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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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原因発見

一応マスクはして学校に行ったものの、着いた時にはかなり咳が出始めていた。


「大丈夫か、龍…。無理しなくていいのに…。」


心配する寅彦に、笑顔を返して席に着く。

5時間目の授業始まるギリギリに着いたからだ。


「もう熱は無いから大丈夫。ごめんな。」


亀一も、瑠璃も鸞も、遠くの席から心配そうに見ている。


ーやっぱ、葉っぱ剥がして来たのがまずかったかな…。


酷くなる咳に、そうは思ったものの、1人で電車に乗るのに、あの葉っぱを着けて来るというのは、かなり厳しい。


ーまあ、胸の葉っぱは着けたままだし…。

でも、こっちが咳に効いて、デコのが熱に効くってはっきりした区分がある訳では無いんだな。不思議なもんだな…。


本当は寂しいはずの亀一も、龍介を帰そうとしたが、大丈夫だと言い張るので、中等部に聞き込みに向かった。


「加納先輩!!!」


龍介が教室に入ると、ザワザワというか、キャアキャアというか。

男子が多いので、キャアキャアとは行かないが、相当喜びに満ち溢れているのは、よく伝わって来る。

男子生徒にも人気が高く、憧れの的な龍介。

瑠璃も鼻が高い…って、単にデレデレとにやけているだけだが。


「来年もやるんですか!?2CELLOS!」


「おう。」


「楽しみにしてます!」


少し笑って、言った子の頭を撫でると、いいないいなと、歓声が上がり、撫でられた子も飛び上がらんばかりに喜んでいる。


「俺も確か、2CELLOSやってんだがな…。」


亀一がぼやく様に言うと、寅彦達が吹き出した。


「きいっちゃん、花が無えからな。」


「なんだそれは…。」


花が無いで大受けする瑠璃と鸞を横目に、龍介と共に、聞き込みに回る亀一。


矢張り、ムカついて殴った方は、あの時の龍介同様、どういう訳だか、怒りを抑える事が出来ず、殴られた方は、空想の世界に入り込んで、お幸せになっており、周りの事もよく分からなかったし、殴られた事もよく覚えていないと、電流に汚染された時の悟と、それを見て、怒りを抑えられなかった龍介の状態に酷似していた。


「やっぱ、建物に電流が出て来ちまってんのかな…。」


「調べよう!」


嬉々として言う亀一に寸暇を与えずお説教。


「駄目だ。あんたと俺の本気の殴り合いになったらどうすんだよ。

教室1個はぶっ壊れるぜ。

電磁波防止のスーツ用意してから。」


教室1個はぶっ壊れると聞いて、妙に納得してしまうその他3人。


「分かったよ。」


父になるせいなのか、100パーセント駄目と言われたからなのか、珍しく亀一は引き下がり、明日に持ち越したが、龍介は見るからに悪化している。

大丈夫大丈夫と、肩も借りずに帰宅したが、玄関でそのまま咳き込んで動かなくなってしまった。


「ほらあ!早く葉っぱ着けて、横になる!タンザワッシーが抗議に来るぞ!」


「はい…。」




寅彦に言われるまま、チノに、スターウォーズの絵本の絵の描いてある長袖シャツという龍介のパジャマスタイルに着替えて、そのまま夕食も食べずに寝てしまった龍介だったが、翌朝はしっかり起きて来た。


「龍…。無理すんな?」


竜朗にジト目で見られるが、爽やかな笑顔で返す。


「大丈夫。頑丈に出来てるから。」


「いや、龍はそんなに頑丈じゃないぜ?恭彦程じゃねえが、身体はそんな丈夫な方じゃねえよ?」


確かに、龍介は風邪をひいたとなると、かなり高い熱を出す。

ただ気力が凄いので、それで誤魔化している感はある。

京極も凄まじい気力でカバーしているが、彼の場合、本当にかなり身体が弱いので、龍介は身体が弱いという程では無いんだなと思った位で、正直に言うと、京極を知るまでは、龍介は身体が弱いのだと思っていた程だった。


「本当、龍…。きいっちゃんも親父になるって自覚はありそうだから、無理しねえよ、きっと。」


「いや。あの人は、ポンとその自覚が抜ける時がある。

お前も知ってんだろ。

探究心旺盛なのは結構な事だが、興味ある事が目の前に来ると、全て忘れ去っちまうの。

学者肌なんだよ。」


「そうだけど…。」


「大丈夫。熱も下がったし。」


「んじゃ、せめて葉っぱ着けて行…。」


寅彦が言い終える前に猛反発。


「それだけは勘弁してくれ!あの音楽会の日の、真っ赤な他人にされた仕打ちを忘れたとは言わせねえぞ、寅あ!」


余程傷付いたらしい。

気持ちはよく分かるが。




放課後、女の子は何かあるといけないからと(主に、龍介亀一が暴れだしたらという仮定に基づくが)、高等部の建物内にある生徒会室に待たせ、3人で電磁波防止スーツを着込んで、中等部の建物に向かう。


