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トラブル対策と街の味を知る

 夕日の赤に包まれた町並みは昼間とはまた違って美しく、まだ石で作られた町並みを見慣れていないグルにとってはどこもかしこも綺麗に見える。実際、インディゴの街は綺麗であり観光名所にもなっている。


 色々な所を見まわしているグルの姿は、田舎から出てきたばかりの子供なのだろうと一目でわかるため、周りの人々からは生暖かい目を向けられていた。


「あれ?グルくんじゃないか、どうしたんだい?迷った?」


 そんな彼に声をかけたのは門番の男性だった。本日の職務を終えたようであり、制服から私服に着替えている。


「迷ってはいない、ちょうど大人を探していたんだ」


「大人を?何か困りごとかい?」


「あい、力を貸してほしい」


「そうか、私で力になれるかは分からないがまずは話を聞こう。ちょうど晩飯を食いに行くところだったから一緒にどうだい?」


「うん」


 二人は値段の安い飯屋に入った。グルは先ほど自分で作ったものを食べたばかりだったのだが、初めて入った街の飯屋からは空腹を刺激するとても良い匂いがして、すぐにでも食べられるような気がした。彼は育ち盛りで食べ盛りなのだ。


「ここは値段の割に味はとってもいいんだ、なんでも好きなものを頼んでいいからね」


「頼みたいのだけど、文字は読めても意味が分からないんだ。全部聞いたことがない」


「そうかそうか、うーん、好き嫌いはあるかい?無い?なら最初は私のおすすめをご馳走するよ。

もし気になる料理があればきっと教えてくれるよ。ここの店主さ、顔はおっかないのに子供好きなんだ」


「おい、聞こえてるぞ」


「悪い悪い、でも本当の事だからちょっとは笑顔作れよ」


ぬっと現れた大男は確かに厳つい顔をしていた。しかしこの手の人間は村で散々見ていた事もあってグルにしてみれば恐怖の対象ではない。


「大丈夫、怖くはない」


「そうか、いつでも来い」


 言葉少なな会話で通じ合った様子の二人を見て、門番の男は楽しそうに酒を飲んでいた。出された料理は村では食べた事の無い物ばかりだった。どれもこれも美味で、グルは久しぶりに動けなくなるほど腹を膨らませていた。


(しまった、一流の狩人が満腹で動けなくなるなんて。でも、このプルスというのもミンカローというのもとんでもなくおいしい。細かい肉と玉ねぎが入っているのは分かるけれどどうやって作ったのか全く分からないや。こっちのはミルクとチーズを焼いた…?だめだ、わからない…でも美味しかった。ガーネットが僕の作った料理が街のと同じくらい美味しいと言っていたけれど全然違うじゃないか!)


「はは、どうやらお気に召したようだね、大丈夫かい?」


「あい…食べ過ぎたけど満足だった。街はすごい……」


「なんで落ち込んでるんだ?おっと、忘れるところだったな。お腹が落ち着いたら早速話を聞こうか。何に困っているんだい?」


「実は、友達というものについて教えてほしい」


「とも…だち?」


「僕は最近村からここに来た。ガーネットが学園に入れてくれると言ったから。村には僕と同じくらいの子供がいないからどういうものか分からない。なので対策とどういう問題が起きるかという想定を教えてほしい」


(いやいや、対処と問題って何?なんで学園の同級生が来るだけでこんなに深刻そうな顔をしているんだ?いじめ?しかし同世代がいなかったとなると……村では大人たちに虐げられていたのか?そういえば彼は狩りをしていたな…こんな小さい子供が普通あんなに狩りに慣れているものだろうか?まさか村の人々に強要されて!?それを見かねたガーネットさんが引っ張ってきたのか!?だから彼はこんなにしゃべり方もぎこちないのか……?なんてこった、軽い気持ちで相談を受けてしまったが実は大問題だったんじゃないか?私が、私が人の温かさを教えなければ!)


 彼の口調はアーガットやゲイル爺のものが混ざった結果の産物であり、虐げられるどころか少しでも怪我をしようものなら代わる代わるやってきた村人たちに薬草漬けにされるほど過保護な環境で育てられていたのだが、門番の彼はそれを知らない。


 子供らしい見た目と、それに見合わない狩りの腕前、そして狩人的な謎の思考でまだ見ぬ友人への対策を考えるグルという絶妙な組み合わせが門番の勘違いを引き起こしていた。凡そアーガットのせいであるが、狩りしか知らない優しい男に罪はない。


 やや酒の入った彼はグルの過酷な境遇を思い、時に涙を浮かべながら友達というものを熱く語っていた。そして、もし困った事があればいつでも自分の所に来るようにとグルの頭を撫で、彼を魔法学園の入り口まで見送り去って行った。


 結局対策らしいものは教えられず、友達というのも一緒に遊んだりたまには喧嘩をしたりする良いものであり、自然と分かると言われてしまったのでグルは考える事をやめたのであった。


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