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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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蜜柑の兄としてちょっと気になる…

帰宅した龍介は直ぐに、寅彦の部屋に入った。


「どう?」


龍介は寅彦に落合賢治について調べて貰っていたのだ。


「落合賢治。親父は、この一帯の大地主。落合不動産社長。金持ちのボンボンだな。小さな不動産屋だったのが、駅前の再開発のお陰で大儲けだ。」


「ふーん。母親は?」


「お茶にフラワーアレンジメント、水泳、ヨガと、毎日お稽古事にお出掛けだ。兄弟は賢治の下に男1人の女1人。2人共、小学校から金のかかりそうな私立行ってる。」


「なんで賢治だけ公立なんだ。落ちたか?」


「だな。お受験で根こそぎ落ちてるようだ。小1、小2の時の通知表をハッキングした所、担任の先生は、情緒障害を疑って、親に通院を勧めている。」


「が、行ってない?」


「その様だ。通院履歴は無えな。」


「子供の病気より、体面の方が大事な親って所か。お受験で落ちまくったのも、あの落ち着きの無さが原因かな…。まあ、微妙なラインだろうけどな。粗暴な子って括りに入らない事も無い。」


「そっか…。苺、大丈夫か?」


「周りを味方に付けてみた。打倒落合に与するって子達をね。」


「へえ…。いきなり龍が行って、随分と協力的になるもんだな。」


龍介の顔がいきなり曇りだした。


「ど、どした…。」


「なんか知らねえけど、加納龍介って名乗った途端、伝説の男だなんだのと、子供達に(たか)られ…。なんだアレは…。」


大受けで笑い出す寅彦。


「笑いごっちゃねえって。サインてなんだよ。」


「そらそうなるだろう。あれだけやりゃあ。」


「ああ…、もう…。」


「まあ、いいじゃん。役に立ったんだし。」


「まあな。で、親父になんか弱みはある?親父が出て来たら厄介だ。」


「やけに羽振りが宜しい様なんで調べた所、脱税の疑いありだ。国税局が調査に入ってる。」


「ほお…。そしたら、イジメっ子のガキがどうなろうが、それどころじゃなくなるな。」


「だな。先生にチラッと言ったら、手入れを早めてくれる様、言っといてくれるってさ。」


「流石爺ちゃん。分かってんね。お父さんから連絡はと…。」


龍介は携帯を見て、ニヤリと笑った。


「入ってる、入ってる。」


「龍、どうすんだ、弁護士紹介してくれなんて。」


「まあ、後のお楽しみ。」


それから龍介は写真を撮ったり、パソコンで書類の様な物を書いて、紹介して貰った弁護士さんに送ったりしながら、何かを作ったり、秘密基地と家を往復したりして、苺達の帰宅を待った。


苺は久しぶりに、にこやかに帰宅した。


「にいに、みんなで守ってくれたの。にいにのお陰よ。本当に有難う。」


「そっか。」


「うん。靴隠し持って置いてくれたりね。苺が1人にならない様にしてくれたの。後で、みんな来るって。」


言ってる側から、息を切らせて、大矢が来た。


「真行寺、落合達の5人以外、みんな来るってよ!」


龍介が大矢のTシャツの袖を引っ張った。


「誰かバラすって事は無いか?」


「ありません。みんな伝説の男を信じてますから!」


伝説の男と言われる度に、龍介は引き攣った笑みを浮かべてしまうが、子供達は真剣な様である。

実際、続々と現れた。


「凄えな、龍の伝説効果は。」


覗いた寅彦も驚きを隠せない。


「寅までやめてくれ…。これなら人手は十分だな。蜜柑、苺、基地行くぞ。あー、えっと、君と君。他の子が来たら、前の林に行ってるって言ってくれ。」


「はい!」


龍介の指示に目を輝かせて返事する子供達に、龍介は苦笑するしかない。


基地で作業を始めると、話の通り、落合達5人以外のクラスの子が全員やって来た。

龍介に言われた通り、準備をしながら、感心した様子で、苺と蜜柑の作業を手伝ったり、見たりしている。


「凄いね、苺ちゃん…。パソコン使って…。」


しかもキーボードを叩くスピードと言ったら、プログラマー並みである。


「にいにがホログラム作れって言うから、プログラミングしてるのよ。」


「凄ーい。」


ホログラムって何?と聞く子には丁寧に説明してやりつつ、手は動く。

仲良さそうな様子を見て、龍介もホッとする。

そこへ見知らぬ少年がやって来た。


「あ、相原翔(あいはらかける)です。伝説のお兄さんですね。」


握手を求められたので、なんとなくしつつ、少年を見る。

割と可愛い顔をしているし、背丈も小6にしては、まあまあ高い。多分龍介が小6の時と同じ位だ。


「翔。持って来たあ?」


蜜柑が声をかけた。

どうも、蜜柑のお仲間という奴の1人らしい。


「おう!これでいい!?」


翔は紙袋からどっさりと、蛇や蜘蛛のリアルな人形を出した。


「これまた良い物を…。随分あるね。」


「母親が生物の教師やってるんですよ。専門が爬虫類で。だから、結構いいやつです。」


「大丈夫なのか!?そんなもん持って来ちゃって!」


「これ、家族全員嫌がってんのに、リビングとか、トイレとかにゴロゴロ置いてるんで、みんな迷惑してるんです。妹なんか未だに慣れなくて、しょっ中悲鳴上げてるもん。細工したまま持って帰って、母親の部屋に置いて、ギャフンと言わせてやります。」


「そ、そうなんだ…。」


そして早速、蜜柑と作業に入る。


「翔、コレ、腹に入れて、コードを手足とか口とかに刺して、スイッチ押す。OK?」


「はいよ。あんたらも突っ立って見てないでやれ。」


翔は手際良く、小さな装置と、トカゲや蛇を子供達に渡す。

蜜柑の兄として、翔の事はもう少し聞きたい所だったが、急がないと、落合達が来てしまう。

紙には、夜6時に…と書いておいたが、馬鹿だから無視したり、気づかないという事もありそうだから、急いだ方がいいだろう。

大急ぎで、指示を飛ばしながら準備をし、どうにか5時半位に終わった。

手筈を説明し、配置に着かせ、翔を見ると、翔は、苺に謝っていた。


「ごめんな。俺達がボコボコにしたら、余計酷くなったんだって?」


「ううん。いいの。あれで黙るのが普通だもん。にいに達も、いじめっ子はそうやって解決してきたし。ありがとね。」


翔、なかなかいい奴の様である。


「あ、お兄さん。」


このお兄さんという呼び方はどうもしっくり来ないが。


「なんだ。」


「あの基地って使ってますか。」


もういい歳だから、基地としては使用していないが、物置は使っている。

聞くという事は、譲って欲しい、ないしは、貸して欲しいという事だろうが、物置の中身はかなりやばい。

今回、他の子には、この雑木林も加納家の物で、この建物も、加納家の所有物だという説明しかしていないので、翔は蜜柑から、ここが龍介達の秘密基地だと聞いたのだろう。


「翔、その話は大変ややこしく、また俺1人の一存では決められない。また後でゆっくり話をしよう。」


「あ、はい…。すみません。」


監視カメラの映像を、穴が開くんじゃないかという勢いで、凝視していた大矢が既に真っ赤になりつつある目で言った。


「奴ら来ました!えっと、えっと、200メートル先!」


「全員配置につけ。合図以外で、勝手な行動はとらない。そして、いいと言うまで声は出さない。いいか?」


「はい!」


「よーし。作戦開始だ。」


龍介はニヤリと笑い、腕を組んだ。



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