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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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龍介くん寝込む

「なんか今回は謎が多かったなあ…。

あの笛の男の亡霊が、エネルギーを蓄えるのに、諏訪湖に行って、そのエネルギーは人間が居ると早いからという事で、佐々木を呼んだのは、諏訪湖は瑠璃の言う通り、日本のへそで、なんか不思議な力があるからだとしても、そもそもエネルギーって何なんだよ。

生命エネルギーじゃ、死んでんだから、ゼロだし、あの男は、佐々木が奪ったって言ってたぜ。」


瑠璃と悟は大丈夫だったが、龍介が珍しく風邪をひき、翌日休んだので、亀一は見舞いに来ていた。

鸞と瑠璃は移ったら酷くなるからと、龍介に玄関で追い返されている。


「そのエネルギーってえのは、未発見の電流の様だ。

唐沢のお袋さんが言った通り、霊体は電流の集合体の様なんだな。

佐々木の身体からは、もう無くなっちまってたが、おかしくなってる間は、その電流が脳に流れ続けてたから、あんなおかしくなってたんだろう。」


「なるほど。その電流の力で笛吹いて、嫁を探してたという事か。」


「変態が笛、上手かったって?唐沢がびっくりしてたぜ。」


「そう。上手かったんだよって、佐々木はお前らの間でも変態になっちまったのか。」


笑いながら言って、咳き込む龍介の背中をさすりながら亀一は心配そうに答える。


「だって、あんなカッコで登場すんだもん。

先生にボコボコにされるわ、見た目どう見たって変態。

でも、お前大丈夫か…。

嫌な咳だな…。しずかちゃんの気管支炎の時と同じ咳じゃねえかよ…。」


鸞を送って帰ってきた寅彦が、仏頂面で代わりに答えた。


「その通り。気管支炎だよ。

熱も9度越えてるしな。

全く無茶するから…。

変態にセーター貸さなきゃ良かったんだよ。」


「変態にセーター貸したって、瑠璃抱えてたから、あったかかったぜ?」


「そうでも!

その後、亡霊とやり合ったり、お前、タンザワッシーに連れて来られる時、唐沢にダッフルまで着させたろ!?

お陰で唐沢は殆ど濡れずに無事だったが、あの寒風でシャツ1枚でずぶ濡れだなんて!」


亀一も一緒になって、睨みつける。


「全くだ。大人しくしてろよ。ちゃんと治るまで。」


「それが暇で…。あ、きいっちゃん、久しぶりに3人でゲームする?」


「しねえ!寝てろ!」


熱に強い龍介、妙なハイテンションで暇だ暇だと言うので、寝かせておく為に話し相手になるしかない。


「しかし、セーターにトランクスだけの変態の方はピンピンしてるらしいからな。

なんとかは風邪ひかねえって本当だな。」


龍介の布団を掛け直し、亀一が言うと、隣に座った寅彦も言った。


「そう。龍はバカじゃねえって立証した訳だが、ここで大人しくしねえのはバカだからな。

先生帰って来るまで見張ってる。」


「俺も。」


「もう…。つまんねえの…。

あ、麗子お婆さん、葉っぱつけて治ったって。グランパからメール来た。」


「あの麗子ババアが葉っぱつけて大人しくしてる所想像すると、笑えるなよな。」


言えてると、3人で笑って、また咳き込む龍介。

寅彦が深刻な面持ちで亀一に進言。


「きいっちゃん、笑わせちゃいかん。」


「いかんな。深刻な話をしよう。」


「それ、病人にどうなんだよ。」


「ーそれもそうだな…。

しかし、あの電流は惜しい。人体に影響は無いのに、電気機器は一発でオシャカに出来る。

軍用にしたら、凄え兵器になるぜ。」


「人体に影響あんだろ。みんな佐々木みてえなバカになっちまったらどうすんだよ。」


龍介に言われて納得。


「本当、あのバカ加減は…。

怒りを抑える事が出来ず、蹴り飛ばして、諏訪湖に放り込んでしまった。

死ぬかもとか、一切考えなかったな。

まあ、偶然とはいえ、それで正気に戻ったけど。」


「珍しいな、龍がそこまでっつーのは。でも、冷たい水に浸かって、電流がなくなったのか…。」


考え始める亀一に寅彦が言った。


「でも、諏訪湖の底には、その電流があんじゃねえの?

そこで英気を養わねえとって、笛の男が言ってたんだろ?

