第24話 勇者ご乱心
『クリス』
「侵入者が来た」と言って勇者様がいなくなってから数分。
アルト様は戻ってきました。
しかし、その様子がおかしいです。
「……」
最奥の部屋に入ってきた勇者様は、うつろな目つきでこちらを見つめるのみ。
「あのっ、勇者様?」
いつものように微笑みかけるわけでもありません。
近づいてくる勇者様は、よくみると汚れています。
血の、匂いも感じました。
怪我はしていないようですが。
なら、返り血でしょうか。
「何かあったのですか?」
私が再び問いかけるも、答えは返ってきません。
そして、勇者様は無言で剣を振り上げました。
「きゃっ!」
かろうじて避けた床に、剣の傷がつけられます。
危なかった。
反応が遅かったら怪我をしてしまっていたかもしれません。
「誰も来ない所をみつけないと確実にそうぜったいそうだ手足を切り落として幽閉しようそうしようそれならきっと危険性を低くできるいっそ魔王にでもなってあの城に居座るというのはどうだろうか邪魔なやつらは殺しつくして掃除しないと二人で絶対に幸せになるんだなれなきゃおかしいそうでなければなんのために今まで頑張って」
勇者様は小さい声で何か言っているが、断片的にしか聞き取れませんでした。
危機感が働いたのでしょう。
考えるよりも前に、私はその場から逃げ出していました。
その時、なぜかダンジョンの罠は作動しませんでした。
トラップも、動かないままです。
不思議に思いながらも私は、やみくもにダンジョンの内部をかけていきました。
騙されたと、そう思ったのです。
やはり勇者様は、私を罠にかけていたのでしょう。
私を閉じ込めて、どうにかするつもりだったに違いありません。
何がきっかけかわからないけれど、豹変した勇者様は私に襲い掛かってきたから、それが証拠です。
何らかの目的はすでに達成したのか、それとも私を利用する以外の方法が見つかったのか。
いずれにせよ、あの人の元にいたら殺されてしまうでしょう。




