優しいお姉さんにお金払って罵倒してもらうだけ
あ、お久しぶり。また来てくれたんだね。
どうしたの?私を指名してくれたってことは、またお姉ちゃんに意地悪いわれたくなっちゃったの?
でも、どうしてお金払ってまでお姉ちゃんに悪口言われたいのかな?
だって君ならお金払わなくても女の子に悪口なんて言われ放題でしょ…あっ、ごめんね。お姉ちゃんすっかり忘れてたよ。
君なんて、みんなの悪口のネタにすらしてもらえないんだもんね。
ごめんごめん、そんな当たり前のことなのに気付けなかったね。
だって、たとえ悪口でも君に話しかけるなんてちょっと嫌だもの。
見るからに弱そうだし、暗そうだし、話しかけただけでも好きになられそうでいやだし。
君みたいなタイプの人って、すぐ勘違いするんだよね。自分でもわかってる?
女の子にちょっと声かけられただけで、もしかして自分に興味があるんじゃないかって舞い上がっちゃうの。しょうがないおバカさんだね?
女の子からしたら、仲のいい男の子の知り合いなんていーっぱい居るんだよ?
一緒にご飯食べに行ったりお話したりする男の子の友達なんて何十人もいるし、彼氏だって当然いるに決まってるよ。
かっこいい男の子なら、みんないくらでも見慣れてるの。それなのに、ちょっと用事があって話しかけちゃっただけの君みたいな人に、本気で惚れると思う?
なにか勘違いしてない?もしかして、君の可哀そうな人生の中で唯一話しかけてくれた女の子だからって、無条件に好きになってない?
それって、女の子にもすっごい失礼だよね?
それに君とほかの男の子を比べたら、君の方を選ぶ理由なんて何一つないよね?
でも、勘違いしちゃうのもしょうがないよね。
女の子とちゃんとお話したことないもんね?
もしかして、コンビニとかの店員さんがちょっと優しかったからって、その子に告白される妄想をしたことがあるんじゃない?
あ、もしかして図星だった?ごめんね?
でも、その自信はどこから来るのかな?
自分は優しいからいつかきっと誰かが好きになってくれる、とか思ってない?
違うよ、君は優しいんじゃなくて、ただ女の子とまともに会話しようとする度胸もないだけだよ?
他の男の子はみーんな君の見えないところでいっぱい努力して、女の子を喜ばせるために頑張ってるの。ファッションの勉強をしたり、面白い話題を探したり、デートスポットを調べたり。
ところで君は何をしてるの?
何もしてなくてもただ優しければいつか誰かが告白してくるなんて、まさか思ってないよね。
何歳までそんな小学生レベルの気持ちでいるのかな?
君ができるのはせいぜい、こういうお店で女の子にお金払ってお話してもらうぐらいだもんね。
でも、こういうお店の女の子が優しいのは当然だよ。それがお仕事だから。
それでも時々勘違いしちゃうお客さんがいるんだよね。本当に迷惑でお姉ちゃん困っちゃうな。
お金貰ったらお客さんには優しくしなきゃいけないの。どんなに生理的に受け付けない人でもね。
それなのに、普段モテない人はちょっと優しくされただけで調子乗っちゃうから、何回も何回も指名してくるし私と仲良くなったって勘違いするの。
君のことだよ?分かってる?
でも心配しないで。
お金さえ払ってくれればお話はちゃんとしてあげるから。
どれだけ気色悪くても、ストレスたまっても、それがお仕事だから。
さもないと、お姉ちゃんの代わりに君に話しかけられる子が可哀そうでしょ?
お姉ちゃんは慣れてるからいいけど、ほかの女の子が君と話したらみんな泣き出しちゃうよ?
え、もしかして自覚がなかったの?ごめんね?君がそこまでおまぬけさんだとはお姉ちゃんも気付いてあげられなかったよ。
可哀そうに。
あ、もちろん君のことじゃないよ。
これからの人生で君に好かれちゃう女の子たちが可哀そうってこと。
泣きたかったら泣いちゃってもいいんだよ?
ここならほかの人の迷惑にならないから。
ほら、君の泣き顔なんて、迷惑以外の何物でもないでしょ?
え、待って、本当に泣こうとしてる?お姉ちゃんこんな我慢弱い人初めて見た。
これまでお姉ちゃんとお話してきた男の子たちでももうちょっと我慢強かったよ?
それはちょっとびっくりかな。まさかこんなに君が情けない男の子だったなんて。
間違いなく君が最下位だね。
もういいから早く泣いちゃってよ、我慢されてても見苦しいだけだから。
…あーあ、本当に泣いちゃった。
はあ、面倒くさいな。
言っておくけど、慰めてあげるサービスとかはないからね?
いくらお金貰ってもそれだけは嫌だから。
だって、泣いてる君の顔なんて正面から見たくないもの。
普段の顔でも耐えるのが精一杯なのに、そんな見苦しい顔…
あ、ごめんなさい。本当にこっち見ないでくれる?
君って本当にダメだね。
本当に恥ずかしいね。君がダメ人間だってことも、お姉ちゃんにこうしてはっきり言われなきゃ気付けないんだもんね?
ひとつひとつ、わかりやすく教えてもらわないと君は分からないんだもんね。
部屋で一人寂しく泣いててくれればお姉ちゃんも楽なのに、君はそれもできないんだね。
しょうがない人だね。大人なのにこんな甘えんぼなんて恥ずかしい恥ずかしい…
ねえ、まさかお姉ちゃんに悪口言われて喜んでるなんてことないよね?
それはさすがにお姉ちゃんでもどうしようもないよ?
え、嘘だよね、こんなこと言われて喜んでなんていないよね?
お願いだからそれだけはやめてね?
いくらお姉ちゃんでも、そんな人と話してるなんてこれ以上耐えられないよ。
それならまだ君を慰めてあげる方がましだよ?
お願い、ねえ、分かったから。本当にやめて。喜ばないで。
お願いだから。ほら、それなら慰めてあげるから許して、ね?
はあ…うん、辛かったね、お姉ちゃんに意地悪言われて苦しかった?
よしよし、いっぱい泣いてすっきりしたね。
…えーと、そうだね!君はダメなんかじゃないよ。
君にもいいところはいっぱいあるよ!とにかく頑張って!
後は…そうだね、もう思いつかないや。
慰めようとしてるだけで鳥肌立っちゃった。
ごめん、本当に無理だからもう帰ってください。お代は返しますので。お疲れさまでした。