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隠して恋情  作者: 崎村祐
幕間
28/34

28:想う理由

 神崎君を好きになったのはどうしてか。絆されたのかもしれないけど、私は絆されたからと言って好きになるほどお人よしではない。ではなぜか。それは私にとってもわからないから、謎かもしれない。でも、きっかけはあったと思う。後輩ではなく、男の子として見るきっかけが。

 神崎君と初めて会ったのはたぶん、部活見学。料理部には珍しい男子生徒で、印象に残っていた。かわいい顔立ちに少し長めの髪の毛。制服を着ていなければ女の子と間違えそうな美少年。そんな第一印象。「部活見学なら、体験入部してみたら」という部長の一言で、初めて一年生を迎えて部活をした。神崎君の手際に唖然とした私たち。案の定と言うか、私は卵白や生クリームを泡立てるのを手千田ってもらった。部長の勧誘は少々強引だと思ったが、もとより神崎君は料理部に入るつもりだったようで、「よろしくお願いします」と言った。それから女子生徒二人が入部して、三人だった料理部は六人になった。穏やかで静かな部活がにぎやかで楽しい部活になるまで時間はかからなかった。私が作ったものを食べないで持って帰る姿を見て、一年たちは首をかしげ、理由を言ったらちょっと気まずくなった。それをどうにかしたのは神崎君だ。曰く、「作ったものを食べようが持って帰ろうが本人の勝手だ」らしい。けれど、そんなことがあってから、私は少し離れた場所に座ることが多くなった。

 ある日、連絡用にアドレスを訊き忘れたとかで一年に連絡を任された時があった。一年の教室に二年は浮いていたから、連絡をさっさと終わらせようとしたら、一年女子に喧嘩を売られた。「神崎君はあんたなんか知らないって」と。部活のことで話があると言っても取り合ってくれないときは神崎君が諌めてくれた。先輩として恥ずかしい姿を見せたとは思うが、神崎君は気にせずに「クラスメイトがずみません」と謝る。神崎君が謝ることじゃないのに。私は何事もなかったように言づけて私は教室に戻った。この時の私は、まだ神崎君を普通の後輩としてしか見ていなかった。

 神崎君は私を女子として扱う。妹弟は姉だから、女の子と言うよりも本当に姉として、女として扱ってくる。家が近かった私の家に、妹弟はよく来た。忙しい両親に代わって、面倒をみてただけだが。だから、妹弟はやたらと私に踏み込んでくる。私のことを訊くわけじゃないくて、ただ、私のすることについて訊いてきただけ。神崎君も似たようなもので、どうして料理部なのかとか、勉強について話しかけてきたりとか割と話しかけてきた。私はつまらないらしいから、珍しいと思いつつ話す。そのうち、神崎君のことも多少は知って好きになったのかもしれない。友人以外に私に話しかけてくるのは部活関係か事務的なことくらいだから、嬉しかったのだろう。まさか、神崎君を好きになるとは、初めて会ったときは思いもしなかった。

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