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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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英学園の秘密

龍介達は、その足で、高等部の建物内にある、警備室と続き部屋の配電室に行って調べたが、予想通り機械は無かった。


龍介は学校の外側の出入り口に設置してある、全ての監視カメラの映像が保存されているDVDを借り受け、そのまま龍太郎の所へ、例の機械3つを持って行った。


「んん?コレ成功させた奴がいるのか…。」


龍太郎は、知っているかの様な反応をした。


「父さん、これがなんなのか知ってるのか?」


「うん。人の情動や神経に悪影響をもたらす電流っていうか、電波というか、耳には聞こえない超音波っていうか、今の所、自然界では勿論、人工でも、発見されていないし、作り出されてもいないはずのもの。

ただ、出来るんじゃないかという説だけはあった。

当然、兵器目的だけどな。」


「ーじゃあ、素人には無理って事だな…。」


「て事になるね。俺が知ってる限り、これが出来んのは、世界に1人か2人…。

それもちょっとヤバ目かも…。

龍、この件、親父に預けて、手え引きな。」


いつになく、龍太郎の目が真剣なものになっている。


「うーん…。引けそうなら引くけど…。て事は、俺目当てって事?」


「いや。俺関係で、龍だけ狙ってるにしては、遠回り過ぎるな。」


「俺だけじゃねえって、どういう事だよ。」


龍太郎は真意を隠す様にニヤっと笑った。


「おっと。喋り過ぎたかな。

いいね?これ以上調べんなよ?

つーか、龍。酷い顔色してるぞ。咳も酷いし、あの謎の葉っぱ着けて大人しくしてなさいよ?