折角電流溜めても、冷たい水で洗い流されちまうんじゃ、プラマイゼロじゃん。」


「いや、寅。多分、その冷たい水で電流がなくなるのは、人間だけなんだ。

霊体が電流の塊だとしたら、また別の話なんだろう…。

そうだ!諏訪湖だ!諏訪湖の調査だ!」


龍介が途端に嫌そうな顔になった。


「やめとけ、きいっちゃん…。あと2カ月で赤ちゃんだって産まれるんだし、今寒いから…。」


「春休み!」


「春休みに産まれるんでしょお?側に居てやんなくてどおすんだよ。春休みだってまだ寒いよ。」


「じゃあ、ゴールデンウィークだな!家族旅行がてら!」


「生後1カ月の赤ちゃんの旅行なんて大変だぞ。まだ首座ってねえんだからさあ。」


「龍!」


「あんだよ。」


「何故お前は俺の研究の邪魔をする!」


「俺は事実を言ってんだよ。」


「やかましい!余計な御世話だ!俺は行く!絶対俺が調べる!」


「んじゃ、そん時は俺たちも連れてってね…。Xファイルでやろうね…。」


「おう!決まりだな!」




「結局きいっちゃんは、病気の時ですら、龍に保護者させてますよ。」


竜朗が帰宅した時には亀一は帰り、龍介は眠っていた。


「まあ、しょうがねえな、そこは。

亀一と龍は双子みてえなもんだもの。

寅んトコだって、双子だけど、ちゃんと寅が兄貴やっちまってるだろ?

そうなっちまうんだろう。」


「そうですねえ…。」


竜朗は龍介の額に手を当てた。


「うーん…。下がんねえな…。」


「夜になって、また上がって来ちゃったみたいです。」


「そうなんだよな…。しずかちゃんもそうだった…。」


心配そうに龍介を見つめた後、寅彦に笑いかけながら、頭を撫でた。


「ありがとな、寅。もういいよ。後は俺が見てる。」


「なんかあったら、直ぐ声かけて下さい。」


「おう。ありがと。」




その頃、真行寺は、麗子と2人で、雪だるまの様に、こんもりとダウンジャケットやマフラーで防寒して、丹沢湖に居た。


「本当に来るのかい?そのタンザワッシーとやらは。」


「来るはず。他ならぬ龍介の危機だからな。」


「もしかして、龍介の近所の水辺とかって可能性は無いのかい。送って来てくれた学校のプールとか。」


ハッとなって固まる真行寺…。


「ほらあ。あっちで待ってた方が良かったんじゃないのかい?」


「ーい、いや…。知り合いが居る所に来るから…。」


「そう。まあいいけどね。こういうのも面白いから。あ、コーヒー湧いたよ。」


麗子はピクニック気分で、コーヒーを沸かし、マグカップとクッキーを真行寺に手渡した。


「ありがと。」


2人で並んでコーヒーを飲みながらクッキーを食べていると、ザッパーンというお馴染みの水音と共にタンザワッシーが現れた。


「おお!タンザワッシー!待ってたぜ!」


「あおん!」


タンザワッシーは、2種類の葉っぱを出した。


「あおん。あおん。」


1枚を咥え、真行寺のおでこの辺りを差し、もう1種類の方を、胸の辺りを差しながら咥えた。


「こっちをデコに貼って、こっちを胸に貼るんだな?気管支炎だから。」


「あおん!」


ご機嫌良く答えるタンザワッシー。


「凄いねえ。会話が成立してるじゃないか。」


楽しそうな麗子はタンザワッシーの頭を撫でた。


「この間はありがとね。熱下がったよ。いい子だね、あんた。」


「あおん。あおん。」


タンザワッシー、ご機嫌。

麗子に頬ずりして、真行寺にも撫でられて、礼を言われ、真行寺にも頬ずりして帰って行った。


「ねえ、タンザワッシーの作者の子は、こんな恩恵受けてないんじゃないのかい?なんで、龍介やあんただけなんだろうね。」


「産みの親にあまり感謝してねえのか、産みの親はそう困った事態にならねえのか…。

まあ、タンザワッシーも、タンザワッシーの世界も、救ったのは龍介だからな。」


「あんたも分かんないなりに助けてやったから、こうして助けてくれてるんだろう。うん。なんか長生きして得した気分だね。あんな可愛い幻想生物に会えるなんて。」


「そうだなあ。じゃあ、帰るか。」


「ん。龍介に届けてやらないとね。」




翌朝、龍介は大分気分良く目覚めたが、おでこと胸の葉っぱで力が抜けた。


ータンザワッシーのお陰で、病気になっても、直ぐ治るのは有難いけど、うちは童話の様だな…。


「龍、熱下がった様だが、学校どうする。今日はまだ休んどくかい?」


竜朗が体温計を見ながら聞くと、苦笑している。


「葉っぱつけて学校行くのはもう嫌だ。」


「そらそうだな。葉っぱ落ちるまで休んでな。」


「うん。」




しかし、学校では問題が起きていた。


「これは生徒会長が居ねえとダメだな…。」


生徒会室で、副会長の亀一が言うと、皆、唸りながら頷いた。

龍介はまた葉っぱをつけて登校する事になりそうだ。













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