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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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解決

龍介の手は、防御しきれなかったカラスくちばし攻撃で血だらけになっていた。


「龍!一回戻って来い!きいっちゃんがなんかしてるから、待てって言って来た!」


寅彦に言われ、龍介は撃ちながら、再びバリケードに戻った。


「きいっちゃんが?」


「うん。なんか、プログラミングを書き換えて、カラスに別の指示を出すから、発生器を壊さずに待てって。」


「出来んのか、そんな事…。」


「あの人ならやっちまうだろ。」


寅彦がニヤリと笑ってそう言うと、龍介も上空から襲って来るカラスを撃ちながら、ニヤリと笑って、頷いた。




「解除出来たわ!」


流石瑠璃である。

かなりの短時間であの巧妙且つ、複雑なパスワードを解除してしまった。


「よし!こっちも出来た!」


亀一は自作のプログラミングを組み込み、エンターキーを押し、祈るようにその瞬間を待っていた。




「やったな、きいっちゃん!」


真行寺が亀一の肩を、嬉しそうに叩いた。

カラス達は、山がある方向へ一斉に飛び立って行き、現場には、赤いリボンのカラス1羽だけになった。

赤いリボンのカラスだけは、他のカラスが行ってしまうと、アパートのストーカーの部屋の玄関に体当たりして、開けようとし出している。


亀一は、早速龍介に電話した。


「きいっちゃん、やったな!あんた本当にすげえよ!」


直ぐに褒める龍介に、照れるどころではなく、心配しきりの亀一。


「お前大丈夫かあ!怪我は?!」


「お陰様で大丈夫。」


しかし、すかさず寅彦が、龍介の手を圧迫止血しながら横から怒鳴った。


「手が傷だらけの血だらけだ!かなり深いとこもある!縫った方がいい!」


「やっぱし!。病院手配ですね、グランパ。」


「大げさだよ。ありがと、きいっちゃん。」


「全くお前はほんとにもう…。寅、発生装置、叩き壊せ。」


「いいのか、もう。」


「この分だと、多分成功してる。

山に行くようにっていうのと、今後、超音波装置が壊れたら、全てのプログラミングを忘れ去るようプログラミングしておいた。

要するに、装置壊せば、元のカラスに戻るって事だ。」


「じゃ、壊した方がいいんだな。分かった。」


寅彦は静かになった屋上で、龍介に自分で圧迫止血させると、ハンマーを手に装置に駆け寄り、思い切り叩き壊した。

すると、残っていた赤いリボンのカラスも、突然様子が変わった。

体当たりを止め、大人しく玄関の前の手すりにとまり、ぼんやりしているかの様だった。

瑠璃達が警察官に守られながら出てきても、もう何もしない。

まりもの事は見ていたが、行動に変化は無く、開け放たれた玄関から室内に入ると、何かを探している様な様子で、室内を歩いたり、飛び回ったりした後、木で作られた、とまり木の様な物にとまり、くちばしを何回か研ぐと、寝てしまった。


「リボンのカラス、ここにストーカーと一緒に住んでいたのかもしれないわ…。」


状況をみていた鸞が映像を亀一が使っていた寅彦のパソコンに送りながら言った。


「本とね…。なんだか寂しそうに見えるね…。」


そう言った瑠璃も鸞も、リボンのカラスが可哀相になってしまった。

超音波の洗脳が解けても、ストーカーとの間には、なんらかの、彼ら特有の絆があった様に思えた。

ストーカーの方は、カラスを利用していただけだったかもしれないが、カラスの方は、ストーカーに懐き、ここを根城にし、ストーカーの姿が見えなければ探すし、帰りを待っている様に見える。


「酷いわ。こんなに慣れさせて、犯罪犯させるなんて。」


鸞が怒るのと同時に、瑠璃にも怒りが湧いた。

こんな軍事レベルの技術を持ちながら、悪用しか考えず、罪も無いカラスを巻き込むとは。




結局、龍介は3針も縫う怪我をしていた。

病院にくっ付いて来た仲間達と、そんな話をして、怒っていると、真行寺が言った。


「あいつには、ちゃんとバチが当たるよ。」


「バチって何?グランパ。」


「警察でのストーカーの取り調べが終わって、裁判で、実刑が出たら、普通の刑務所じゃなく、政治犯向けの独房に入れて、一生出られず、用が済んだら病死する事になってる。」


固まる少年少女達。


「ん?まだ早い事実だったか?」


「ーいや、いいんだけど、そうだったんだ…。政治犯とか、機密漏洩した人って…。」


「そう。大抵は、あのストーカーの様に、軍事に使えそうとか、外交上有利になるとか、何かを持ってるから、そういう所に入れなきゃまず危険だろ?

そして、本人達には、一生出られないんだからと思い込ませ、協力させる。

全部出しきらせて、用済みになったら、国費の無駄遣いなので、薬を盛ると。」


少年少女達は、龍介も含めて、異口同音に叫んだ。


「怖ええええ~!」


「怖ああああ~!」


なんとなく、朧げには想像していない事もなかったが、実際に真行寺の口から真実として聞くと、恐ろしくなる。


「そうだなあ。」


真行寺は笑いながらそう言うと、龍介を立たせ、病院から出た。


「生徒会最後の事件も、一件落着か?龍介。」


「後は、副校長に今回の横浜北高との一件を、包み隠さず報告するだけ。

多分、渡部と板倉が1番嫌な形で決着が着くんじゃねえかな。」


「大学の推薦しないとかか?」


「うん。うちの学校は、よっぽど成績悪い以外は、主に素行で、希望の大学に推薦するしないを決めてんだろ?

あの行いは、英の生徒に相応しくねえもん。」


「そうだな。じゃあ、お疲れ様という事で、打ち上げでもしよう。」




そして龍介の言った通り、渡部と板倉は、校長にまで呼ばれ、2人で1人を袋叩きとは、英の生徒としてあってはならないとキツイ説教を食らった上、推薦で大学に行けると思うなと言われたらしい。

彼らは、成績的には、中の下。

志望校は上位校だったらしいから、推薦無しでの自力合格は厳しいだろうというのが、大方の予想で、龍介の言った通り、彼らにとって、1番嫌な形で決着が着いた。









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