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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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犯人は…

龍介はタンザワッシーの葉っぱのお陰か、龍太郎が行方不明になった翌日の朝には無事退院し、竜朗は忙しいからと、真行寺の住む、麗子の家に連れて行かれていた。


「熱に強過ぎるってのも、困ったもんだね。危ないよ。」


麗子が紅茶を淹れながら言うと、真行寺も頷いた。


「完治するまでここで見張ってるからな。葉っぱも剥がしちゃダメ。」


「はいはい。」


龍介は苦笑しながら庭を見た。

大きなプールがある。


「よく、ここできいっちゃんと遊ばせて貰ったなあ…。」


すると、麗子も懐かしそうに言った。


「そうだったね。しずかちゃんまで浮き輪で浮かんでて、面白かったね。」


「母さんて、泳げないんですか。」


「いや、泳げるはずだよ?英の皆泳行事だって、ちゃんとやり遂げたんだから。若干ズルしたみたいだけど。」


「ズルってなんです…?」


嫌な予感しかしないが、一応聞いておく。


「龍太郎の足に紐付けて、密かに引張って貰ってたって。」


「母さん…。」


「だって、あれは女の子にはしんどいんじゃないのかい?

そん時、更に可哀想な事に、しずかちゃん以外全員生理で、休めちまって、しずかちゃんだけだったしさ。

いいんじゃないのかい、それ位。」


「はあ…。父さん可哀想に…。3倍は消耗しただろうな…。」


そんな懐かしさもあり、ぼんやりプールを眺めていると、プールの水がさざ波立った。


「なんかタンザワッシーが来る時に、似てる様な…。」


龍介が呟いた次の瞬間には、ザッパーンという音と共に、タンザワッシーが現れた。


でも、とても焦った様子だ。

その場から出てしまう事は今まで無かったのに、プールから出て来て、あおんあおん言いながら、誰かを探している様だ。


龍介は真行寺にダウンを着せられながら、急いで庭に出た。


「どうしたんだ、タンザワッシー。父さんは?」


「あおん!あおん!」


必死の形相で訴えるタンザワッシー。


「父さんになんかあったんだな…?」


「あおん!」


タンザワッシーは激しく頷いた。


「父さんに何かあった場所に連れてってくれ。」


真行寺は龍介を必死に止めた。

また冷たい水になんか入ったら、折角良くなったものを振り返してしまう。

しかし、龍介は真行寺を振り切り、勝手にウェットスーツを拝借し、行く気でいる。

仕方がないので、真行寺もウェットスーツに着替え、麗子に竜朗への連絡を頼みつつ、龍介と共に装備を5分で整え、龍介と連れ立ってタンザワッシーに抱えられた。




「んあああああ~!」


竜朗はとうとう頭をかきむしった。

風間が何事かと、腰を浮かしている。


ー龍太郎がタンザワッシーに連れ去られた後、今度は龍太郎になんかあったっぽいから、龍と顧問がタンザワッシーと行っちまっただあ?

もう!本っとに、龍太郎が絡むと、ロクな事になんねえな!

大体なんでタンザワッシーは龍を呼びに行っちまうかなあ!

龍太郎が誰かしらに拉致されたって、アイツは手足ぶった切られたって、情報は出さねえよ!

ほっときゃいいんだあ!


竜朗にとっては、最愛の孫である龍介と、敬愛する真行寺の方が何十倍も大切なのだ。

しかし、一応、あんなキャラでも、龍太郎は、重要人物である。

確かに、彼は情報は何があっても漏らさないだろう。

そこだけは信用出来る。

しかし、龍太郎を失ったら、宇宙開発が滞る上、地球の温存計画も頓挫してしまう。

あれは、龍太郎無しでは成功しない。

竜朗の立場では、龍太郎が拉致されたとしたら、黙ってやり過ごすわけには行かない。


「風間…。」


「は、はい…。」


「龍太郎に何かあったらしく、龍と顧問がタンザワッシーで向かった。

連絡あったら、チーム組んで、龍太郎救出作戦に入れ。

十中八九、龍太郎は殺さねえだろう。

何かあったとしたら、拉致だろうからな。」


「はい。承知しました。しかし、顧問…。」


「なんだ。」


「タンザワッシーは、移動手段に使えるようになったんですか。」


竜朗の眉間の皺が更に深くなり、風間は怒鳴られる前から後ずさった。


「ー知るかあ!あんなびしょ濡れの移動手段、2度と龍にはやらせたくねえっつーの!」


思わず風間に八つ当たり…。

風間は悲しそうに目を伏せ、胃薬を飲みながら指示を出した。




その頃、龍介と真行寺は、もう現場である山梨県の山の中に到着していた。


森の中や其処彼処に、ドライバーなどの工具が転がり、焚き火の跡の上には、龍太郎の作業用の軍服が干してあった。


「ー父さんは、工具投げて応戦したんだ…。」


龍介がベッセルのプラスドライバーを手に言うと、足跡を見ていた真行寺も頷いた。


「そのようだな…。何人か足を引きずっているし、龍太郎君の他に1人、車まで上半身だけ持って、引きずられた跡がある。

1人は工具がいい所に当たったんだろう。

そして、龍太郎君は、ここで倒れて、仰向けにされて、引き摺られて行った…。

血痕が一滴も無い所を見ると、熊とかに使う麻酔銃で眠らされたんだろうな。

車のタイヤ痕は竜朗に写メした。

直ぐに車種は割り出されるだろうが、拉致したとしたら、敵もそう簡単に足がつく物には乗ってねえだろうな。

この辺には、監視カメラも無いのも計算の内だろう。」


「でも、なんで父さんがここに居るって分かったんだろ…。」


「そこだ、龍介。

非常にマズイ事態だ。

龍太郎君の肩には、Gー84ーきが埋め込まれてる。

本人が望んで、居所は、蔵と図書館に繋がってる。

そのGー84ーきが、そこの道端に落ちてた。

血が付いた状態でな。

眠らせて、車に運んだら、直ぐに切開して取り出したんだ。

つまり、この意味が分かるか、龍介。」


龍介の顔付きも、深刻なものに変わった。


「ーGー84ーきは、父さん以外の技術じゃ、探知機を当てても発見出来ない。

Gー84ーきの信号を傍受するのも、特殊な機械だ。

つまり、父さんが肩に発信機入れたのも知ってるし、傍受出来る人間が、父さんの拉致に関わってる…。

スパイが居るんだ、蔵か図書館のどっちかに…。」


「そういう事だ。竜朗には今、秘匿回線で伝えておいた。

スパイも探さなきゃだから、表立っては動きにくいな。」


龍介は、2人を心配そうに、又、申し訳なさそうに見える表情で見守っているタンザワッシーを振り返った。


「タンザワッシー、もしかして、父さんの居る所が分かる?」


「あおん!あおん!」


タンザワッシーは激しく頷いた。


「分かるのか!?」


「あおん!」


「連れてってくれる!?」


「あおん!」


頷くタンザワッシー。

しかし、真行寺はいい顔をしていない。


「龍介、グランパは反対だ。

敵がどんな奴らかもわからない。

どんなドンパチになるかも。

俺は構わんが、龍介を連れて行くのは…。」


「でも、信用できる人は、スパイに見張られてるから、動けない。俺たちが行くのが1番手取り早い。そうだろ?」


真行寺がうんと言う前に、龍介はタンザワッシーに連れて行く様に頼み、タンザワッシーは龍介と、納得の行っていない真行寺を抱え込んだ。






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