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振り返り

前々から書きたかった新作、ようやく出せる段階になったので投稿します。

 見渡す限り何もなく、地平線の向こうまで真っ白な場所に、二人の男女が居た。


「アッハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」


 ただ立ち竦んでいる少年の前で腹を抱えてゴロゴロと転がり回っているのは、自らを女神であると言い張る女性であり、そんな自称女神を見ながら、少年は顔を両手で覆った。


「俺だって……何でこんな死に方したのかわかんねぇよ……」


 鬱になりそうな声でそう言った少年の発言により、ますます自称女神の笑いが加速する。


 何故こんなことになったのか説明するのは、二人の男と一人の女性の話をしなければならない。


 まず、山崎やまざきたけるという少年の話をしよう。


 17歳、高校2年生の彼は、文武両道、才色兼備という、非の打ち所のない少年であり、裏表のないまさにパーフェクトな男子学生だった。


 無論、そんな男がモテないはずはなく、加入しているバスケ部の大会には、いつも大勢の女子が応援に駆けつけた。


 また、試合中あと3点とれば引き分けの状態から勝ちになるという状況では、残り時間1秒でスリーポイントシュートを決めたり、不良に路地裏に引き込まれてピンチになった女子学生のところにギリギリのところで駆けつけて救うなど、ご都合主義満載な一面もあった。


 だが、そんな武には一人のストーカーが居た。名を美山うやま光子みつこ、メンヘラ気質があり、クラスメイトからあまり近づかれない存在であった。


 唯一、光子に優しく接してくれたのが武であり、光子が恋に落ちるのに時間はかからなかった。


 武の家の場所を調べ、好きな食べ物を調べ、休日の生活スタイルを調べ、犯罪スレスレ(というか最早犯罪の域だが)の行為をした光子は、武に好かれるべく様々なアプローチをした。


 だが、鈍感な武は光子の気持ちに気付くことはなく、それどころか武に好きな人が居るという噂が出来たことにより、光子の思想は段々と歪んでいった。


(どうせこの気持ちが叶わないのなら、いっそのこと心中しよう)


 そう思った光子は、バックに包丁を忍ばせ学校に登校し、下校時、一人になったところに襲い、自分も後を追おうという計画を立てた。


 いざ放課後になり、光子は武を追って、彼が一人になるのを待っていると、途中で見失ってしまうという痛恨のミスを犯してしまった。


 焦った光子だったが、ようやく武を見つけることに成功する。


 運良く彼は今は一人で、ここは人通りの少ない道。まさに絶好のチャンスだった。


 高ぶる気持ちに逆らわず、後ろから一気に彼に接近し、後ろから包丁で突き刺した。


 不意の一刺しに耐えきれなかった彼は、前のめりに力なく倒れこんだ。


 その様子を見た光子は嬉々とした表情で今度は包丁を自分の胸元へと押しやろうとした。


 だが、ここで光子は気付く。彼の使っていたバックはこんな色をしていただろうか。彼の靴はこのメーカーだっただろうか。


 様々な相違点を見つけた光子は、恐る恐るうつ伏せに倒れた彼を仰向けにひっくり返した。


 そして、その顔を見た光子は――――。


「…………誰よ、アンタ」


 顔をしかめた。


「こっちの台詞だわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」


 そう言って包丁で刺された少年――瀬島せしま真人まさとがガバッと起き上がったときには、彼は四方八方が真っ白な世界に居り、目の前で自称女神と名乗る女性が笑い転げていたのであった。


「お、お腹が苦しい! 山崎武(クラスのモテ男)に後ろ姿"だけが"絶妙に似ていた貴方が間違って刺されるなんて……! しかもそのあとのツッコミ……コントみたい!!」


 未だに笑い転げている女性に、真人はどうしたものかという表情をしながら話しかけた。


「え、えっと……とりあえずなんで俺がここに居るのか知りたいんだけど……」


 そう言うと、笑い転げていた彼女はようやく笑うことをやめて立ち上がった。


 笑いすぎたことにより涙目になった彼女は、涙を指で拭いながら真人に返答した。


「ごめんごめん。こんな変な死に方は初めて見たから。笑っちゃったよー」


(普通、人の死に方を本人の目の前で笑うか?)


 と、言いたかった真人だったが、これを言うと話がこじれると判断した真人は、この言葉をぐっと押し込めた。


「そうですか……。それで? どうして俺はここに?」


「えっと、それはね? 君……真人くんだっけ?」


「はい」


「おもしr……不遇な死に方しちゃったでしょ??」


「今面白いって言いかけただろ。いや、まあ第三者アンタから見たらそうなんだろうけど」


「うん、それでね? 不遇な(おもしろい)死に方をした真人くんに転生の機会を与えようと思って――」


「面白いって言っちゃってるじゃねぇか。……って、……え? て、転生?」


「そ、転生」


 あっけからんとそう言った自称女神の言葉に、真人の気分は高揚した。


「ってことは……夢のチー――」


「――チートなんてあげられないんだ。ごめんね。流石にそれは物語の読みすぎかなって」


「すでに転生するということ事態がその物語とそっくりな内容なんだけどな……」


 一気に落胆する真人だったが、自称女神の次の発言により再び活力を取り戻した。


「でも。特別にひとつだけ特典をあげるよ」


「特典!? それって、まさか――」


「だからチートじゃないって。あくまで君が向こうで上手くやっていけるようにするための補助だよ。あんまり期待しないでね」


「その持ち上げるだけ持ち上げて落とすスタイルやめてくれない? メンタル崩壊しそうなんだが?」


「まあそれは置いといて」


「置くなよ」


「と・に・か・く・!」


 自称女神がズビシッと真人を指差したことにより、真人は一歩下がったが、自称女神は真人に詰め寄りながら。


「君はこれから異世界に行って自由に暮らしてくれればいいの! ただそれだけ!」


「あ、アバウトすぎる……。って近い近い近い近い近い!」


「あらごめんね? ドキドキした?」


「……するわけないだろ調子乗んな」


「はい一名様地獄にごあんな~い!」


「めちゃくちゃドキドキしましたもう心臓破裂しそうです」


「よろしい」


 自称女神はそう言うと、真人から5歩ほど離れた。


「じゃ、これから頑張ってね。バイバイ」


「え」


 瞬間、真人の足場がくり抜かれ、そのまま真人は落下――せずに、手でくり抜かれていない部分の足場を掴んだ。


「落ちてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「意外と耐えるね君!?」


 とはいえ、このままだと真人が這い上がってきてしまうと考えた自称女神は、とある資料を自分の目の前に出現させた。


「ねえ真人くん?」


「なんだよ!?」


「君を殺した美山光子さんなんだけどね? 違う人を殺したことに絶望してその場で自殺しちゃったんだって。で、ちょうど光子さんの遺体の手が貴方の手と重なってたから、周囲からは二人が心中したって思われてるみたいだよ」


 えっ……という声と共に、真人が足場を掴む力が緩まった。それとともに、真人の手は足場から離れ、徐々に落下を始めた。


「最悪じゃねぇかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


 そう叫びながら落下していく真人を見ながら、自称女神は微笑んだ。


「久々に楽しかったなー。最後まで意地悪な私に付き合ってくれたのは君だけだったよ。ありがとう。

餞別に【ご都合主義(なんとかなるさ)】ってスキルをあげたから、これで幸せに暮らしてね、真人くん」


 未だに聞こえてくる叫び声に対し、自称女神は手を振って見送ったのだった。

次回から一話辺りの文章量減る可能性大です()


※私は大体一話につき二千文字にか書けません。何故今回3000文字近く書けたのかは謎です。

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