龍になんかあったりしたら、俺が真行寺に殺されちまうよ。」




龍介は蔵を出ると、一緒に来ていた寅彦に小声で言い掛けた。


「寅、学校の奴らの…。」


「素性調べんだろ。承知してますよ、会長。」


「流石。きいっちゃんには内密に進めよう。つーか、これ調べたら寅も引け。」


「嫌だね。きいっちゃんはともかく、俺はフリーですから。」


「だって、なんかヤバそうだぜ?鸞ちゃんがいるくせに…。」


「あんたもだろ。龍。いよいよ持ってヤバそうだと思ったら、いっせーのせで手え引こう。」


「そうしよう。」




帰宅して、寅彦は直ぐ龍介に葉っぱを貼り、熱を測った。


「んがあ!40度近いぞ!寝なさい!」


「んじゃ、寅、俺の部屋でやって…。」


「そうするから、早く寝る!」


お手伝いさんに氷枕を持って来て貰い、寝かせると、早速作業にかかった。


「ははーん…。こりゃ、誰が狙われたっておかしくねえや。」


「赤松の他に、政界関係者が居る?」


「そうだな。政界関係者の他に、自衛隊でも、幕僚監部が殆ど。

それに、非常に怪しい警察関係。」


「ーつーと、公安か?」


「その通り。恐らく、図書館関係も居そうだし、内調じゃねえかなってのも。

普通の家の人間の方が少ないぜ。」


「なんでだ…?そういう子弟用の学校なのか?」


「もしかしたら、秘密裏にそういう事になってんのかも。」


「ーちょっと創始者の分倍河原さん調べてみてくれないか。現理事長も。

考えてみたら、なんか妙だ。

いくらグランパと東大の同期とはいえ、グランパが今付き合いある人は、全員、図書館の存在を知る立場にあった人ばっか。

なのに、分倍河原理事長だけが、普通の企業の会長ってだけってのも、不思議な気はしてた。」


「だよな。分かった。いいから龍は寝なさい。」


「うん。」


とか言いながら、大きな目を開いたまま、何か考えながら天井を見ている。


「龍、いい?」


「うん。どした?」


「創始者の分倍河原理事長のお父さんて人、警視庁に居たんだ。

同期の人は、先生のお父さん。

先生のお父さんは…。」


「図書館の初代顧問。ひょっとして、分倍河原さんは、うちのひいお爺さんが図書館司書になると同時に辞めてるとか?」


「その通り。直ぐに資金を集めて、英の土地買って、学校建ててる。」


「やっぱ関係者だったか。そんで、現理事長は?」


「国会図書館に毎年結構な額の寄付をしてる。で、レストラン経営の筈なんだが…。」


「うん。」


「海外にしても、国内にしても、店舗のセキュリティーが半端じゃない。

そして、警備員は、元自衛隊とか、警官とか、そんなんばっかだ。」


「なるほどね。レストランも経営はしてるが、内実は、図書館とか、情報局の仕事でも使ってんのかもしれねえな。

街中の図書館なのかもしれない。

だから、学校にしても、やたら監視カメラの数は多いし、警備員さんも常駐なんだな。」


「狙われる可能性のある子弟ばっかだからと。」


「そんな所だろう。

それに、あの過酷なカリキュラムも、鍛える一貫つーんなら、分かる気がする。

それに、俺たちが右翼に連れ去られた事件の後、更に詰所まで設けて、警備員さんを増やしたのも、過剰反応じゃねえかと思ったが、そういう事なら納得だ。

で、寅、これは難しいかな。

父さんが言ってた、例の機械を開発できそうな人物ってのは…。」


「うーん、厳しいな…。そもそもそういう電流ってのが、物理とか、どういう区分に入るのかも、俺には分からない。」


「そうだな…。俺もちょっと分からんな…。」


「龍は熱のせいで頭回んねえんだよ。飯食って、薬飲んで寝よう?」


「いや、食うと吐きそう。薬だけ飲んで寝る…。」


「お前、昨日から殆ど食ってねえじゃん…。大丈夫かよ…。」


「大丈夫、大丈夫。1週間食わなくても死なねえ…。」


「それ、体脂肪がある奴の話じゃねえの…?龍って体脂肪10いくつじゃなかったっけ?まあ、いいや。兎に角、寝なさい。」


「ん…。寅も有難う…。もう調べなくていいから…。」


「うん。分かったから。」




翌朝も微熱がある状態のくせに、学校に行く気の龍介。


「龍。本とに肺炎でも起こしたらどうすんだい。やめときな。

葉っぱの効力無くなっちまったんだろ?替えの葉っぱも無いんだしよ。」


竜朗がかなり強い口調で言うのだが、聞こうとしない。

タンザワッシーの葉っぱは効力が無くなると、自然と剥がれ落ちてしまう。

そのままずっと着けて居れば、剥がれる頃には治ったのだろうが、貼っては剥がしを繰り返したせいもあるのだろうし、それ以前に、そのまま真面目に貼っておけば、完治したものを、剥がして動いていたから、完治する前に効力が切れてしまったのだろう。


「ヤバイから手え引けって爺ちゃんも言うんだろ?きいっちゃんを説得しないと。」


「それは麗子さんに頼むから、お前はうちにいな。」


「大丈夫だよ。微熱なんだし。」


「龍!食欲無くなってんのに、倒れたりしたらどうすんだい!」


「大丈夫だよ。行ってきます。」


「こらあ!龍!」


珍しく愛する爺ちゃんの言う事も聞かず、行ってしまった。

寅彦が慌てて追いかけながら竜朗に言う。


「なんとか保健室で寝かせとく様にしますから…。」


「悪いな。頼んだぜ。」




「龍、大丈夫かよ…。あんだ、その顔色は…。」


電車で合流するなり、亀一が言うと、平然と返した。


「平気。」


「平気って顔じゃねえって…。」


心配する亀一の横で、瑠璃は泣き出さんばかりである。


「もう…。死んじゃったらどおするのよお!」


「死なねえよ。こんなの位で。」


龍介は笑って、瑠璃の頭を撫でるが、鸞も深刻な顔で、心配そうに言う。


「うちのお父さんもそう言って、気管支炎悪化させて、呼吸困難になって、死にかけたのよ?。大事にしないと、駄目よ?」


「はい。授業中は保健室で寝てます。」


うんうんと、激しく頷いて、強引に龍介を座らせた。


「龍、昨日の件だけど…。」


「アレは、相当ヤバイ話らしく、父さんからも、爺ちゃんからもストップがかかった。

多分、学校側からも、もう手え引けってお達しが来るだろう。

きいっちゃんも、動かない様に。」


「でも、監視カメラの映像は?」


その質問には、寅彦が答える。


「解析途中で、先生に没収された。お手上げだ。」


「本とだろうな?お前の事だから、直ぐにコピーとってんじゃねえのか。」


「本と。」


亀一は納得していない様な顔をしていたが、龍介の体調も最悪だし、父親としての自覚と覚悟も芽生えて来たのか、それ以上は何も言わなかった。




学校に着くなり、龍介は校長に呼ばれた。


「加納君。依頼しておいて申し訳ないんだが、この件は、警察に任せる事にしたから、もう調べなくていいからね。

寧ろ、捜査の邪魔になるから、何もしない様にして下さい。ごめんね。」


龍介は教室に1度戻り、寅彦にそっと言った。


「やっぱ、校長から待ったが入った。警察に頼むって言ってたけど、図書館だろう。繋がってんな。やっぱり。」


「なるほど。こっちは、監視カメラの解析済んだぜ。」


「じゃ、後で保健室来て。」


「了解。」











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