表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隠して恋情  作者: 崎村祐
chapter1:認めたくない気持ち
6/34

06:あなたは知らなくていい

 誰も知らないでいいことがある。私の場合、他人が知らないでいいことは気持ち。神崎君を好きなこと、認められないことは知らなくていい。ドキドキしても、嬉しくなっても、秘密にするの。だって、恋人になってほしいわけじゃない。恋をしていると知ってほしくない。構う理由が恋だなんて、気づいてほしくない。だから隠す。知らないふりをする。この恋心を。誰も知らない、私だけの秘密。その秘密を知ってしまった人物がいる。隣のクラスの穂積君。穂積君は女ったらしで有名で、学内にとどまらず、学外にまで及んでいるとか。噂だからよくは知らないし、なぜバレたのかわからないくらいには知らない人だ。そして私はよくわからないが今、穂積君といる。



「なんで私は穂積君といるの?」


「俺が君と話してみたかったから」



 ふうん。と気の無い返事をする。私は穂積君と話すこと無いんだけどな。



「寺崎はなんであいつが好きなんだ?」


「えー。言わなきゃだめ?」


「言えよ。知りてぇし」


「なんで?」


「直とは腐れ縁でさ。あいつを好きって奴はいたが、あんたみたいな奴はいなかった」



 私みたいやつ? おくびにも出さないこと?

 訝しげに穂積君を見遣ると肩を竦めていた。どういうことか答えてくれそうにない。駆け引きって苦手なんだけどな。



「穂積君、どこまで知ってるの?」


「あんたが直を好き。だけど恋愛感情からかわいがっているわけではないところ。あと、体育祭のときに下に弟と妹がいるのを知ったな。しかもシスコン」


「最後は余計。……神崎君への気持ちは全部知ってるってことか。どうして気づいたの? 友人以外、誰も気づかないのに」



 そう。友人だけは私の気持ちを知っている。同じ部活なのだが、なんでもそのときに気づいたのだとか。目敏い友人である。



「そりゃお前、見てたからに決まってるだろ」



 勘違いしそうになる言葉を穂積君は言う。こうして女性を落としたのだろうか。そう考えると女性って単純なんだと思う。友人から男性は単純と聞いたが、男性では無いからわからない。

 そう考えていたら、穂積君が思いのほか近い場所にいた。机一個くらいの距離が半分ほどになっていたのだ。近い距離は妹弟で慣れている私だが、さすがに家族以外にこの距離に来られると身構えてしまう。逃げては負けだと、じっと穂積君を見る。だんだんと近づいてきて、あと数センチもしたらキスをするくらい近い。――寸前で退こう。決意したとき、後ろの扉ががらっと開いた。密会してるわけじゃないと弁明しようと振り返り、息を飲んだ。そこにいたのは神崎君だった。動揺したような表情を浮かべた神崎君は「失礼しました、先輩方」と言って出ていく。私も追いかけようと立ち上がるが、動揺しているらしく、足に力が入らない。穂積君が立ち上がり、私の肩を下に押して座らせる。



「俺が言って説明してくる。お前は待ってな」


「でも……!」


「動揺で顔色わりぃんだよ、お前」



 うぐっと押し黙るしかない。足が動かなかったんだ。追いかけられるはずがない。穂積君の言う通り、ここで待っている方がいいのだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