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第64話 俺の強さ、その理由。

「さて、シリウス……。先ほどの戦闘について教えてもらおうかしら?」



再びミスーサの街道を目指して下山している途中でイブキが口を開く。

やっぱり気になるよな……。



「まぁ……説明してもいいけど……あ」



タイミング良く開けた場所に出る。

おあつらえ向きに人が十分に腰かけられるような切り株もあった。



「そいじゃここで休憩がてら説明しようか」



俺の提案に彼女も頷いた。







「それじゃあまず、イブキは……薬についてどこまで知っているのかな?薬は本来……人にとっては害のあるものってことは知ってるかい?」



切り株に腰かけて休憩しているイブキに俺がそう尋ねると、彼女は首を縦に動かす。



「えぇ、それは聞いたことがあるわ。薬の原液は本来生物にとっては毒……。だから害が無くなる程度まで薄めないといけない、と」



イブキはある程度の薬の知識があるようだった。

なんだか少し嬉しくなった。

俺は懐から赤色の液体が入ったビンを取りだす。



「その通り、イブキが言う原液っていうのがこのビンに入っている液体のことだね。人が飲めるぐらいの濃度というと……このぐらい、かな」



鞄から別のビンを取り出し、先ほどの赤い液体を少量入れる。

そして俺達が飲んでいた水筒の水をその中に入れ、その濃度を薄めていく。



「……飲んでみるといい」



そのビンをイブキに差し出す。

彼女は言われたままにそれを飲み干す。



「これは攻撃力強化の薬だね。……どうだい?力が上がったように感じるか?」



彼女は立ち上がると首を傾げながら腰に刺さった金棒を抜き、振りぬく。

風を薙ぐ音がする。……相当な威力なのだろう。



「うーん……上がってる、のかしら?ごめんなさい、私には余り効かなかったみたい」



申し訳なさそうな顔をするイブキ。

俺はそんな彼女を見て笑いながら首を横に振る。



「アハハハ。……そんなものなんだよ、普通に人が飲める薬の効果なんて。……ちなみに今の薬の効果は大体……3%程度の上昇なのかな?あまり大きな効果は望めないんだ、上がるには上がるんだけどね」



彼女はどこか腑に落ちない表情で金棒をしまい、再び腰掛ける。



「貴方は先ほどの戦いでこれを飲んでいたということ?それにしては……先ほどの貴方のステータスの上昇量……とても3%の上昇とは思えないわ」



イブキは目を細め、訝し気な顔で俺を見る。



「あぁ、そうだ。俺はさっきの戦いで色んな薬を使っていた。だが……こんな薬じゃない」



俺は今度は赤い丸薬を懐から取り出すと彼女に手渡す。



「さっきも見たと思うけど……これ、何だと思う?」



彼女はそれを受け取るとまじまじと観察し、首を傾げる。



「見たところ飴玉というか……ビー玉というか……でもシリウスがこのタイミングで渡してくるってことは……これも薬だったりするのかしら?」



そう言いながら彼女は丸薬を差し出す。

俺はそれを受け取ると小さく頷いた。



「そう、これは薬。それも極限まで濃度を高めたものだ」



俺は先ほどの原液が入ったビンを左手に、丸薬を右手に持つ。

二つは色の系統は同じように見えるが明らかに色の濃度が異なっている。

濃いほうが勿論丸薬だ。



「この丸薬というのは原液に高い圧力を加えることで精製することができる。そうすることで濃度をグンと上げることができるんだ。……たぶんこの世界でこのことを知っている人っていないと思うから……他言はしないでくれよ?」



俺は立ち上がり曲刀を抜く。

そんな俺をイブキはポカンとした表情で見つめていた。



「そして濃度を上げれるということは……」



丸薬を口に含み、かみ砕く。



「ちょっと、シリウス!」



慌てて俺手を止めようとするイブキ。



()()()()()。……薬の効果を極限まで高めることが出来るんだ。……このように!……ね」



近くの木に向かって水平切りをする。

鋭い音を立てた俺の斬撃は、狙った木だけでなく周辺に生えていた他の木々をも真っ二つに切断していた。



「あ、貴方……大丈夫なの?濃度の高い薬を飲んで……。人にとっては毒ではなかったというの?」



イブキは困惑しているようだった。



「いや、濃度の高い薬は普通の人にとっては毒だ。……だが、俺はこの薬を飲むことが出来る。……俺は()()()()()()()()



「普通じゃない?……どういうことなの?」



「俺には……生まれたときから魔力がないんだ」



家でティアドラの話をした際にはこのことは伏せて話をしていた。

だが、協力者となった彼女には話しておく必要があるだろう。

俺は転生者であるということは避けて、自身に魔力がないこと、そして何故俺は薬の原液を飲むことが出来るかを説明する。










「……貴方……やっぱり強い人だわ。どうして……挫けたりしないのかしら」



一通り語り終えた後でイブキが口を開く。

彼女は俺のことを奇妙なものを見るような目で見てきた。



「挫けたりはするさ……俺は人に恵まれてたんだ。心が折れそうになる瞬間、近くの人が助けてくれた」



孤児院のマリー、師匠のティアドラ、そして……勇者ベネッド。

彼らの言葉で俺は今日まで……生きることが出来た。



「それは違う……ううん、貴方はきっと否定するからもういいわ」



彼女は何かを言いかけるが途中で首を横に振り、諦めたかのように呟く。



「貴方に魔力がないこと、そしてそのおかげで薬の効果を得られることも分かったわ。あと私が疑問に思っていることは一つ。……()()()()()()()()?」



彼女は俺が手に持っている曲刀を指さした。

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