第7話 人生終了のお知らせ。
朝目が覚める。
外を見ると既に日が昇っていた。
俺は大きなあくびを一つするとソファから降り身体を伸ばす。
昨日は割と遅くまで掃除をしたためかまだ少々眠い。
ティアドラが寝ていたソファを見てみるとモゾモゾと寝ている。
どうやらまだ起きる気はないらしい。
「もう結構明るいけど、起きないのか?」
すると昨日掛けた毛布から彼女の手が伸び出てき、ひらひらと降る。
まるであっちへ行ってろとでも言うかのように。
……どうやらまだ寝足りないようだ。
本当にこの人は俺が強くなるのに協力してくれるんだよな?
こうして俺の弟子生活の一日目がスタートする。
俺は昨日ティアドラから聞いていた家の外にある井戸へと向かい、水を汲み、顔を洗う。
山の井戸水は非常に冷えており、一気に目が覚めた。
さて!お師匠様が起きるまで何をしようかね!
俺は腰に手を当て、考える。
……あれ?そういえば俺の朝ごはんは?
そういえば昨日から何も食べていない。
ぐぅと腹の虫が鳴る。
家の中に入り、ティアドラを起こすそうと試みるが如何せん起きる気配はない。
ちなみにこの家の中に食料がないことは昨日の掃除で確認済みだ。
「……なにか食べれそうなものでもさがしてみるか!」
ここは山の中。
自然の実りやら何やらがたくさんありそうだ。
台所の掃除は昨日ある程度済ませたため、材料さえあれば何かしら作れそうではあった。
炊事は孤児院でもやってたしね!
俺はまだ見たことはないが、こういった人気のない山や森には狂暴な魔物がいるとシスターが言っていたことを思い出す。
魔物は俺が転成の際に襲撃してきた魔族とは異なり、人型でない知性の低い生き物を指す。
近くに魔物もいるかもしれない。
ちょっと怖くなったのであまり遠くは行かず、家が見える範囲で食料を探すことにした。
「お、これ食べれそうだな」
俺は木になっている林檎のようなものを取る。
爪でその物体の表面を傷付け、中の匂いを嗅いでみる……特に匂いはない、果物ではないのであろうか。
俺は傷付けた表面を腕に押し当てる……元の世界のサバイバル番組でやっていたパッチテスト?とかいうやつをうろ覚えながら実践してみる。
押し当ててしばらくして炎症しなかったら問題ないんだっけ?
しばらく時間が経っても腕に変化はないので問題ないと判断する。
ってかお腹が空きすぎて早く胃に何かを入れたい。
少量だがかじってみる。
触感と味はジャガイモに似ていた。ただジャガイモよりもクセが強く、苦みがある。
だが火を通せばこれはこれで美味しそうだ。
俺はこの林檎のようなものを『ジャガリン』と名付け、手に持てるだけ採取し、家に戻ることにした。
俺は井戸から汲んできた水でジャガリンを洗い、残った水を鍋に移す。
昨日の掃除で出てきた古めかしい布を火種に、これまた昨日の掃除で発掘された火打ち石で火を点ける。
これぐらいなら孤児院でも毎朝のようにやっていた。
あとは森で拾った枝で火力を上げ、鍋を火にかける。
ジャガリンの中まで火が通ったのを確認する……うん、もういいかな。
すごくシンプルな茹でジャガリンの完成だ。
ちなみに調味料は塩のみ。
奇跡的にこの家の台所には塩がたくさんあった。
何かに使っているんだろうか?
……湿気を吸ってカッチカチだったけどね。
そいじゃ両手を合わせて……
「いただきます」
少し遅い朝食にかぶりついた。
こ、これは……。
火を通すことでクセがなくなり苦みが際立つ。
だがその苦みはマイルドになっており塩が良い塩梅で……美味い。
3つ程食べ終わった頃、大欠伸が聞こえる。
どうやら俺の師匠はようやくお目覚めらしい。
ティアドラは寝ぼけ眼で台所まできた。
「ワシの目を盗んで何を食っておるんじゃお主は。……ワシにも寄越せ」
俺は茹でたジャガリンを一つ手に取り、ティアドラへ放り投げる。
ティアドラは受けとったジャガリンをマジマジと見つめ、咀嚼する。
…………彼女の顔が段々と青くなっていく。
「苦ッ!!なんじゃこの食べ物は!……こんなものは食えん!!」
美味しいんだけどなぁ。
俺は鍋からまた一つジャガリンを取り、食べる。
「お主、よくそんなものが食えるな」
ティアドラは俺に恐れおののいているようであった。
「この苦みが美味いんだよなぁ」
「子供のくせにジジイみたいな味覚じゃのう。……そういえばこれ、どこから持ってきたのじゃ?」
ティアドラはジャガリンを指差す。
「これって……ジャガリンのこと?家の近くの木に成ってたから取ってきたんだ」
「ほう、ジャガリンというのか……ん?この家の近くの木?」
ティアドラは窓から外を見る。
少し離れた木にジャガリンが成っているのが確認できた。
「おい、お主アレを食ったのか!?」
ティアドラは急に焦りだし、俺の肩を掴む。
……あれ?もしかして食べてはいけないものだったの?
「食べちゃだめだったのか?……ごめんなさい!」
「いや、ダメってわけでは……いや、ダメなのか?……シリウス、お主、身体に異変はないか?」
急に俺の身体を気遣いだす。
ん?なんかおかしいぞ?
「特になんともないんだけど……この食べ物って……」
「食べ物ではない、毒じゃ」
この時、俺は人生が終わったと思いました。




