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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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タンザワッシーのプレゼント

めでたしめでたしとなり、続きは喜んで描いてくれる事になったが、タンザワッシーに会わせてあげた方が、今後何があっても描き続けてくれるのではないかという目算もあり、龍介達は、愛子にタンザワッシーに会いたいか聞いてみた。

2つ返事で会いたいと言うかと思ったのだが、愛子は逡巡した。


「どうしようかな…。会いたいけど、でも、なんだか怖い…。」


「なんで。」


直ぐに問うコウタ。


「わかんないけど…。」


「分かんねえなら会うんだよ、行くぞ。」


なかなか強引なコウタだが、愛子みたいな女性的な人には、こういう男がいいのかもしれない。


愛子は、コウタがバイクに乗せて行くというので、龍介達は、真行寺の車に戻った。


真行寺は寝ていたが、おデコの葉っぱは外れていた。


「グランパ、葉っぱは?。」


「気がついたら、無くなってたんだよ。でも、たんこぶも治ってるし、血圧も楽な感じだから、いいのかなと思ってさ。」


「そっか、良かった。」


「話ついたか?」


「うん、タンザワッシーに会わせてみる事にした。」




丹沢湖に到着し、龍介がタンザワッシーを呼ぶと、直ぐに水面に現れた。


「あおん!」


「愛子さん、見つかったぜ。ちゃんと続き描いてくれるってさ。」


「あおん!」


なんだか嬉しそう。


コウタも話しかけた。


「お前のモデルだ。宜しくな。」


「あおん!」


コウタは龍介に聞いた。


「なんつってんのかな?」


「宜しくなって言い返してる感じじゃないんですか。」


「お前凄いね。よく分かるね。」


そう言っているコウタの横の愛子は、しきりと首を捻っている。


「全然分からないわ。ちゃんと言葉喋らせといたはずなのに、どうしてあおんしか言わないのかしら。」


ー作者が分かんねえの⁈


とは思ったが、なんらかの事情であおんしか言わなくなってしまったのだから、仕方ないかもしれない。

嬉しそうなタンザワッシーは、愛子にお願いするように、頭を上下に振った。


「ちゃんと描いてって言ってるみたいですよ?」


龍介の通訳に頷くタンザワッシー。


「うん、分かった。本当にごめんね。すぐ描くし、今後何があっても描き続けるからね。」


「あおん!」


タンザワッシーは嬉しそうに返事をすると、真行寺を見つめ、小脇に挟んだ葉っぱを咥え、差し出した。


「ん?俺に?お陰様で、たんこぶは治ったぜ?」


「あおん。あおん。」


タンザワッシーは葉っぱを取れと言うようにしゃくった。


「グランパの高血圧に効くのか?」


龍介が聞くと頷きながら、あおんと言っている。


「そりゃ、ありがと。どこ貼っときゃいいんだ?」


真行寺が受け取りながら聞くと、タンザワッシーは葉っぱを一枚咥え、やはりおデコにぴたりと貼った。

そして、残りの葉っぱを並べ、指差すかの様に、一枚一枚に対して、首を上下させ、真行寺のおデコをしゃくるを繰り返し、全部の葉っぱが終わると、あおん!と、ご機嫌良く言った。


誰も何を言っているのかわからなかったが、龍介だけは違う様だ。


「剥がれたら、また一枚って貼り続けて、葉っぱが無くなる頃には治ってると言いたい?」


タンザワッシーは嬉しそうに頷き、龍介に頬ずりした。


「ありがと、タンザワッシー!グランパの血圧はほんと心配だったんだ!」


タンザワッシーの顔を撫でる龍介に、笑顔らしきで、あおんを繰り返すタンザワッシー。


「この世のものとは思えん…。」


亀一が苦悶の表情で言うと、寅彦が笑った。


「龍の一番の心配事だったから、タンザワッシーもなんとかしようと思ってくれたんじゃねえの?

本来なら、一番世話になった龍に、礼をしたい所だけど、あいつ欲が無えから、心配事を解消してやろうって思ったんじゃねえのかな。」


「まぁ、そうなんだろうな…。」


タンザワッシーは愛子と向かい合い、愛子が再度約束すると、首を伸ばした。


「消えますよ、愛子さん。」


龍介が教えると、愛子は咄嗟に叫んだ。


「ありがとお!この世に生まれてくれて!絶対大事にするから!描き続けるからね!」


泣きだす愛子に、あおんと返事をしながら、タンザワッシーは消えた。




なかなか感動的な結末だったが、問題が残った。

流石に真行寺も、いくら居直ったとはいえ、出掛ける時まで葉っぱをおデコに貼り続けている勇気は無い。

龍介とイギリス滞在も控えている。

これで飛行機のファーストクラスに乗るのは、辛いのだが…。


「グランパ!葉っぱ!」


龍介が剥がす事を許してくれない。


「頼むよ、龍介。せめて家の中だけに…。」


「駄目だって!ずっと貼り続けてなきゃ!タンザワッシーは、そう言ってたろ⁈」


「えええ…。」


「駄目っ!」


そんな訳で、ブリティッシュエアラインのスチュワーデスに、好奇の目で見られながら、イギリスに到着。

出迎えてくれた龍彦もしずかも、挨拶もそこそこに、真行寺のおデコの葉っぱに大注目。


「お義父様。変わったファッションですわね。」


「親父、宗旨替えか。」


苺と蜜柑も興味津々。


「おじいちゃま、狸さん?」


「何になるの⁈」


沈痛な面持ちで答えられない真行寺に代わり、龍介が真顔で答える。


「これで高血圧治るんだよ!薬飲まなくて済むようになるんだぜ?!タンザワッシーのプレゼント!」


「タンザワッシー。

なんかまた楽しそうな事があったみたいだな。お父さんにも教えて。」


「うん。子供達の夢だぜ。」


自分だってまだ子供のくせに、そう言う龍介がおかしくて、可愛くて、龍彦は龍介をヘッドロックするように抱き締めて車に乗せた。

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