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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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一方、龍介達は

瑠璃がトイレで苦しんでいる頃、寅彦は、村田が言う2人組の特徴から、モンタージュを作っていた。


出来上がった写真を見て、龍介が首を傾げた。


「どっかで見た顔だな。」


亀一は情けなさそうな顔で、龍介を見る。


「お前、それは無えだろ。うちのクラスの渡部と板垣じゃねえかよ。」


「はあ…。」


そう言っても、全くピンと来ない様子に、寅彦は笑いだしている。

亀一は更に呆れ顔になって、幼い子に教えるような口調になった。


「ほらぁ。何かにつけ、嫌味ったらしい言い方してくるから、お前、頭来て『そんなに気に入らねえなら、相手になってやる。表出ろ。』っつったろ?

そしたら、途端に謝り出して、逃げたって、お前しばらく怒ってたじゃねえかよ。

お前のそのどうでもいい事すぐ忘れ去る性格は、ほんと羨ましいけどさあ。」


「あ…、ああ!思い出した!彼奴(あいつ)らな!

で!寅、彼奴らの住所は?」


「なんと都合のいい事に、ここから2区画先と3区画先だ。」


「よし、呼び出そう。」


という訳で、2人を呼び出す為、龍介が、先ず渡部に電話をかける。


「加納だ。」


「え?なんで俺の携帯番号…。」


「んな事はどうだっていい。てめえ、ちょっと話がある。今から出て来い。」


完全に喧嘩腰なので、当然渡部は怯んだ。


「な、何…。嫌だなぁ…。生徒会長自ら何の用だよ…。」


「身に覚えが無いとは言わせねぇぞ。

てめえが汚ねえ、卑怯なマネしやがるから、学校同士の大問題に発展しちまったんじゃねえか。

原因作ったてめえがオトシマエつけろ。

いいから早く、3丁目みどり公園に来い。」


亀一が龍介の制服の袖を引っ張り続けたが、怒りに燃える龍介のヤクザ口調は直る事なく、結局、亀一の予想通り、ヤクザ口調に恐れをなした渡部は、どもった早口の、上ずった声で龍介の言葉を遮るように言った。


「ご、ごめん!用があるんだ!また今度にして!」


そして切れた。

渡部から話が行ったのか、板倉に関しては、電話にすら出ない。

家にもかけたが、母親に居留守を使わせている。


龍介は、申し訳なさそうに、村田を見つめて、頭を下げた。


「な、なんだよ、どした。」


「ごめんな。

ほんと汚ねえ奴らで、引っ張り出す事も出来ない。

直接話して謝らせたかったんだが、申し訳ない。」


「い、いや、いいって、そんな。

あんたが謝る事じゃねえよ。

考えてみたらさ、俺も電車ん中でデッカい声で喋って、迷惑はかけてたしさ。」


「それはそうかもしれない。

でも、2人がかりで襲い、その上逃げたってのが俺は1番許せない。

確かにお前らは、うるさかったのかもしれない。

でも、だったら、直接その件に関して文句を言うべきであって、(おとし)めるような事は言うべきじゃない。」


「オトシメルって何?オトシマエ?」


「い…?いや、んー、恥をかかせるって事かな。」


「ああ、成る程。うん…。そうだな…。でも、そうしてくれても、素直に聞けなかったかもな、俺。」


「お前もそういう所直せ。結局は、自分が損するだけだ。」


「うん。そうかもな。」


「渡部と板倉のオトシマエは、俺に任せてくれないか。

彼奴らが一番困る方法で、懲らしめとく。」


「分かった。あんたなら信用出来る。」


「でも、その代わり。」


龍介は少し笑って、村田を悪戯っぽい様な目で見つめた。

龍介本人は全く気付いていないが、龍介のこの表情はかなり魅惑的で、女の子なら、速攻で恋に落ちるし、男でも、ぐらっと来そうな顔である。


「な、何?」


「お前さん達も、車内や路上で他の人達の迷惑になるような行動は慎むように。無駄なトラブルの元だ。」


「うん。分かった。」


亀一達は、取り敢えずの一件落着にホッとしつつも、ある一点が気になって仕方がない。

龍介を見つめる村田の頬が赤くなっていたのだ。

目つきも、うっとりと表現してもいいような感じだし、駅に向かう今でも、なんだかやけに嬉しそうに龍介と話している。


「きいっちゃん、村田の奴さあ…。」


「寅よ、それ以上言わんでくれ。拓也だけで十分だというか、俺は未だに拓也が龍をというのが昇華出来てない。」


「そ、そうだよな。ごめん。でも、村田が龍にフォールインラブって、ややこしいなと思ってさ。」


「言えてんな。どうしたもんか。」




村田達と別れ、逆方向の電車に乗り込むと、龍介が不安そうな顔で言った。


「なんか胸騒ぎがすんだよな。瑠璃と鸞ちゃん、大丈夫かな。」


寅彦の眉間に皺が寄っている。


「実は俺も。全く報告が無えのが気になって、LINEだの電話だの入れてんだが、LINEは既読にならんし、電話も出ない。」


「んん…?それはいかん。あ、柊木に聞いてみよう。」


龍介がまりもに連絡をしようとすると、その手を寅彦が掴んだ。


「たった今既読になった。ん?」


いきなり、ムンクの叫びスタンプ。

そしてこう続く。


ー今、ストーカー犯の家で、ストーカーを誘拐未遂で警察に引き渡し、柊木さんは無事なんだけど、ストーカーの家で変な物見つけたの。それに、カラスの大群が家の周りに居て、出たら襲われそうな感じ。警察も、カラスを追い払おうとしたら、襲われちゃって、手出し出来ない。どうしよう。


一緒に読んだ龍介は、早口に指示を出した。


「鸞ちゃんに、そこ動くなって言え。ストーカーの詳しい住所を瑠璃に送らせて、速攻で向かう。」


寅彦が忙しなく連絡を取り始めた横で、亀一が不可解そうな顔をした。


「速攻って、このラッシュアワーにどうすんだ、龍。」


龍介は誰かにメッセージで連絡を取りながら、冷静な声で答えた。


「奥の手だ。一か八かだけどな。」






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