表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

「い、生きていたのね、ルーナ!」

 我に返ったカレイナがルーナの手を取ろうとしたそのときだった。

 パシン、とその手がはたかれ、会場がざわめく。


「な、何をするんだ!」

 アーノルドが憮然とした表情で進み出る。アーノルドが睨み付けたのは、正体不明の美丈夫の方だった。カレイナの手を振り払ったのは、美丈夫だったからだ。


「汚ならしいその手で、我が番に手を触れないで欲しいからね」

 ざわめきが更に広がる。

 『汚ならしい手』という言葉と、『番』という聞きなれない言葉がざわめきの主な理由だった。


「汚ならしいとはなんだ! 我が婚約者を侮辱するとは、許せん!」

 アーノルドが強い口調で反論する。

「本当のことを言って、何が悪い?」

 美丈夫の表情は冷たくアーノルドを見下ろしている。


「何だと?!」

 アーノルドが美丈夫に掴みかかろうとした瞬間、アーノルドの体が後ろに吹き飛ぶ。ガシャンガシャン、と皿が床に落ちて割れる。テーブルの足にアーノルドがぶつかったせいだった。


「何をするの!?」

 カレイナがアーノルドにすがり付く。アーノルドは美丈夫をにらみながら立ち上がる。

「何をするんだ!」

 アーノルドの表情は、屈辱で歪んでいる。会場にいる人々が見たこともない表情だった。


「汚い手で触れるな。穢れる」

 美丈夫は表情を変えずに冷たい目を向けたまま告げた。

「我々の婚約パーティーに突然現れて、パーティーを壊したあげく、我々を汚いなどと言う権利がどこにあるんだ!」

 アーノルドは興奮して顔を真っ赤にしている。


「罪を犯した人間を汚いと言って何が悪い」

 『罪』という言葉に、また会場がざわめいた。

「罪など犯していない!」

「変な言いがかりをつけるなんてひどいわ!」

 アーノルドは激昂し、カレイナが泣き出す。


 先程までお祝いムードに溢れていた会場は、一変していた。


「一体、どうしたんだ」

 屋敷の奥にある応接間で王族と歓談していたカレイナとアーノルドのそれぞれの両親が、騒ぎを聞き付けて駆け寄ってくる。

 その後ろには、皇太子と第3王女の姿もあった。


「ルーナ」

 どちらの両親もが、驚愕で目を見開く。4人ともルーナの顔をよく知っているからだ。

「ルーナ? 亡くなったルーナ・メソフィスのことか?」

 ルーナの顔までは覚えていない皇太子が、首をかしげる。


「間違いないわ! ルーナ、ルーナなのね!」

 感激した表情の第3王女が、ルーナに抱きつく。

 第3王女は、ルーナの親友であり、カレイナの学友でもあったためこの場にいるようなものだった。


「ヴィアンカ、久しぶりね」

 ルーナも懐かしそうに頬を緩める。

 今までとは違って、美丈夫もにこやかに二人を見ている。


「ル、ルーナ……どうして……」

 メソフィス伯爵が、ようやく声を絞り出す。

「魔の森に置いてきぼりにして殺したはずなのに、生きているのが不思議か」

 美丈夫の『魔の森』という言葉と『殺した』という言葉に会場が更に騒然となる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