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第65話 竜王剣『ティアドラ』、その能力。

「この武器、か」



俺は手に持っている曲刀に目をやる。

白銀の輝きを放つ曲刀。

その刃には読むことの出来ない文字のようなものが刻まれており、柄の部分は竜の鱗のような装飾が刻み込まれている。



「先ほどの戦い……貴方、この武器を使って炎を吸収させてたわよね?あれは何?()()()()()()()()()()()()わ」



そう、イブキが言うようにこの曲刀は普通の武器ではない。

では何か。

俺はおおよその見当がついていた。



「これはティアドラが……死ぬ間際に託してくれた曲刀、竜王剣『ティアドラ』だ。そしてこれは……たぶん魔剣、なんだと思う」



俺の言葉に彼女は目を丸くする。



「ティアドラ様と同じ銘の曲刀……それに魔剣ですって?」



俺は頷き、言葉を続ける。



「あぁ、ティアドラが死ぬ直前、何かの魔法を唱えたんだ。……俺の力となるように、そう願いを込めていた。そしたら……ティアドラの身体が消えて、この武器だけが残っていた。俺には……自身の魂を結晶化させたかのように見えた」



あれはもしかしたら自身の身体を魔剣へ変化させる魔法なのだろうか。

あのとき……ティアドラは今のこの時であれば俺に力を……魔剣を与えることができると言っていた。

何か条件があるとでも言うのだろうか。



「どういうことなのよ。ティアドラ様が……その曲刀になったとでもいうの?」



その言葉に俺は首を横に振る。

そしてこれまで頭の片隅に置いていたことを口にする。



「分からない……なぁ、知ってるなら教えてくれ。……この世界にある魔剣は……全て誰かの身体を変化させたものなのか?」



ティアドラは魔剣になった。

そしてこの世界に魔剣や魔具と呼ばれる武器や防具は幾つか存在している。

恐らく勇者ら4人が装備している武器も。

なれば……それらの武器達は……この曲刀と同様に誰かの身体を変化させたものなのだろうか。



「し……知らないわよ、そんなこと……」



イブキは本当に知らないようで首をぶんぶんと横に振った。



この世界は分からないことだらけだ。

女神の目的や突如現れた4人の勇者。……女神を襲撃した魔王に…この魔剣。

いつかこれらの謎が解明できる日はくるのだろうか。



「そうだよね……。まぁ、分からなければ調べればいい、か」



ティアドラも俺と出会う前までは一人で色々と薬の研究を続けていた。

ならば俺も同様に研究するだけだ。

新しい目標が一つできた。……いや、二つか。

一つはこの世界に存在する魔剣、魔具の正体。

そしてもう一つ。もしその正体が誰かの身体と言うのなら……?




俺は否定するように首を振る。

……希望を持つのは止めておこう。



イブキの方を見ると彼女は何か考えているようだった。

しばらくして口を開く。



「魔界に帰ることがあれば……その時他の魔族に聞いてみようと思うわ。魔族は寿命が長いの。それこそ数百年生きている人とかもいるわ。……何か知っているのかも。……あの吸血鬼とか」



どうやら彼女には思い当たる人がいるらしい。

だがあまり好意的な感情は抱いていないようだ。

俺は彼女に礼を言うと彼女が言葉を続ける。



「いえ、これくらいお安い御用よ。それはそうと……もしその曲刀が魔剣ということは……なにかしら固有の能力があると思うのだけれど……さっきの炎を吸収したのがこの曲刀の能力ということなの?」



魔剣は固有の能力を持つ。

かつてティアドラから魔剣のことについて聞いた時もそのようなことを言っていた気がする。

そして、この曲刀を手にした瞬間、俺にはこの曲刀の使い方を瞬時に理解することが出来た。



「そうとも言えるし……そうじゃないとも言えるね。この武器の固有能力の名は……『孤独の共有者』。そしてその効果は……『俺と全く同じように魔力を持っていない』ことなんだ」



俺はそう答えると彼女は理解できなかったようで首を傾げる。



「まぁ……実際見てみたほうが早いかもしれないね」



そう言って俺は懐から赤い丸薬を取り出す。



「これは……さっき使った攻撃力強化の丸薬。そしてこれを……こうする」



俺はそのまま丸薬を曲刀に押し当てる。

すると……。



「丸薬が……消えた!?」



そう、その丸薬はまるで曲刀に吸い込まれていくかのようにその姿を消していく。

そしてその代わりに曲刀の刀身が丸薬と同じ色の淡い光を発していた。



「この曲刀はこのように薬を吸収する。そして……」



俺は先ほどと同じように近くの木に向かって水平切りをする。

すると風を切る音を放ち切断した。……眼前にあったはずのもの全てを。

近くには大きな岩があった。それも見事に両断されていたのだ。



「俺と同じように薬の効果を極限まで発揮することができる。攻撃力強化なら単純に武器としての性能が向上するみたいにね。……これがこの曲刀の能力……俺と同じように魔力を持たないからこそ発揮できる能力だ」



そう言って俺は曲刀を鞘へと納める。

そして切り株に座りなおし、水筒から直接水を飲む。

イブキは驚きのあまり声も出せない様子であったが、俺の話を聞き、我を取り戻す。

そしてしばらくの間何かを考えた後、納得したかのように頷いた。



「貴方は……ティアドラ様に愛されていたのね、きっと」



俺はポカンとした表情で彼女を見る。



「だってよっぽど貴方のことを想っていないとこんなことなんて出来ないわ。自身の身体を捧げてこの武器を作りあげて……更にこれから貴方が孤独を感じることが無いように、自身の魔力を捨て去ってこの能力となったのでしょう?この世界で魔力が無いのは貴方だけ……()()()。だけど今は違う……もう貴方は……一人じゃない」



この世界に魔力はを持たない者はそれまでは俺一人だけだった。

だが彼女の言う通り今は……この曲刀も同じだ。

彼女が言うことは全く持ってその通りで……俺はそのことが何よりも励みになっていた。

俺は小さく頷く。



「あぁ……俺はもう一人じゃない。能力的にはこの曲刀があるし……近くには……君が居る」



夢の協力者としてのね。

そう言おうとしたが彼女の顔を見てやめた。


イブキの顔は真っ赤に紅潮していたのだ。



「貴方はなんでそういつも……」



彼女は何かをぶつぶつ呟いていたが小さくて聞こえない。

俺は立ち上がり大きく伸びをすると口を開いた。



「さぁ!俺の能力も話したし、休憩も終わった!そろそろ出発しようか!」



彼女はがっくりと肩を落としながら了承するのだった。

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