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ギルドへ

 二人が服屋を出てしばらく歩き続けていると、真人の視界に段々と立派な建物が見えてきた。


「あれがギルドか?」


「そう。目の前に見えるのが国家ギルド支部で、無所属ギルド支部は向こうにあるよ。どっちに入るつもりなの?」


「国家ギルド……? 無所属……?」


「えっと……知らないの?」


「ああ」


 淡々と返事をした真人を見て、ミーシェはためいにをつき。


「マサトってホントに無知なんだね……」


「やめてくれ、その言葉は俺に効く」


 真人の言葉に苦笑いするミーシェだったが、ギルドの前まで着くとミーシェは立ち止まり、それに続いて真人も立ち止まった。


「えっと、知らないようだから説明するけど、ギルドは大きく分けて2つのものがあるの。ひとつはこの国家ギルド、そしてもうひとつは向こうにある無所属ギルド」


「2つのギルドはどう違うんだ?」


「国家ギルドは冒険者のサポートをしてくれるの。初心者の講習をしてくれたり、大怪我をしたときに治療費を一部負担してくれたり。他にも色々あるんだよ」


「へぇ、結構待遇がいいんだな」


「そう。でもそのかわり報酬の2割は国の方に納めなくちゃ行けないの。もちろんその2割に税は含まないよ」


「2割!? ……まぁ、待遇の良さから考えれば妥当……なんだろうな」


「それで、逆に無所属ギルドは報酬から税だけ引き抜けばあとは全額依頼を受けた人のものになるんだけど、でもそのかわり国家の保護があんまり受けられないの。だから治療費は自分で全負担だし、講習だって無いから自分で覚えるしかないからちょっと厳しいところかな。でも報酬はほぼ全額貰えるし、国家ギルドで腕を磨いたあとに無所属ギルドに行く人も少なくないよ」


 ミーシェの説明を聞いた真人は、微妙そうな顔をしていた。


「なんか……どっちも一癖ある感じだな。ちなみにミーシェはどっちに入ってるんだ?」


「私? 私は国家ギルドだよ。まだまだ未熟だし、ある程度保険があるのは安心だからね」


「そうだよなぁ……。よし、国家ギルドにするか」


 真人がそう言うと、ミーシェは嬉しそうな笑顔になり。


「そっか! それなら私が受付まで案内して――」


「ミーシェーーーーーーーーーーーーーーーー!! 俺の愛するミーシェーーーーーーーーーーーー!! どこだーーーーーーーーーー!!」


 突如ミーシェの言葉を遮るかのように高い男の声が響き、その声は真人とミーシェの耳にも届いた。


「……なんだ今の気持ち悪い男の声……」


 そう言って真人がミーシェの方を見ると、ミーシェは暗い表情になりながらハイライトの消えた目をそらしつつ。


「お兄ちゃんの声だ……。また街の人に変な噂が……」


「あれミーシェのお兄さんの声なのか……。その、凄い声してるんだな……」


「あははは。違うよ、あれは高い声の方が響きやすいって言ってお兄ちゃんが声を変えてるんだよ。もうやだ恥ずかしい死にたい」


 両手で顔をおおって下を向くミーシェに、真人は励ましの声をかけた。


「落ち着けミーシェ。さっきまでの元気はどうした」


「ワタシハトッテモゲンキダヨ?」


「手遅れです先生」


 ヒステリックになったミーシェを見た真人は、どうしたものかと考えた。


「そうだ! ミーシェがお兄さんに自分はここにいると教えればあの声は止んで解決するんじゃないか?」


「お兄ちゃんはシスコンだから男の人(マサト)と私が一緒にいるのを見た瞬間にお兄ちゃんが凶戦士バーサーカーになってマサトに襲いかかっちゃうけどいいの?」


「ごめんやめてまだ死にたくない」


 シスコンの男にリンチにされる想像をした真人は今の考えをすぐに消した。


「だよね。はぁ……。せめて私が一人だったなら止められたんだけど……」


 ミーシェのその言葉に、真人は思い付いた。


「いや、そうすればいいんじゃね?」 


「え?」


「もうギルドまで着いたし、あとは一人でどうにかなると思う。だから、ミーシェは安心してお兄さんを止めに行ってくれ」


「でも……一人で大丈夫なの?」


「お前は俺の母親か」


 呆れたように言う真人だったが、ミーシェは真人の言葉にクスッと笑うと。


「そっか。なら私はお兄ちゃんを止めに行こうかな」


「そうしとけ、それじゃ、ここまでありがとな」


「うん。またね!」


 そう言うと、ミーシェはダッシュで声の発信源へと向かっていった。


 すぐに遠くなってしまったミーシェの背中を見ながら、真人はその背中に同情するような視線を向けた。


(……よっぽど恥ずかしいんだろうな……)


 シスコンの兄を持ったミーシェに同情しつつ真人はギルドの方を向いた。


「さてと、よくある感じだとここで変なやつに絡まれるとこだし、ちゃんと用心していこう」


 何が起こっても大丈夫なように決意した真人は、いよいよ扉に手を――触れようとした瞬間に内側から扉が開き容赦なく真人の鼻へと扉がヒットした。


「いでぇっ!?」


 真人が鼻を押さえながら尻餅をつくと、中からはガラの悪そうな男が出てきた。


(ちょっと待って予想以上に怖い人出てきたぞオイ)


 何か言われてもまともに言い返せるかわからなかった真人は覚悟を決めたが、男は焦ったような表情になると、すぐさま腰を落として目線を真人に合わせた。


「大丈夫か!? って鼻血出てるじゃねぇか! 俺のせいでごめんな! い、今すぐ医務室に連れていくからよ!」


(見た目とのギャップありすぎるだろ)


 拍子抜けしながらも、真人は目の前の男が善人だったことに安心した。


 そして、登録に来たはずの真人は最初にギルド内の医務室に向かうことになったのだった。

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