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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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龍介くん、早速支える

その日の会議で結論は出ず、明日に持ち越された。

夏目は龍介の赤い目を見ると、何も言わずに、龍介の頭をガシガシと乱暴に撫で、その後からずっと龍太郎付きにしてくれた。




その日の警護任務が終わると、龍介は寅彦と話していた。


「龍太郎さん、凄え決断したもんだな。

あれだけ空爆反対唱えてたのに、最終兵器みてえなの作ったら、その責任も取るなんて…。

あの人が一番納得行ってねえんだろうに…。」


「うん…。」


「龍、大変だろうけど、お前が支えてやれば、あの人の強さならきっと大丈夫だよ。

あの人を本当に支えられるのは、お前としずかちゃんと、真行寺さん。

きいっちゃんは仕事で支えてくれるだろうし、俺から見たら凄えサポート軍団だ。

絶対大丈夫だよ。」


「有難う…。」


「って、俺も組長の受け売りだけどな。

あの演説聞いて俺もショックでさ。

組長に言ったら、そう言われた。

んで、考えてみたら、確かにな、ってさ。

龍は俺たちの中じゃ、キングオブ頼れる男だし、真行寺さんはあの夏目さんが頼りにしてる。

しずかちゃんは言わずもがな。あの人は人を元気にさせる魔法を持ってる。

きいっちゃんは天才だし、長岡のおじさんより、龍太郎さんの理解者だ。

確かに最強のサポーターだなってね。」


「ありがと…。精進します。」


寅彦はうんと頷くと、気分を変える様に笑った。


「しかし、なんでいきなり結婚なんだよ。まあ、きいっちゃんから聞いて、俺もほっとしたけど。」


「いやあ…。これが普通とは…。大変なもんだな。身を滅ぼしそうだ。」


「なんだそりゃあ。まあ、いきなりだと、戸惑うのかもな。」


「そうね。でも、別れたばっかなのに、直ぐ会いたくなるとか、毎日でも会いたいとか、なんか分かる様になったぜ。」


「そら良かった。唐沢も嬉しいだろう。」


「そうなのかなあ…。」


「でも、やったな、龍。」


「へ?」


「この間の情報流出事件、よく堰き止めた。」


「いや、アレは佐々木の功績だろ。あいつが見つけたんだもん。師匠がいいって知らしめたじゃん。」


「いや、それでも、それを生かしてくれるかどうかは、実働部隊の実力にかかってる。

あんな戦闘機使って、片手で78キロ持ち上げて。本当、大したもんだよ、お前は。」


「寅〜、八咫烏来てよ〜。」


「親父の下は嫌だっつってんの。」


「んな事言ったって、ここ居たって、加奈ちゃんと仕事の奪い合いじゃねえの?」


「まあ、それはありますが…。でも、佐々木とも結構いいコンビだって話聞いたぜ?」


「ーまあ…、案外いい感じではあったかな…。しっくりぴったりとはちょっと違うが、安心感はある様な…。」


「んじゃ、いいんじゃねえか?俺も育てた甲斐があるってもんだぜ。」


「けど、俺は育ての親の方がやり易いよ。」


「俺も龍と組みてえなとは思ってたけど…。13階から飛び降りんのはちょっとなあ。」


「あれは佐々木にも無茶させたな。」


2人で苦笑し合い、龍介の気分もなんとなく晴れた。




翌日の会議では、賛成多数で龍太郎の爆弾による空爆が可決され、龍太郎による空爆は、アメリカの極秘裏の作戦という事にし、空爆は正式に決まった。


帰国の日、護衛の龍介は、龍太郎の部屋で荷造りを手伝いながらボソッと言った。


「日常の生活って、なんか救われるもんだよな。」


「ーん?」


「いや、俺の仕事のストレスなんて、父さんに比べたら、本当に微々たるもんで、比べられねえけどさ。帰って来て、いつも通りの日常があると、なんかホッとする。」


「そういうストレスみたいなもんは、人と比べてどうこうじゃないよ、龍。やってる事も違うんだから。

龍のストレスと俺のストレスは、内容が違うだけで、重さは変わんないよ。」


龍太郎はそう言って、龍介を心配そうな目で見た。

恐らく、初めてテロリストを射殺した時の事を心配してくれている。


「あ、アレはもう大丈夫だよ。そん時にね、ああ、日常って有難いもんだなって思ってさ。」


気付いた龍介が笑って言うと、龍太郎もホッとした様に微笑んだ。


「ならいいんだけど。そうだな。日常がホッとするってのは同じだね。俺もそうだよ。」


「だから父さんも毎日ちゃんと帰って来て、俺たちにお帰りって言われて、お父さんとベッチンベッチンやって、母さんの飯食いなさい。」


「ーうん…。」


「変に距離取ろうとしたりしたら、お父さんと蔵に突入して、うちに拉致監禁すっからな。」


「はいはい。」


龍太郎は幸せそうに笑うと、龍介の頭をくしゃっと撫でた。


「有難う、龍。拉致監禁されねえ様に、そうします。」


「ん。」


「ところで車だけど。」


「うん?」


「結婚祝いに父さんがなんか買ってあげる。」


「でも母さんが結婚祝いにやるわよ!って怒鳴ってくれてたけど…。」


「涙目でだろ?」


しずかは、自分の愛車のルノーRV7を、龍介に結婚祝いでくれると言ったが、言いながら、竜朗の膝に泣き崩れていたので、龍介も気にはなっていた。


「うん。爺ちゃんの膝で泣いて、爺ちゃんが無理すんなって言ってたけど、くれるって…。正直、凄え貰いづらい…。」


「だから、父さんが買ってあげる。カスタマイズ付きで。」


「いや、そんないいよ。ただでさえ、結構世話になっちまいそうだし…。結婚がこんな金かかることとはつゆ知らず…。申し訳ありません…。」


「そんなのいいんだよ。龍と瑠璃ちゃんは、ささやかな結婚式って言ってたのに、周りが色々呼びたがって、でっかくなったりしてんだから。本当は何が欲しいんだ?」


龍介はかなり逡巡していたが、龍太郎がせっつくと、恥ずかしそうに車種を呟いた。

しかし、龍太郎は驚いた様な、若干怯えた様な顔になっている。


「おい…、お前、それ大丈夫なの…?」


「ダメかな…。やっぱり…。」


「いやあ…。実は、俺も昔あの車は乗ってたし、好きだから、分かるけどさあ…。」


「やっぱ、他のにした方がいいかな…。」


「いや、折角だから好きなのに乗れよ。ずっと憧れだったろ。」


「うん…。」


「じゃ、いいんじゃねえの。よし、決まりな。父さん見つけてカスタマイズしてやるから。」


しかし、この車、2人の不安通りの展開となるのだが、結婚に自分の車と、ウキウキ気分の龍介は、この時点では余り深く考えていなかった。





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