初めての食事
「ここか……」
真人はギルドの中にある簡易的なレストランへとたどり着き空席へと腰をかけた。そして、テーブルの上に置いてあったメニュー表を手にとってそれを眺めた。
(パルパルの塩焼き、ヌルトゥスの刺身、ポターニャの丸焼き……? なるほど、さっぱりわからん)
文字が読めても料理内容がまったく想像できない真人は、悩んだ末に店員に声をかけた。
「あの、すみません」
「はい、ご注文ですか?」
「あ、いえ。オススメのメニューとかありませんかね?」
「そうですね……。飲み物ならフレッシュジュース、料理でしたらウンリッチソーセージがオススメでございます」
店員の言葉に、真人は顔をしかめた。
「う……ウンチッチソーセージ? 何ですかそれ……」
「当店ではそのような下品なメニューは取り扱っておりません」
「で、ですよね……」
安心したような表情をした真人に、店員は笑顔を絶やさずに説明を始めた。
「ウンリッチソーセージと言いまして、ウンリッチの皮を使ったソーセージでございます」
「あ、えと、じゃあそれとフレッシュジュースでお願いします」
「本日のフレッシュジュースはコルクミックスとなっておりますがそれでもよろしいでしょうか?」
「コ……コル……? あ、大丈夫です」
「かしこまりました」
厨房の方へ去っていく店員の背中を見ながら、真人はテーブルに肘をついた。
(まさかオススメの飲み物まで言ってくれるなんて運が良かったな……。しっかし、今思えば色々と上手くいきすぎじゃないか? 今日1日だけでも偶然拾った石でドラゴンを倒せたり、門番の方からお金を貸してもらえたり、良さそうな装備を無料で貰えたり……。なんか都合が良いような気がするんだよなぁ……)
「こちらフレッシュジュースです」
「ありがとうございます」
真人は店員が持ってきたフレッシュジュースを一口飲み、目を見開いた。
(……マッッッズ!? 子供の頃ファミレスのドリンクバーでジュースを全種類混ぜたときと同じ味がするぞ!? この世界の人はこんな飲み物が好きなのか……?)
とは思っていたものの、真人は残すのは悪いと思ったのか、ゆっくりではあったがジュースを全て飲み干した。
(も、もう二度とフレッシュジュースは飲まないようにしよう……)
グロッキーになっていた真人の元に、店員が料理を運んできた。
「お待たせいたしました。こちらウンリッチソーセージです」
「まって店員さんコレどう見ても芋虫にしか見えない」
「ウンリッチは芋虫でございます」
「名前が微塵も芋虫っぽくねぇ!? ……いや、でも何か段々それっぽく思えてきたような……」
10cmほどのこんがり焼けた太めの芋虫を見て、真人は何とも言えない表情をしていたが、店員に見られている事に気がつき、真人は頭を下げた。
「あっ、えっと、すみません……。なんか料理にケチつけてるみたいになってしまって……」
「いいえ、ウンリッチソーセージをご存知ないお客様は大体同じようなリアクションを致しますのでお気になさらず。それに、芋虫なのは表面だけで、中身には肉が詰め込んでありますのでご安心ください」
「中身に肉……ですか?」
「はい、ウンリッチの皮は火を通すとパリッという食感が生まれます、その食感と、中身の肉を味わっていただくのがこのウンリッチソーセージという料理でございます」
(つまり、腸に肉を詰めて作ってるとかいうウインナーの芋虫バージョンってわけか?)
「それではごゆっくりどうぞ」
店員が礼をして去ったあと、真人はウンリッチソーセージを見た。
(つまりこれはウインナーだと思えばいいんだよな? 見た目に騙されずに食べれば案外美味しいかもしれないし……)
ごくりと喉を鳴らした後、真人は恐る恐るウンリッチソーセージを口へと運んだ。
(これはウインナーこれはウインナーこれはウインナーこれはウインナー……)
自己暗示をかけつつ、真人はウンリッチソーセージを一口食べ、何度も咀嚼して飲み込んだ。そして――。
「――芋虫だコレ」
自己暗示しても真人の口には芋虫らしき味が口に広がったのだった。




