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隠して恋情  作者: 崎村祐
chapter2:構う理由
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20:文化祭

 文化祭の準備はとどこ売りなく進んでいる。部活はメイドカフェだから衣装の準備や食べ物の準備であわただしいが、クラスのほうはタコ焼きだから慌てなくても問題は無い。タコが若干高くて、元が取れるかわからないから冷凍の案が出ているくらいだ。それだと、焼くより揚げた方が美味しそうという話になったりして平行している程度の問題、問題ではないだろう。どうせ、結局は生地から作るのだ。

 十月末。もすぐ文化祭だ。べニヤ板に絵やメニューを書いた紙を貼り付けたり、テントの飾りを作っては付け、稀に男子に潰されたりとあったが形にはなり、前日には机を運び出すだけとなった。部活のほうが慌てたくらいだ。衣装は予約をしたから取りに行くだけだからよかったけど、メニュー表、机の配置、は……料理部の領分だけど身内で何とかなった。けれど、一番の問題は家庭科室の利用者との関係だった。今年は学校一モテるらしい先輩のクラスが料理に関する催し物をするらしく、家庭科室の調理台八つのうち、半分を持っていこうとしたと部長から聞いた。いくらなんでもそれは横暴で、生徒会から注意を受けたから、当日が不安なのだとか。面倒はごめんなんだが、風評被害に遭わないようにしなければ。面倒事は避けるが一番だ。向こうから来た場合は不可抗力で受けてたたないといけないくらいの問題である。

 そんな微妙な問題を抱えながら迎えた文化祭は、盛大とは言えないが幕を開けた。我が校は近隣からはそれなりに人が来る。他校の友人や恋人に家族。それに受験真っ盛りな中学生。チケットがない分、来やすいのだろうと思う。

 バトラーの衣装に身を包んだ私は髪を友人に整えてもらう。飲食物を扱うから、料理中は一つに結ぶことが多いが、今日は文化祭でしかも男装。だから、いつもよりもきれいに整えなさい、という部長命令が下されている。肩甲骨のあたりまで伸びた髪を友人は櫛で梳いていく。横髪を少し残し、残りはそのまま一本に結ばれる。いつもおろしている髪だが、結び方一つで印象というものは変わるものだな、と完成形を見て思った。



「どうよ」


「すごいね。ありがとう」


「当然」



 ふふん、と友人は得意げだ。料理部に所属している彼女だが、将来の夢は美容師なのだとか。化粧も校則違反にならない程度の薄化粧だし、友人はすごい。そのまま化粧道具を取りだた友人に私は怪訝する。「それは誰に使うんです?」首をかしげて笑顔を向ける。友人は何言ってんの、あんた。言わんばかりにきょとんとして、「あんた以外にはいないでしょ」と言った。私はこのままでいいんだけどな。言う暇もなく、私は友人に化粧を施されたのだ。まつ毛を少々盛られ、化粧水に乳液、化粧下地、ファンデーションにチーク。他にも塗られた気がしたが、化粧に詳しくない私にはわからない。



「いやあ、あんた肌がきれいだから塗りやすいわ。どこの化粧品使ってるの?」


「使ってないよ、化粧品なんて高いし」


「ま、あの家にいればそうなるか」



 友人は私の家事情を知っている。もう何年も友達をしているから当然だ。ロングスカートのメイド服に着替える友人に対し、私はバトラーの燕尾服に身を包む。本来はスーツで仕事をすることが多いらしい執事だが、今回はメイドカフェのようなものだから、燕尾服だ。調べたら、執事は使用人、給与などの管理をしているらしいから、まあ、一人くらい男装がいてもいいかな、と思ったりもした。

 私はメイドコスの友人を撮影し、友人が私を撮る。妹弟に送るのだとか。仲良きことは良きこと哉。私のクラスはたこ焼き屋だから基本的に制服だけど、部活の服を着たい場合はそちらを着ても良いことになっている。私や友人のようにクラスと部活を掛け持ちしている人が多いからだ。今日は楽しみにしていた文化祭だから、楽しもうと思っているけど、このときの私は文化祭にしかないイベントを忘れていた。

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