調査開始
先ずはパソコンで調べられるだけ調べてみる。
「グランパは1940年、6月6日生まれ。
血液型O型。
地元高輪の小学校、中学校を卒業後、日比谷高校に入学した後、東京大学法学部を…おい、首席で卒業だってよ。
流石龍の爺様だな。」
「いやいや。俺はそこまでは…。
そんで?大学時代、麗子お婆さんとは、どんな関わりがあったのかな。」
「そうだな…。サークルは、剣道部所属。
麗子お婆さんは…。特に入ってねえな。
しかし、地元相模原の小学校、中学校を出た後、高校から今住んでる麻布に転居。
麻布高校を卒業後、おお、同じ法学部で…次席で卒業だってさ。
ナンバー1と2って訳だな。」
「ふーん…。大学ってよく分かんねえけど、同じ学部の人だから、当然関わりはあるんだよな?」
「まあ、あるんだろうな…。当時の写真とかほっくり出してみようか。」
「うん。」
卒業写真をほっくり出してびっくりである。
偶々だが、真行寺と麗子は隣同士で写っているのだが、真行寺の男前っぷりったら、凄まじい。
お爺さんになって、大分薄らいだらしい、ハーフっぽい感じが凄くて、映画俳優の様な格好良さ。
真行寺家の遠いご先祖様には、外国人の血が入っているそうで、未だに時々、外人ぽい顔立ちの人が生まれるらしいのだが、真行寺はまさしくそれだったらしい。
一方、麗子の方はというと、これまた凄い。
今でも、確かに美人な気はしていた。
ちょっときつめの顔立ちとはいえ、若い頃は相当美人だったろうなという類いの顔立ちである。
それが、その若い頃の美しさと言ったら、もう凄い。
昭和の女優なんか比べ物にならない程の美しさで、立ち姿といい、服のセンスといい、今でも十分通じる感じだ。
女性は数える位しかいないが、いかにも昔の日本女性といった感じの、古臭い、お世辞にも綺麗とか可愛いとかは言えない女性の中では、他の追随を許さずといった感じ。
こうして若い頃を見てみると、和臣や亀一は、麗子に似ている事が分かる。
「なんだ、きいっちゃんそっくりだったら、凄え美人て事じゃん。」
思わず龍介が言うと、寅彦に続き、鸞まで感心した様子で同意した。
「しかし、この頃を知ってるとなると…。
麗子お婆さんが、高校から麻布って事は、尚更、爺ちゃんや、うちの近所の人達じゃ分かんねえかもな…。
まあ、一応、優子さんに聞いてみるか。」
という訳で、長岡家に行ってしまうと、麗子がいるので、優子を商店街のケーキ屋兼喫茶店に呼び出す。
「ごめんね、優子さん。大丈夫?麗子お婆さんは。」
龍介が聞くと、笑って首を横に振った。
「大丈夫よ。栞ちゃんが凄いお気に入りだから。
栞ちゃんが作るクリームシチューを楽しみに待ちつつ、拓也にお小言言いながら、亀一にどすけべって言ってるから、お忙しいの。」
目に見える様で、笑ってしまいながら、本題に入る。
「ううーん…。そうねえ…。
私が和臣さんと付き合った時も、結婚するってなった時も、『本当にいいのかい?』って何度も聞かれたのね。
どうしてそんなに?って聞いたら、『結婚とかってのは、どんな相手としても、何かしら苦労や問題は生じるもんだ。その時、本当に好きな相手とじゃないと、やっていけない。辛すぎるから。』っておしゃってて…。
なんか含みがあるなあとは思ってたんだけど、結婚してから暫くして、実は、大学時代に好きな人が居たんだけど、親の勧めに従って、長岡の父と結婚してしまったっておっしゃったの。」
「で、それは誰とか、どんなお付き合いをしてたとかは?」
「それは教えて下さらなかったわ。」
「でも、なんで親の勧めの結婚の方を選んだんだろ。
麗子お婆さんなら、関係無く我が道を突き進みそうだけど。」
「うん。確かに。
でも、お義母様のお父様は軍人で、そのまま自衛隊に行って、蔵に関わってた。
長岡の父のお父様もそうだったから、いくらお義母様でも反旗を翻すのは厳しいというのと、もう1つ仰ってたのは、その好きだった人、『どうしようもない奴だからね、関わらなくて正解だったよ。』とも仰ってたの。」
どうしようもない奴…若き日の真行寺にぴったりの言葉である。
「関わらなくて…って事は、お付き合いはしてなかったのかな?」
「どうなのかなあ…。分からないわ。
私が知ってるのは、結婚してから大分長い間、和臣さんが出来なくて、結構いびられたらしいっていうの位かな…。」
寅彦がパソコンを出して言った。
「そうみてえだな。麗子お婆さんは大学出て直ぐ結婚してるが、和臣おじさんが産まれたのは、結婚してから8年経ってる。
真行寺グランパの方は、結婚は遅いけど、結婚したら直ぐ、お前の親父が産まれてるな。」
「なるほど…。優子さんから見て、うちのグランパと麗子お婆さんという取り合わせはどう?」
「美男美女だし、お似合いとは思うけど、珍しくお義母様が敵視なさってるのが、真行寺顧問なのよねえ…。
まあ、考え様によっては、あのお義母様が敵視するっていうのが、不自然ではあるんだけど。
嫌いなら嫌いで、存在無視する人だから。」
「そうだよな、やっぱり…。」
優子が目を輝かせた。
「なんか分かったら教えてねん。ロマンスのお手伝い位しちゃうわよん?」
「うん。よろしくお願いします。」
優子が帰った後、鸞が龍介をマジマジと見つめた。
「ん?」
「龍介君…。凄い手っ取り早い方法、忘れてない?」
「ん?」
暫く考えた後、龍介は頭を掻きむしった。
「うおおおおお!!!なんか、封印してた!アレがあったんだよな!」
「アレ…?おお!アレかあ!そうだよな!」
寅彦も、この段階で漸く気づいたらしい。
というわけで、アレを使うべく、久しぶりに秘密基地の倉庫へ…。
ところが…。
「これはどう考えても、動かねえだろ、龍。」
龍介の適当な調達に寄る、適当な建設状況のせいで、経年劣化に伴う雨漏りが激しく、タイムマシン二台、パラレルワールド装置まで、錆も凄ければ、腐った落ち葉が山ほどくっ付いて、腐葉土状態になっている。
一応、腐葉土を取り去り、作動させてみようとしたが、全く動かない。
亀一に頼めばなんとかしてくれそうではあるが、栞も居るし、クリスマスだし、なんだか申し訳ない気がする。
それに、
「お前がああゆう適当な調達して、俺の言う通りやんねえから、こういう事になるんだあああ!」
と、怒られるのは必定。
17にもなって、亀一に叱責されるのも、辛い物がある。
せめて、直すお願い抜きで、別の機会に謝りたい。
「地道に調べる事にする。
寅と鸞ちゃんは明日からフランスだろ?
ごめんな、付き合わせて。
瑠璃に協力してもらえるか、聞いてみるから。」
「えー、残念だわ。凄い、興味あるのに。」
「俺もー。」
ぶーたれる2人に笑顔で謝る。
「ごめんな。きいっちゃんに直してって頼んでも、どっち道、今日中には直らねえだろうしさ。経過は、随時報告するよ。」
帰宅後、竜朗にも聞いてみたが、10歳以上上という事もあり、殆ど知らないと言っていた。
龍介は瑠璃に電話し、協力を得て、当時、真行寺と交友のあった人に話を聞きに行く事にして、その日は寝た。




