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第9話 これからは人の話はよく聞こうと思います。

そんな話をしているうちにいつの間にか昼が来ていた。

俺達は昼食にパンを食べ、再び椅子に座る。



「さて、お主の正体もわかったことじゃし、この世界についての座学でもしようかの」


「お主、この世界についてどこまで知っておる?」


俺は孤児院で先生から学んだことを思い出す……ってあれ?どうだったっけ?


「あ、孤児院で教わっていました。確か……人族と魔族が争っているんでしたっけ?あとは……ごめんなさい、覚えてないです」


魔力が発現しなくて焦ってたからな。聞いてる場合ではなかったんだけど……今思えばこの世界で生きるために聞いておくんだったな。


「全く、せっかく孤児院で教えてくれておるのじゃから……ちゃんと聞いておかないといけないじゃろうが」


ティアドラは一つため息をつくと、黒板に向かい絵を書き出す。

それは上下対称な瓢箪を横向きに置いたような絵であった。


「お主の元の世界はどうか分からぬが……この世界はこのような形となっておる。この世界の名は『インフィニティワールド』……どこかの国の言葉で、無限の可能性に満ちた世界、という意味らしい」


なるほど、瓢箪を横に置いたとはいったが無限大の記号にも見える。

だからインフィニティワールドなのか……って英語じゃん!

もしかしてだけどこの世界の名前を付けた人も転生者だったりするのかな?


「そしてお主がいったように、この世界では遥か昔より人と魔族が争っておった。今の二つの勢力を分かつ境はこうなっておる。東側が魔族、西側が人の領地じゃ」


ティアドラは無限大のマークの対称軸を書くように縦に線を入れる。

どうやら現在、人と魔族の戦力は拮抗しているようだ。


「過去には魔族がこの大陸の八割を占領したことも、逆に人が魔族を滅ぼしかけた歴史も存在しておる。……両者は常に争い、今日まで殺し合いを続けておる。魔族は人の世の豊かな資源を求めて……人は魔族の持つ力を求めて」


ふと彼女の顔を見ると嘆かわしそうな表情を浮かべていた。


「愚かしいことよ……共にこの世界に生きるものじゃというのに」


彼女の目はどこか遠くを見つめていた。



「人の世界の話をしよう、人の世界は4つの国で構成されておる。北の国『ノキタス』、東の国『アラズマ』、南の国『ミスーサ』、西の国『ウルスト』……ちなみにお主がおった孤児院はミスーサに属しておる」


ティアドラは無限大マークの左側に縦横の線を引き、南側の領域に赤で丸を書く。

どうやら赤丸部が孤児院らしい。

なるほど、初めて知った。

いや、孤児院の先生がそんなことも言っていた気がする。


「この家はどの辺りにあるんだ?」


「アラズマとミスーサの国境沿いにある。この辺じゃな」


二つの国の線状に先ほどと同じような赤丸を書く。

孤児院からは結構距離があるようだ。


「人の世界とはいうが……実は人の世界にも魔族はおる」


「魔法に長けたエルフ族、鍛冶や彫金等物を作ることが得意なドワーフ族、圧倒的な身体能力を誇る獣人族……他にも少数ではあるが様々な魔族が人の世界にも住んでおる」


人の世界にも魔族?


「なんでだ?人の世界に住んでたら……迫害とかされるんじゃないのか?」


俺の言葉にティアドラは頷く。


「その通りじゃ。先も言ったがこの世の8割を魔族が占領した際、先陣を切って切り込んだのが獣人族であった。……その後魔族の地盤を固めるためにエルフ族、ドワーフ族といった種族が人の世に住み始めた。……時が経ち、人の世に英雄と呼ばれる人物が登場すると戦力は逆転、魔族は追い込まれていく。撤退時に取り残された種族、それが今日も人の世に存在している魔族なのじゃ」


なるほど、人の世界に居る魔族は逃げ遅れた魔族というわけだ。


「彼らは迫害から逃れるために知恵を絞る。エルフ族はミスーサの北部に位置する森の中に結界を張り、人の侵入を阻んでおる。ドワーフ族は持ちうる技術の提供……鍛冶師、彫金師として人に貢献しておる。獣人は……少々頭が悪い種族なのでな……。まぁ、奴隷になったり傭兵になったりしておるな。いずれの種族も迫害の対象にはなりやすい」


なるほど生き残るために魔族も色々と考えているんだな。

ティアドラは俺に真剣なまなざしを向ける。


「お主もこれからの世界で魔族を見ることも、差別を受けているところも見ることがあるじゃろう。……お主はただ産まれた地、種族が違うという理由だけで差別をするようにはならんでおくれ」


俺は力強く頷いた。


俺だって他の人と違って魔力がないわけだしね。

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