表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
70/174

生徒会最後事件?

龍介達がタクシーで件のマンションから少し離れた所に停めさせた時、マンションの地下駐車場から、シルバーのレクサスが出て来た。

慎重に身を潜めて、中見ると、目隠しをされた龍太郎が乗っているのが見えた。


「おい、あの車追え。」


真行寺が言うと、運転手はウキウキと車を回転させ、一台別の車両をわざと入れさせ、尾行し始めた。


「慣れてんなあ。」


真行寺が褒めながらそう言うと、運転手は胸を張った。


「この間、旦那の浮気調査してる奥さん乗せたんですよ。そん時に色々考えましてね。いやあ、ワクワクしちゃうな。運転手冥利に尽きますよ。」


少々変わった運転手だが、タンザワッシーを移動に使い、足の無い3人には非常に助かる。


車は多摩川まで行き、龍太郎はそこで目隠しに手枷足枷のまま降ろされた。

龍介達は大分離れた所から見守っている。


「怪我は無さそうだな…。」


心配そうな龍介に言う様に、真行寺は呟き、レクサスが遠く走り去ったのを確認すると、3人で一斉に龍太郎の元に走った。


「父さん!今外す!」


「龍!?。全くもう!寝てなきゃ駄目じゃないか!」


「もう元気だよ。葉っぱも自然と剥がれたし、咳も出ない。」


全て外して貰い、龍太郎は何事もなかったかの様に微笑んだ。


「父さん…。何言われた…?」


「何も。大丈夫だよ、龍は心配しなくて。」


龍太郎は、本当にそれ以上、誰にも言わなかった。

ただ、見た人間全員の顔はしっかり覚えていたから、それは全て竜朗に報告したらしい。

居場所を失くすと言われた事、その事には一切触れなかった。




龍介は心配で堪らない。

真行寺が言っていた、「こちらの動きを掴むだけでなく、他の目的の為にもスパイを入れているのかもしれない。」という事と、「奴らは汚い。汚すぎて分からない。」と、真行寺ですら予想がつかないのが、龍介をより不安にさせていた。


