします」
皇太子が美丈夫に向け頭を下げた。
メソフィス伯爵の顔は、色がなかった。