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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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泣く2人に、無かった事にしたい2人

龍太郎は繁みの陰で、和臣ではなく、優子とランチャーを構えて待機していた。


「ーあらヤダ。出てこないじゃないの。龍君達。」


「うーん、終わったら、出て来るだろうから、龍達が出たら、ドカーンとやるつもりだったのに…。

あれえ?親父達入っちまったよ!?」


「駄目じゃないのよお!どうしてそうなっちゃうのお!?」


「これは、俺が何かしない様に、敢えて味方はあの建物から居なくならない様にしたんだな…。

龍ってば…。」


「んもおおお!

私だって、子供ターゲットにしたり、母校に侵入して、おかしな実験したなんて許せないのよ!?

これでもぶち込まなきゃ、気が収まらないじゃない!」


「うんうん。ほんとほんと…。

この間1000ー10ーきでやった時、親父に凄え怒られたから、ランチャーって、ちょっと控えめにしたのにさあ。」


軽い感じで同意する龍太郎を、優子が疑惑の目で見始めた。


「ー龍太郎君…。あなたまさかバレバレの態度とったんじゃ…?」


「ーえっ!?」


暫く考えた龍太郎は、思いっきり笑って誤魔化し始めた。


「あ、真行寺さんには凄い勢いでバレちゃってたかもなあ。あはははは!」


「あなた本当に幕僚監部なの!?なんなのそれはあ!」


「優子ちゃん、そうカッカしないで。お婆ちゃんになるんでしょ?」


「誰がお婆ちゃんなんて呼ばせますかあ!私はまだあなた達と同じ、44なのよ!」


「ご…ごめんなさい…。ま、ほ、ほら。仕方ないじゃん、もう。撤収しよ?」


優子はランチャーを放り投げる様に龍太郎に渡すと、スクッと立ち上がった。


「今日は栞ちゃんの検診なので、私は帰ります。」


「は、はい…。お疲れ様です…。」


優子が帰ると、龍太郎はホッとした様な溜息を吐き、そしてYouTubeの画像を再生して、龍介が、『ルール2。名は明かさない。』とノリノリで決め台詞を言っている所で止めて、微笑んだ。


「龍、なかなかいい作戦だったね。俺はこういう方が好きだな。」




乗り込んだ竜朗は、物陰に潜んで待っていた真行寺に声をかけられた。


「もー、顧問。」


「文句はこれ見てからにしてくれ。」


真行寺は分厚い書類を渡した。


竜朗は、表紙のタイトルを見て、眉間の皺を更に濃くした。


「『日本浄化計画』…?なんか嫌な感じしかしませんね。」


「その通り。研究室の棚の裏側の壁の中に隠してあった。中見てみろ。」


竜朗は読み進んで、顔色を変えた。


「同士討ちシステム実験場所…ハートフルケア療養施設…って、これ、去年老人が立て続けに死んで、職員の虐待があったとかで閉鎖になった施設じゃないですか。

でも、犯人は見つかってない…。」


「そうだ。なんで犯人も、真相の究明もされてないんだか、ここ見りゃ分かる。」


「ーこのメンバーですね…。現政権閣僚の3分2がメンバーだ。中には法相も居る…。」


「その通り。原因は足立の機械の実験だったから、警察に圧力かけたんだろう。」


「そういう事ですか…。

次の実験場所は英学園…。

上手く行ったら、中華街、コリアンストリート、歌舞伎町…。

そして俺たちか…。

マズイな。読み通りだ…。」


「そうだな。恐らく実験データは浅水にも、このメンバーにも渡っているだろうから、ここを破壊しても、また作れる。」


「ーそうですね…。読めました…。

武器輸出3原則の撤廃。安保改正法案。憲法9条改正。

その先にあるのは、この日本浄化計画…。」


「うん。」


「これ、龍には?」


「あの子が知ったら、正面切って戦いを挑む。

そしたらどうなる?

安藤に消されてしまうだろう。見せしめとしてな。」


「はい…。そうですね…。有難うございます。」


「んじゃ、龍介の所行こう。連れて帰るよ。葉っぱがあるとはいえ、寝ていてこそ効くもんだろうから、あの大立ち回りは悪化してないか心配だ。」


「そうですね。」


移動しながら、竜朗は苦笑して真行寺を見つめた。


「顧問。ありゃ、龍の作戦ですか。YouTubeに流すとか。」


「全部龍介の作戦だよ。俺は竜朗の動きを予想してやっただけだ。」


「はあ。全く、末恐ろしい。たっちゃんそっくりだ。」


「いや、龍彦より凄いんじゃないか?お前が先生だから。」


「顧問…?持ち上げても、今回の件は水に流しませんよ?。

龍の味方するなんて。

立場上、俺の方に付いてくれて然るべきでしょうに。」


「そう言うなよ。だから埋め合わせにコレ見つけてやったんじゃないか。」


竜朗は快活に笑った。


「確かに。有難うございます。」


「龍介の事、褒めてやってくれ。爺ちゃんに褒められんのがやっぱり1番なんだから。」


「ーはい。負けを認めて、褒めます。

確かに今回のもなかなかです。

龍らしい。

参りました。

なんかね…。本当に大事な事は何かって、思い出させて貰った気がすんですよ。」


真行寺も微笑んだ。


「そうだな。そのまんま言ってやってくれ。」


「はい。」




しんみりと、そしてなんとなく、ほんわかと幸せな気分になって、足立の部屋に入った竜朗と真行寺だったが、その光景に度肝を抜かれ、言葉も無い。

龍介は、殆ど泣きながら、薬を飲め、葉っぱを替えろと言う亀一と寅彦から逃げ回り、時々、意識を戻す男達の頭を蹴り飛ばして、また気絶させるという仕事はしつつも、『ヤーダぴょん』という謎の言葉を発しながら、5歳児の様にケラケラと楽しそうに笑っていた。

陰の元国防長官と、現国防長官が言葉を失い、立ち尽くすのだから、その光景の異様さは推して知るべし。

熱のせいのハイテンションと聞き、漸く我に返った竜朗は、龍介を押さえ込み、真行寺は葉っぱを貼り付け、2人で上半身と下半身を持ち、走る様に出て行った。

その間、全くの無言。

かなりの衝撃だったらしいが、2人の例の癖、無かった事にしたい行動だったのかもしれない。









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