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第14話 お祝いの品を頂きました。

俺達はベネラの店を後にする。

結局彼はティアドラに対して最初に提示した金額から上げることはなかった。

その辺はしっかり商売人だ。


「ごねればなんとかなると思ったが……そううまくはいかなかったの」


ティアドラは残念そうに肩を落とす。


「まぁお主の薬も売れたことじゃし!よしとするかの!」


彼女は早くも切り替えたようで周囲を見渡す。

本当に忙しい人だ。


「フフフフフ。そんなに自分の薬が売れたのが嬉しかったのか。可愛いところもあるではないか」


ん?……どうやら俺はにやついていたみたいだ。

全く意識をしていなかったが、俺は手の平にある銀貨5枚を見つめていた。


「あ、そういえば俺この世界の貨幣の価値とかわかんないや。教えてくれないか?」


にやついていたのをはぐらかすために話を切り替える。

するとティアドラは俺の思惑が分かったのかどうかはわからないが話に乗ってくれる。


「モチのロンじゃ!……そうじゃのう。まず貨幣は6種類ある。鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、大金貨、白金貨。これらは価値は鉄貨が最も低く、白金貨が最も高い。ここまでは分かるか?」


俺は黙って頷く。


「次は各貨幣の価値についてじゃ。銀貨1枚の価値は銅貨10枚と等しく、金貨1枚は銀貨10枚に等しい。この関係性は鉄貨、大金貨、白金貨についても同様じゃ」


なるほど、すごく簡単だ。

銀貨100枚で大金貨1枚ってことですね。

俺の今日入手した金は銅貨50枚分ということだ。


「最後にこの世界の相場じゃが……そうじゃのぅ。場所にもよるが大体銀貨1枚あれば一日3食しっかり食べれるってところかのぅ。あ、あとワシらの作る一般的な回復薬も大体1個1銀貨よいったところじゃ」


ということは……俺の薬は回復薬5個分として買い取ってもらったことになる。それも卸値で、だ。

先行投資とは言っていたが……少々申し訳ない気持ちになる。


「期待には応えんとな」


ティアドラは俺の気持ちを代弁するかのように呟く。


「あぁ!……これからもよろしくお願いします!」


俺はティアドラに向けてお辞儀をするのだった。











「さて、次は買い物に行こうと思うのじゃが……シリウスよ、何か欲しいものはないかの?お主がワシの弟子となった祝いをまだやっておらなかったな」


「祝いだなんてそんな」


俺はティアドラに救われたのだ。ここで彼女祝いまでもらってしまったら罰が当たりそうだ。

だが、彼女はそんな俺の態度を見てつまらなそうな顔になる。


「お主、ワシの弟子となったことが嫌なのか!?嫌でなければ……受け取れ!!ほれ、欲しいものを言うのじゃ!!」


「あ、はい。頂きます。……欲しいもの、か」


彼女の凄みに負けてありがたく頂くことにする。

実はティアドラの弟子になり、薬を調合するようになってから欲しくなったものがある。


「じゃあ……ここって本屋とかって、ある?」


彼女はにこやかに頷くと遠くにある店を指さし、歩き出す。

こうして俺達は本屋へと向かう。










本屋の中は思っていたよりも広く、たくさんの書物が所狭しと並んでいる。

前の世界での古本屋と比べてもそんなに違和感はない。……懐かしい。

ボッチでコミュ障の俺にとって本は相棒のようなものだ。

俺は深呼吸する。本の匂いというのはどこの世界も同じのようだ。いい匂いだ。



辺りを見渡す。

店の奥に行くにしたがって書物は古くなっている。

実はまだそれ程文字を読むことはできないが、読めるものから判断するに古い書物は歴史書のようだ。

さて、俺のお目当ての本はあるかどうか……。


「で?何が欲しいのじゃ?」


本を探す俺に興味津々といった様子で尋ねてくる。


「えっとだな……」


俺は背表紙に何も書かれていない本を手に取り、中を確かめる。

この世界の魚の図鑑だろうか。見たこともない魚の絵と、それに関する説明文が書かれている。


「なんじゃ、図鑑か?そのようなものだったらワシの家にもあるぞ?」


なに!あるのか!

実は前の世界でも図鑑は好きだったりする。

小さい頃は孤児院の図鑑片手に虫を探したりしていた。

帰ったら読ませていただこう……っと今はその話じゃなかった。


「いや、そうじゃないんだけど……もしかしたらないのかな?……あっ!」


ふと目線を端にやるとに新しそうな真っ白な本が目に入る。

俺はその本に駆け寄るとその本を開く。


「あった!!」


本を広げる俺の背後からティアドラはのぞき込んでくる。


「どれどれ……って何も書いておらんではないか!!」


そう、俺が欲しかった本というのは……『白紙の本』であった。


「そんなものが欲しいのか?何に使うのじゃ?」


彼女は不思議そうに首を傾げる。


「これが欲しかったんだ。使用方法は……帰ってからのお楽しみだ」


彼女はまだ腑に落ちないようであったがこの本を買ってくれた。

俺は買ってもらった本を抱きしめる。

その様子を見てティアドラはなんともいえない顔になる。


「もっと高いものでもいいのじゃが……まぁよいか。さて、帰るとするかの」


こうして俺達は家に帰ることにした。




ちなみに『白紙の本』の金額は銀貨1枚でした。

……回復薬1個分!

ティアドラはもっと高いものでもいいっていってたけど……これがいいのだ。

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