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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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脅迫メール

龍太郎の下に、脅迫メールが届いた。

早速、図書館で加来が画像と音声分析をしながら、全員で見る。


龍介は手を前に拘束された状態で、ベットの上に座っていた。

怪我をしている様子は無い。


「父さん、こいつらの言う事を聞いて下さい。

でないと、俺は殺されます。

俺は生きて、また父さんと旅行に行って、雪だるまを作ったり、下仁田ネギの浅漬けが食いたいです。

だから助けて下さい。」


無表情に言う龍介は、言わされている感がアリアリだが、それにしても、気になるフレーズがある。


「龍はネギってあんま好きじゃねえし、ネギの浅漬けなんか食った事は無え…。これ、ヒントだな。」


竜朗が言うと、龍太郎も頷き、言った。


「一緒に旅行に行って、雪だるまを作った事もありません。」


強引にくっ付いて来た寅彦が直ぐに検索をかけて言った。


「群馬の山奥に、下仁田ネギの浅漬けってもんを作ってた工場があった様ですが、潰れてます。」


「群馬県…。なら、雪は深い…。そういう事かい。流石だな、龍。」


ビデオは覆面の男に切り替わった。


「この可愛い息子の命が惜しいなら、指定のアドレスに、クラリスシステムと宇宙開発のデータを全て送れ。

8時間以内だ。それ以上経ったら殺す。」


加来が画像と音声の解析を終えた。


「龍介君の声と本人で間違いありません。

また、声の響き方から見て、かなり広い密閉空間ですから、寅の言った通り、工場跡という線は濃いですね。

画像が細工された形跡は無し。

また、この端っこに映り込んでいるポスターの様なものを、調べてみた所、下仁田ネギの浅漬けのポスターでした。

この会社は2年前に潰れて無人です。

1時間前のものですが、衛星で確認した所、SUVが3台確認出来ました。」


「直ぐ急襲班送れ。」


そこに聞き覚えのあるいい声が響いた。


「多分もう居ない。」


「吉行…。」


知らせ聞きつけて、佳吾が来てくれた様だ。


「我々と同業者なら、人質を取っている場合、居所は1時間弱、ないしは2時間毎に変える。」


「1時間弱じゃあ、追跡し終えた時には、もう居ないって事んなるぜ…。」


「その通り。それが狙いだ。どこから突き止められるか分からんからな。だがしかし、穴もある。」


「穴ってえのは?」


「綿密な計画通りに事を進める。

そこに穴があるんだ。

次の移動時間、場所、全て事前に計画し、準備をしてから事を起こす。

だから、敵側は何時何分に何処にいるか、突発事項が起きた時の避難場所はどこか、全て把握しているんだ。」


「その尻尾を掴みゃあいいのかい?車の手配にアジトの手配の…。」


「それより手っ取り早い事を龍彦がやっている。龍彦の報告を待て。」


「ーまさかたっちゃん、敵のボスから聞き出そうっていうんじゃ…!」


「その通り。」


「危険だろ、それ!」


「龍彦も長年日米両国でエージェントをして来た男だ。保険はいくらでもある。それを使う。」


「ー吉行…。スパイの保険てえのは、使いようによっちゃあ、自分の首絞める事になんだろ…。」


「そうだ。しかし、それしか手は無い。」


「たっちゃん…大丈夫なんだろうな…。

自分の為にたっちゃんにもしもの事があったりしたら、龍は生きていけねえぞ…。」


「そこは私も不安に思っている。

あの子は昔から無茶をするからな。

という訳で、念の為、義兄さんが長岡君の戦闘機でイギリスに飛んだ。」


真行寺には、直ぐに連絡したが、図書館から車で20分の所に住んでいるのに、ここに来て居ないので、どうしたのだろうとは思っていたが、それで合点が行った。


真行寺がついていれば、まず間違いは無いだろうが、それでも竜朗の心配は募る。

しずかもきっと、気丈に振る舞いながら、激しく動揺している事だろう。


ーしずかちゃん…。たっちゃん、ごめん…。


竜朗は心の中で2人に謝りながら、捜索の指示を出すしかない。


「加来、ダメ元でいい。衛星で犯人の車追ってくれ。」


「はい。」


そして、はっと気が付いた。


「龍太郎は?」


「あ…あれ…?さっきまでここに…。」


柏木が焦った様子で答えたが、誰も気付かない内に、龍太郎は消えていた。

土台目立たない男で、誰にも気付かれずに消えるのは、昔から得意ではあった。


竜朗は咄嗟に電話をかけようとしたが、竜朗のデスクの上に置いてある龍太郎の携帯に気付く。


「あんの野郎…。何しでかす気だ…。」




龍介は、新たなアジトに連れて行かれていた。


ー察知される前に移動すんのか…。

それにこいつら、えらく統率がとれてるし、素人っぽいのは居ない…。

お父さんと同じ業種かな…。

かもな。同じ匂いがする…。


龍彦は父親としては、理想的で、本当にいい父親だし、性格もいいが、スパイとして第三者的に見ると、二癖も三癖もあり、一筋縄ではいかない、底が知れない感じがする。

それと同じ感じが彼らからはする。


ーこれは仲良くなって~なんていう甘い作戦は通じねえよな…。

かといって、ただ単にこうして待ってたら、8時間経っちまう…。

その前に父さんがデータを出したりしたら…。

出しちまうかな、父さん…。

いや、いくらなんでもそれは無いか…?


そかし、完全に否定も出来なかった。

龍太郎は龍介をもってしても、何をするか分からない男なのだ。




次にアジトになった所は、廃工場だった。

よくもまあ、こう人気無い、無人の場所を見つけるなと感心すらしてしまう。

やはり、龍介の居場所は、パーテーションで区切られている。

しかし、監視カメラは無い。


ーパタパタ竹刀とレーザーソードは無いが…。


龍介はジーンズのポケットの更に奥をまさぐり、ニヤリと笑った。



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