「事件が1番最初に起きたのは、3ーAの教室。1階の奥だ。そこから行こう。」


龍介の指示で3ーAの教室に入ると、なんだかよく分からないが、イライラする様な、落ち着かない気分になって来た。

しかし、教室には何も無い。


「寅、この下ってなんだ。」


龍介が聞くと、直ぐにパソコンで見取り図を出した。


「配電室だな。」


「そこ行ってみよう。」


そして階下に移動し、その配電室に入ると、更に気分は落ち着かなくなり、頭痛すらして来る様になった。


「なんか変なもん無えか探そう。」


ところがそこにあるはずの無い、変な物は見当たらない。

外には何も無いと判断した亀一は、配電盤の扉を開けた。


「龍、なんかあるぜ。」


龍介が1番頭痛が酷いらしく、こめかみを押さえながら横から覗き込んだ。

確かに配電盤の中に、妙な装置が組み込まれている。


「きいっちゃん、気をつけろよ。」


「分かってるよ。一々うるせえな。」


矢張り、結構イライラにも来ている様だ。

スーツを着て居なかったら、龍介の言った通り、些細な事から大乱闘の殴り合いになったかもしれない。

寅彦は気分が悪くなって来たらしく、とうとう蹲ってしまった。


「寅、出てろ。高等部戻れ。」


「ごめん…。吐きそう…。」


「ん。早く行きな。」


寅彦は、精神状態には影響無いが、車酔いの様になってしまった様だ。

寅彦が出たところで、漸く装置が外せた。

電源は配電盤から直に取っていた様で、龍介と亀一の変調も一気に治った。


スーツを脱ぎ、その機械を慎重に調べる。


亀一が暗闇にその小さな黒い機械をかざすと、この間と同じ電流が少し見えた。


「龍の言った通り、あの電流みてえだな…。だけど、配電盤に組み込んであるって事は、電気に伝わらせて校内循環させたんだろうが…。どうなってんのかな、これ…。なんであの電流が作り出せんのかな…。」


亀一は既に分解しそうになっている。

それを見ていたら、なんだかまたイライラして来た。


「つーか、誰が置いたかだろ?」


「それはそうだが、どうやって出したとか、コレ自体を調べりゃ、犯人も分かり易くなんだろうがよ。癖っつーのは出るんだから。」


「そうでも、危険だ。これは俺が預かって、父さんに調べて貰う。」


「嫌だっ!」


「嫌じゃねえっつーの!こんな危ねえもん栞さんが居る家になんか持って帰るな!」


「てめえは一々うるせえっつーんだよ!なんなんだ、俺のする事に偉そうに指図ばっかしやがって!」


「あんたは親父になるんだろうが!もう少し自覚と覚悟を持てえ!」


「みんながみんな、てめえの様に立派な人間じゃねえんだよ!」


寅彦が吐き終え、気分も良くなったので、戻ると、既に龍介と亀一はアクション映画並みの喧嘩をしていた。どっちかが殴り掛かろうとすると避けながら、蹴りかパンチ。

でも、それも避けながら…の繰り返しである。

大変見応えはあるが、ここは配電室。

どっちかの避けた蹴りやパンチが当たっただけで、火を吹く大破壊が起きる。

ここを生徒会役員が大破させたとなったら、損害額から言っても、ちょっとマズイ。


「止めろ!部屋壊れる!」


寅彦が最大音量で怒鳴りつけると、ピタッと止まった。


「まだあんじゃねえか?この部屋入ったら、また吐き気して来たし。」


怒りが収まらないらしく、バタンバタンと激しい音を立てながら、全ての配電盤の扉を開けると、同じ機械があと2つ見つかり、3人は漸く元の状態に戻った。


「龍、言いすぎた…。ごめん…。」


「いや、俺も…。寅、大丈夫か?」


「おう。すっきり。」


「ツー訳で、非常に危険な物だから、きいっちゃん、いいね?父さんに調べて貰うって形で。」


「うん。そうしてくれ。さっきの怒りは、我ながら恐ろしい。人間関係を破壊してしまいそうだ。」


機械を電磁波防止スーツで厳重に包んでいた龍介の動きが止まった。


「人間関係を破壊…。それが目的か…?」


「だとして、誰だ。中等部の連中の人間関係を破壊させたい奴って…。」


寅彦が言うと、龍介は寅彦に、校内の見取り図と配電の設計図を出させ、説明し始めた。


「高等部の建物の配電室もこれから一応調べるが、状況から見て、この機械は設置されてないだろう。

高等部の配電室はこの通り、警備員さんの詰所の中にある。

設置し辛かったと考えるのが妥当だろう。

しかし、配電の設計図を見ると、この中等部の配電室は、高等部の建物の半分まで賄ってる。

電気通して電流が徐々に校内に回ったのだとしたら、高等部に被害が行くのも、時間の問題だった。」


「つまり…。ターゲットは、うちの生徒全員て事か。」


亀一が聞くと、少し首を捻った。


「全員か、誰か1人なのかは分からないが、ターゲットは中等部のみとは考えない方がいいって事だろう。」


「ーなんだか空恐ろしいな…。こんな技術持った奴にターゲットにされてるなんて…。」


寅彦が言うと、龍介は頷き、校長に電話をかけながら言った。


「学校の警備を高めて貰う様に頼んでおく。

犯人は、内部の人間てのは考え難い。

中に居たら、被害に遭わないって保証は無えからな。

運が良ければ、機械から指紋とか採れるかもしれねえし、こっちはこっちで、学校に出入りした人間を捜査してみよう。

まあ、あまり考えたくは無いが、内部の人間の犯行という可能性も残しつつって感じかな。」
















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