「龍、龍太郎さんが何も言ってくれない以上、どうしてやる事も出来ねえよ。」


寅彦もそう言いながらも、心配そうだった。

その様子を見たら申し訳なくなり、龍介は微笑んだ。


「そうだな。俺が心配したって、何も出来ねえもんな。何か起きた時に、対処するまでか。」


「うん…。」


「ん。ごめんな。」


「いや…。」


龍介が寅彦を心配させまいと、強がっているのは、長年の付き合いで分かる。

でも、これ以上、寅彦が不安そうな、心配そうな顔をしていたら、龍介はもっと感情を奥の方にしまって、無理をするのも知っている。


だから寅彦も、それに応えるべく強がった。


「ーま、そん時は頼りにしてくれ。」


「ああ。してる。よろしくな。」




表面的には日常が戻った。

3学期もそろそろ終わりに近づいて来ている。

4月になったら、新しい生徒会役員が選挙で決まるが、それまでは龍介達が生徒会役員である。

一応最後の役員会になる日だったその日も、目安箱を開ける事から始まる。


「もー、今月は大漁だあ。」


亀一が渋い顔で、ドスンと段ボール箱を2つも、長テーブルの上に置いた。

流石の龍介も驚きを隠せない。


「何、それ全部、目安箱の中身なのか?」


「そ。例のマッドサイエンティスト事件の動画、俺と龍ってすっかりバレててさあ。

まあ、俺は兎も角、お前の目はかなり印象的だからな。

あの動画を配信してから目安箱にファンレターが殺到。

1日で溢れ返る事態となり、先生が段ボール箱を置いといてくれたら、それにドカドカ入り、こういう事に。

一例を挙げよう。『加納生徒会長好きです。お返事ください。ハートマーク。中3ーA岡田大輝。』」


龍介の顔が一瞬にして青ざめた。


「お…男…?」


「まだあるぞ。『加納先輩大好きです。付き合って下さい。中2青木泰斗。』」


「は…はい…?」


「あー、その他諸々、龍がかっこいいだの、凄えだの、トランスポーターですねだのと、学校守って下さって、本当にありがとうございますなどの感謝の言葉で、この2箱と。

で、通常の目安箱の投書がこの3件。」


「な、なんだ…。」


顔色の悪いまま聞く龍介を、みんなして指まで差してゲラゲラと笑っている。


「その1。加納先輩の美の秘訣はなんですか。」


一同爆発するかの様な大爆笑。

読み上げた亀一まで笑っているので、とうとう龍介は切れた。


「きいっちゃん!あんた、喧嘩売ってんのかあ!それ、そっちの段ボール系の話だろ!?」


「そうかあ?」


「そうだよ!」


「ではその2。毎日同じカラスが教室の窓にやって来て、睨まれている様な気がします。怖いです。なんとかして貰えませんか。高2柊木。」


鸞が首を傾げた。


「それって、生徒会の仕事なのかしら…?」


龍介が頬杖をつきながら答えた。


「ーまあ、通常で考えれば、目安箱に入れる前に担任に訴えるだろうし、そしたら担任は、事務所に言うだろう。

そうすりゃ、普通はカラス避け対策は講じるはずだな。

それでもダメだったから目安箱にという風に考えるなら、俺たちの仕事だろうが、そのプロセスを踏まずにだと、ちょっと違う気もするが、まあ、一応調べて、俺たちから事務所に依頼してもバチは当たらねえだろう。」


「はーい。」


「じゃ、次は?」


「3カ月前から横浜北高校の生徒が、何故かやたら絡んで来る。

睨みつけて来たり、電車の揺れに乗じて、ぶつかって来たり、足を踏んで来たり。

今の所、取り合わず、無視しており、問題は起きていないが、囃し立てたり、せせら笑ったりと、どんどん挑発がエスカレートして来ている。

本校の先生に訴え、横浜北高校の生徒にも指導して貰った様だが、全く改善されない。

うちの生徒に会うと、誰かれ構わず絡んで来て、一触即発の状態になって来ている。

生徒会の方で動いて貰えないだろうか。高3ーB菱川。」


龍介の眉間に、機嫌が悪くなった時の皺が寄った。


「なんだそれ…。なんで喧嘩売って来てんだ。そもそも横浜北高校とはなんだ。」


瑠璃が遠慮がちに、鸞に小声で言った。


「あの…、この間私達ナンパして来て、なんか凄いガラが悪くて、鸞ちゃんが撃退した人じゃない?」


一瞬にして寅彦の顔色が変わる。


「なんで言わねえんだよ。聞いてねえぞ、そんな事。」


鸞はバツが悪そうに目を逸らした。


「あ~、そんな大した事無かったのよ…。

やかましいって言って、一応暗いからと護身用持って出た竹刀出して、ちょっと脅したら、逃げてったから…。」


「いつだよ。」


「一昨日だっけ?瑠璃ちゃん。」


「そうね…。」


瑠璃も俯いて、消え入りそうな声で答えた。

龍介が機嫌の悪い顔のまま、瑠璃をジッと見つめていたからだ。


「瑠璃。」


「は…はいっ。」


「そういう事はちゃんと言う様に。

一昨日っていうと、俺が退院した日だろ。

心配させたくないって気持ちは嬉しいが、相手が逆恨みして、何か仕掛けて来るとも限らない。」


「はい…。ごめんなさい…。」


一昨日、龍介が退院した日と言えば、龍太郎が拉致され、寅彦を学校から呼び出した日だ。

寅彦が居ないので、鸞が危険な目にと思うと、申し訳なくなり、龍介は寅彦に謝ろうとしたが、それより先に亀一が首を捻った。


「んん~?学校から帰ってからの話か?

お前らになんかあったら俺が殺されるからと、ちゃんと家まで送ってったろ?」


「ごめんなさい、きいっちゃん。

それが、帰って来て直ぐ、2人して忘れ物した事に気付いたのよ…。

今日提出期限の進路調査票…。

それで取りに、また制服着て戻ったの。」


「んなら言ってくれりゃついてってやったのに。日も暮れちまってるし、あんたら相当可愛いんだから、危ねえだろ。」


龍介と寅彦の代わりに亀一が怒ってくれたので、2人が黙って頷くと、鸞と瑠璃は小さくなって謝った。


「まあ、2人が抜きん出て可愛いからなのか、それともうちの制服を着てたからなのかは定かでないが、ターゲットは男だけでなく、女の子もという風に考えた方が良さそうだな。

これは捨て置けない。早速調査に入ろう。

寅と瑠璃はなんでもいいから、横浜北高について調べて。

俺は、菱川さんに話聞いてみる。

鸞ちゃんときいっちゃんは、菱川さんの担任から事情を聞いてみてくれ。

カラスの件は明日、柊木に話聞いてみて、事務所に話通してるのか確認。

してもダメという事だったら、2ーBのクラスにカメラを設置。対策を練ろう。」













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