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隠して恋情  作者: 崎村祐
chapter2:構う理由
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07:文化祭準備

「そろそろやめたら?」



 友人に言われた言葉に私はぎくりとした。友人は私が神崎君を好きと知っている。でも言わないでいてくれたが限界らしい。現在は七月。十月には文化祭が始まるから、それまでにどうにかしろ、ということだろう。



「あんた、いつまで続けるつもりよ」


「……卒業?」


「気づかないふりで乗りきってるのはわかるけど、やめたら?」



 直接言われると、堪えるものがある。特にこの友人は私が向き合うのが苦手なことを知っているからよけいに。それでも、友人の言いたいことはわかる。だけど、認めてしまったら、私は彼女たちに嫉妬する。嫉妬するのは好きだからだと思う。けど、疲れそうだからあまりしたくはない。というのもある。まあ、面倒なのもある。恋愛してるくせになんという体たらく。でも一番はやっぱり、先輩後輩以上を求めてしまうことが嫌だ。きっと想いはふくれている。私の知らないところで、私の気づかない場所で。だから怖い。向き合うのが苦手以前に後戻りができなくなりそうで怖い。



「まあ、あんた次第だけどさ、考えてみたら?」


「……ん」


「今日の部活、話し合いでしょ。先に行ってるから荷物、早くまとめて来なさいよ」


「うん」



 友人は言葉通り、先に行ってしまった。正直、今学校で一人にはなりたくない。穂積君は大丈夫だと言っていたが、神崎君とはあれからあまり話していない。部活のときにメレンゲを手伝ってくれるのは変わらないけど、話をしなくなった。そのことに胸が痛くなり、顔に出ているから友人はいい加減にやめるように言ってきたのだろう。私もそろそろ知らないふりもできそうにない。動揺して避けられて、顔に出てたらもう戻れない。求めてしまうけど、声に出さないなら大丈夫か。なら、認めてしまってもいいかもしれない。もしかすると、認めた方がバレないかもしれないし。



「でもなぁ」


「先輩。早くしないと怒られますよ」!


「ひっ!?」



 家庭科室の前、後ろから声をかけられる。思わず肩を上げて振り返ると神崎君がいた。



「か、神崎君……?」



 頓狂な声で神崎の名前を呼ぶと、彼は怪訝そうに首を傾げた。



「どうしました?」


「なんでもないよ。ただ驚いただけ」


「そうですか」



 神崎君は家庭科室へと入っていった。私も神崎君を追って家庭科室に入る。普通に話せたのは、何日ぶりだろう。ドキドキしている。しかし、いつまでもつっ立ってはいられない。今日は文化祭の話し合いだ。部長はなんとか飲食店の権利をもぎ取ったようで、黒板にはメニューを何にするか、と書かれている。カフェだから、軽食も取り扱う。そのメニューを何にするか話し合うのが目的だ。席について、部長が話し出す。



「今日は文化祭のカフェについて話し合うわよ」



 やる気のある部長たちに気押されながら私は話を聞いている。コスプレカフェにするからその分も話をしなければならないし、試着や試作も必要だ。だから、まず担当を決めることになった。衣装係、試作係の二班だ。人数が六人なため、三人に別れる。料理の得意な部長と神崎君は自然と試作係となる。私はどちらでもいいので、試着係になった。試作係になりたい子が何人かいたからじゃんけんをして平和的解決をした。六人分の衣装を考えなければいけないのは悩むと思う。ああ、でも、ノリノリで選ぶ人もいるからすぐに試着になるかも。特に神崎君は女性物も似合うから、楽しくなりそうな気がする。

 次に決めるのはメニューだ。毎年違ったり被ったりしているが、夏休み前に決めて試作をする。試着係も服が決まれば合流だ。メニューは例年不動の人気を誇るパンケーキは外せない。適度に厚くてふわふわなパンケーキ。文化祭は三日間ある。去年の文化祭、私は接客をしていたが、リピーターが多く、三種類を一日毎に用意をしているから三日連続で食べに来た生徒がいた。毎年味付けを変え、三年間楽しめるようにもなっている。今年も試作班ががんばってくれるだろう。

 パンケーキ以外のメニューとしては、サンドイッチなどのパン類やおにぎりなどの軽食を用意することになった。それらはスタンダードのものと変わり種を用意するらしいから、やはりパンケーキの試作が主らしい。去年同様、今年も楽しくなりそうだ。比例して忙しいけれども。

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