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第33話 ナキは俺に付いていきたいらしい。

「あれ?何か忘れ物でしょうか?」



青ツユクサの納品のため、冒険者ギルドに戻ると受付嬢が声を掛けてくる。

ギルドの中はティアドラときた時より込み合っているが、俺に気づいたようだ。



「あ……いや、依頼にあった青ツユクサ、持ってきたので」



俺は恐る恐るナキと共に採取した青ツユクサ30本を受付嬢に差し出した。



「え?もう終わったんですか?青ツユクサって初心者が簡単に見つけれるようなものじゃないと思うんですけど……」



受付嬢は目の前に積まれた青ツユクサの山に驚いている。

すると何故か俺の身体の影に隠れていたナキがひょっこりと顔を出す。



「タリアさん、この青ツユクサは本当に私たちが採ってきたものですよ?」



ナキの顔を見て受付嬢が再び驚く。

どうやらナキと受付嬢は知己のようだ。

ってか受付嬢の名前、タリアさんと言うんだな。



「ナキ様じゃないですか!もしかしてシリウスさんと一緒に採取してきたんですか?……トキハ様の許可、降りたんですね……よかった!」



二人は仲が良いようだ。

トキハさんの許可、まだ降りてないんだけど……。



「凄いんですよ!?シリウス様があると思った場所には必ず青ツユクサがあるんです!私もそれなりには見つけることは出来ましたが……採取の依頼はシリウス様に任せておけば絶対大丈夫です!!」



何故かナキは自分のことのように自慢している。

嬉しいんだけど、ハードルを上げられている気がして辛いです。

なんか周りの人が不思議そうな目で俺を見てくる。

目立つの嫌なんですが……。

絶賛するナキにタリアさんも「へー!」だとか「ほー!」だとかいってノリノリになっていた。



「本当ですか?ならば少しお願いしたい依頼があるんですけど……。えっとどれだったかな……」



タリアさんは立ち上がると掲示板の中から2枚程依頼内容を持ってきた。



「えっと『エンカの花の採取(3本)』、『リガンの花の採取(3本)』ですね……。最近はこういった依頼は掛かる時間に対する金額が低いってことであまり人気がないんですよ……。こちらの依頼を受けていただけないでしょうか。そろそろ依頼期限が来てしまいますし……」



伏し目がちで俺を見るタリアさん。

何か怪しいと思い、よくよく確認してみるとこういった依頼は依頼主側が設けた納入期限があり、これを過ぎてしまうと違約金を依頼主に払う必要がある。

金額は依頼主から受け取った金額の8割。もちろんこれは依頼主との契約内容であり、違約金を払うことによるトラブルは滅多に起こらないのだが……。

実はこういった納品依頼は別の素材屋で買ったほうが違約金を払うより安い場合が多い。そのため依頼期限が来そうなものについては素材屋を巡り依頼の品がないか探し回るのだ。

……主にギルド職員が。……つまり。



「めんどくさいから俺に探してきてほしい、と」



するとタリアさんはポリポリと頬を掻く。



「簡単に言うとその通り、ですね」



アハハ……と乾いた声で笑うタリアさん。

俺は腕を組み、考える。

報奨金は……青ツユクサよりも高い。

だがその分採取は難しそうだ。なによりリガンの花はまだ採取したことがないからありそうな場所の感覚が掴めていない。その分時間がかかりそうだ。

できなかったら違約金がなぁ……。



「あ、……ギ、ギルドからのお願いですので違約金は払わなくて大丈夫ですよ?」



本当にギルドからのお願いなのだろうか。おそらく違うと思う。

多分俺が採取に成功し、ギルドに持ち帰ったときに受注するような流れにするのだろう。

これなら俺は持って帰るまで受注したことにはならないし、違約金を払うこともない。

まぁ……そういうことならやってみようかな。



「……そういうことなら、やりましょう」



俺がそういうとタリアさんの顔がパッと明るくなる。



「やた!それではお願いします!……言ってみるものですね」



最後何か小さな声で聞こえたがまぁいい。

男に二言はないのだ。

俺は依頼を受けるとナキと共に再度城門へと向かうのだった。



ってあれ?



「ナキ、なんで付いてくるんだ?」



何故かナキが俺の後をついてきていた。



「え!?だって私達依頼受けたじゃないですか!」



ナキは意外そうな顔をしていた。



「え?だってタリアさんは俺個人に依頼してきただろ?それにもう依頼がどんなものかはわかったじゃないか、次はトキハさんにちゃんと許可をもらって依頼を受けなよ」



俺がそういうとナキの目にみるみる内に涙が溜まっていく。



「わ、私、シリウス様と……まだ、依頼、受けたい……です」



俺はかつて女性を泣かせたことはない。あまり女性とも関わったことはない。

そこから導き出させる結論。どうしていいかわからない。



「わわわわわ!……ごめん、分かったから!分かったから一緒に行こう!な!」



俺は慌てて懐からハンカチを取り出し、彼女に差し出す。彼女はハンカチを受け取ると



「はい!では行きましょうか!採取採取~!」



さっきの泣き顔はどこへ行ったのだろう。

満面の笑みで俺の手を引いていく。



「あれ?ナキ……泣いて……あれ?」



理解不能だ。俺はなすがままに引っ張られていく。



「細かいことは気にしない!さぁ、ゴーゴーですよ!」



あれ?俺のハンカチ……どこいったの?



こうして俺達は再び城門へと向かうのだった。

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