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隠して恋情  作者: 崎村祐
chapter1:認めたくない気持ち
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03:妹弟と神崎君

 体育祭。それは仁義なきチームの戦い。と友人と言ってみたが、仁義はあるからなんか違うね、って話になった。私のクラス、二年三組は一年四組と三年二組と同じチームだ。神崎君は一年四組だからチームは同じ。出場競技も部活で言われていたチーム対抗男女混合リレーと借り物競争に出ることになっている。女子がごり押ししていて、「女子強い」と思ったのは私だけじゃないはずだ。だってチームの男子が引いていたもの。あれは怖かった。私は同じ百メートル走とスウェーデンリレーに出場することになっている。

 友人と開会式のために並びに行く途中、同級生と仲良くしている神崎君を見つけた。自分のことながら目敏いと思う。笑っている彼を見ると、やっぱり同学年だと笑顔が多い。私と話すときは事務的とかツンとかだし。普通に話しても笑顔なんてあまりない。じっと見ていたら神崎君が気づいた。お辞儀をされたから手をふり返して列へと急ぐ。開会式と閉会式は学年クラス別に整列するけど、チーム対抗だから開会式が終わったらチームごとに座るように言われている。チームごとならあとは自由だ。全学年計三クラス入り乱れるから、一年は後ろに行くことが多い。今年の一年もそんな感じ。ちらりほらりと応援で前に来る子がいるけど例年通り。ただ、神崎君が出場する競技になったらどうなるんだろ。



「百メートル走に出場する生徒は入場口に集まってください」



 放送委員のアナウンスに立ち上がる。入場口へ移動する私に友人が「がんばれー」と言ってくれたのでがんばることにする。私と同じレースの子はテニス部と陸上部と吹奏楽部と部活に入っていない子らしい。待っている間にそんな話をしていたようだ。私は我関せずをしていたから知らないけど、足に自信があるのだと直前に言われたから、最後にならないようにだけ走ろうと思う。正直、走り込みをしている部活生に勝てるとは思えない。勝てるとしたら部活をしていない子だが、かわいらしい子で、勝ったら男子に何か言われそうである。それでも負けるのは嫌なので全力は出す。



「位置について、よーい――」



 パン!とスターターピストルが鳴る。スタートダッシュは陸上部。その次にテニス部、吹奏楽部、私、部活に入っていない彼女の順番。彼女を応援する男子の声にちょっといらっとした。百メートルだから早々に終わったが、射殺さんとする視線に辟易する。勝負なんだからいいじゃん。結果はスタートダッシュを決めた順だった。だから小さなブーイング。意味がわからない。

 チームに戻ると、残念と言われた。何が残念って帰宅女子と一緒になったことを指していた。どうやら二年の中で人気の高い子らしい。運動部じゃない子に負かされて男子に慰められている。と、彼女のクラスメイトの友人からメールが来た。言われても知らないし。勝ったのは私が速かったからだし。どうやら運動部と吹奏楽部に負けてもいいが、料理部の私に負けるのはいけなかったみたいで、ちょっと面倒なことになっている。男子受けもあるけど、女子受けも良いみたいで敵判定をいただいた。それだけで敵判定とかおかしいだろ、というツッコミはいけないらしい。友人が言っていた。ツッコんだら負けだ、と。つまりツッコんではいけない。だから私はチームメイトを応援した。そして、午前中の間に妹弟は来た。メールで知らせてもらうようには言っていたから、約束通りで私は満足だ。

 観客席の方に向かうと、平均身長を超えた茶髪二人がいた。百七十センチの妹と百八十二センチの弟。それだけで目立っていているのに、さらに私に百メートル走で負けた人がいたからさらに目立つ。妹弟は私を見つけると駆け寄ってきて両側から抱きついてきた。高身長の二人に抱き締められて苦しい。私は平均身長ちょっとくらいなのです。だから苦しいんだって。あとすごい目立ってる。美人な妹と美形な弟のせいで目立ってる。妹弟は好きだけどやめて。苦しいことを伝えて離してもらったときには帰宅女子が前にいた。



「二人と寺崎さんの知り合いなの?」


「兄弟だけど。妹と弟。二人とも、部活は?」


「午後から」


「俺らにはやることがあるから、午前は免除してもらった」



 帰宅女子を放置して妹弟は私のチームのところに行きたいと言うので連れていく。きょろきょろと誰か探しているようで、耳元で「神崎君ってどれ?」と訊いたから探しているのは神崎君らしい。一年の団体から神崎君を呼んで妹弟に紹介した。



「彼が神崎直君。神崎君、妹の愛衣と弟の愛樹」


「初めまして、神崎さん。愛弥の妹の愛衣です」


「弟の愛樹です」


「神崎直です。寺崎先輩にはお世話になってます」



 挨拶をして、私を介さず話し出した三人から離れてみる。愛衣にすかさず手首を掴まれた。



「どこ行くの、お姉ちゃん」


「だって三人で話してるから……」


「愛衣。時間だ」


「もう? まだ忠告してないよ」


「言っとけよ」



 愛衣はちょいちょい、と神崎君を手招きした。愛樹に耳を塞がれて何を言っているのかわからないが、神崎君の顔から和やかでないことがわかる。妹弟はにこやかに帰っていった。不機嫌な神崎君と状況のわかっていない私と、不躾な視線を残して。

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