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隠して恋情  作者: 崎村祐
chapter1:認めたくない気持ち
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05:岐路までの距離

 体育祭からしばらくしたある日。体育祭のときの帰宅女子に待ち伏せをされた。よくわからないが、体育祭の借り物競争で私を連れていった理由を、聞きたいらしい。神崎君が好きだと宣言してきた。別に言わなくていいのに。お題が〝部活の先輩でチームメイト〟だったからだと伝えたら納得して帰っていった。部活に行く途中だったから家庭科室に行くと部長から「遅い」と一言いただいた。謝って座り、ルーズリーフを取り出した。今日は文化祭の出し物を話し合うのだ。



「どこまで進んだんですか?」


「まだよ。例年通りカフェを、という意見が出たくらいね」


「それで決まりじゃないんですか?」



 決まったなら今日は解散のはずだ。解散していないということは、まだ決まっていないということ。いったい何を話し合っていたんだろうか。この考え事をしすぎて重い空気はなんだ。



「おもしろくないでしょ。だからもっと、何か考えているところ」


「それならコスプレカフェにしたらどうですか? 体育祭前に話してたんですよ。ちょうど客寄せにできるメンバーがいますし」


「名前、喫茶店ではないのね」


「カフェでずっとやってきたんですから、カフェでいいじゃないですか」



 重い空気が霧散した。たぶん、これで決定。コスプレカフェが文化祭の出し物だ。これから文化祭までは試食会に切り替わる。部活の回数も週三回になる。うまい具合にしなければ帰りが遅くなるから、時間を見ておかないといかない。それはともかく、多数決をとった結果、コスプレカフェになり、内容は後日、考えることにして解散した。

 その帰り道、同じ方向ということで友人と神崎君と帰ることになった。友人とは途中で別れ、今は神崎君と二人だ。会話は無いが、別段困ったことはない。もともと私も神崎君も話すことがあれば話すが、口数は多くないからだ。



「先輩は部活、楽しいですか?」


「何? いきなり」


「仏頂面ではないけどなんとなく……そう、しかめっ面が多いような気がしたんです」



 しかめっ面、多いかな。

 あー、でもしかめっ面してるときってだいたいうまくいかないときだよね。メレンゲとか。お菓子を作ることが多くて、卵白を泡立てるのが多いからだ。素直に言うと「手動で泡立てるの、苦手ですもんね」と言われた。ぐさっと心に突き刺さったが、本当のことだから何も言えない。だから代わりに、年上に何を言う、という意味を込めてがしがしと撫でてやる。やめろという彼の要望を聞いたのは二分後くらいだ。かわいらしい顔で睨まれても怖くはない。最後にぽんぽんと軽く叩いて二人並んで岐路に着いて別れた。

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