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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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なりすましの目的とは

瑠璃が弁当屋の5人を探っている間、悟がもう調べ上げた。


「加納、仕入れ先には怪しい所は無かったけど、配達先に一件、変わった所がある。」


「つーと?」


「中華料理店に弁当1つ。しかも毎日。」


「ーそら妙だな。まかないにした方が安上がりだし、一個って…。」


「そうなんだ。ここはウェブサイト見ても、配達の注文は5つからになってる。」


「どこの中華屋だ。」


「厚木基地のすぐ側。中国人が経営してるな。ほら、凄い派手派手の中華屋あるじゃん。結構値段が高いから、僕らは入った事無いけど。」


「俺も入った事ねえな。中国人ね…。やっぱそうか…。で、その中華屋は?」


「3年前に来日。日本人と結婚してそのまま住んでる。経歴なんかはクリア。だけど、材料調達と称して、随分な回数中国に渡ってるよ。」


「細かい渡航履歴は?」


「来日してから毎月1回は行ってるね。ここ1年は月2回の時もある。」


「多いな…。なんで公安のマークが入ってねえんだ…。」


「一応、宣言通り、買い付けもちゃんとしてるからじゃないかな。」


「成る程ね。従業員は?」


「従業員は中国人留学生が2人のみ。アルバイトの様だね。

学校は…。八王子だけど…。

なんか単位落としまくってるな。殆ど行ってないんじゃないかな。住み込みで働いてて…、中国には逆に戻ってないね。

来日はこの店主の来日の1年後。」


瑠璃が顔を上げた。


「さっきのお弁当屋さんの店主と従業員5人は、名前と本人は全くの別人ね。

この店主の元の顔の人は、鹿児島の高校を卒業して、そのまま地元の不動産会社に就職。

急に辞めて、3ヶ月後ーつまり、3年前の8月に、このお弁当屋さんを開いてるの。

他の4人もそうよ。鹿児島で、それぞれ違う職業に就いていたのに、突然こっちに来て、お弁当屋さんの従業員になってる。」


「ー家族は?」


「それが奇妙な事に、全員天涯孤独。両親、きょうだい無し。」


「ー瑠璃、元の職場分かるか。」


「ええ。確認取る?」


「いや、俺が取る。佐々木。」


「はいはい。」


「弁当屋と中華屋の金の動き調べてくれ。」


「了解。」


「瑠璃は佐々木と分担して、この2つの通信履歴徹底的に洗ってくれ。」


龍介は彼らの元の職場に電話をかけた。

全員が全員共、突然何も言わずに消え、アパートなど、住んでいる所に行っても、もぬけの殻だったという。

龍介の頭に、ある推測が浮んだ。


「瑠璃、この人達が消えた3年前の5月に、身元不明の遺体が上がってないか調べてくれないか。全国どこでもいい。顔が潰れてる遺体。」


「はいはい…。ええっと、3人居るわ…。

身元不明の男性の遺体が関門海峡沖で漁師が発見。推定30歳って、この5人と同じ年齢ね。

誤って崖から転落して、顔が潰れたんだろうって事で、県警で処理されてるわ…。って、龍、これ…!」


「そう…。多分、5人は、この5人にすり替わった男達に殺されたんだ。

それでわざわざ家族が居ねえ天涯孤独な人を選んだ。

鹿児島なんて遠い所から調達したのは、顔見知りに会わなくする為。

まあ、万が一名前を知っている人間に会ったとしても、地域が離れてりゃ、同姓同名でどうにかなる。」


「どうしてそんな事…。」


「俺が思うに、彼らは中国のスパイだ。

薄っすらと、父さんの存在や蔵の存在を嗅ぎ付け、探し回って、厚木が怪しいと踏んだんだろう。そして、厚木から地下に入る入り口を見つけた。

中華屋はスパイの元締めかもしれねえな。

急がねえと、あの入り口の写真を中国側に渡されたら厄介だ。」


龍介がオフィスに入ると、小島が声を掛けてくれた。

彼は、夏目率いる第1中隊の中の、小隊の隊長である。

中隊は4つの小隊から成り立っており、龍介がいつも居るのは、夏目直属の夏目隊である。

この下に3つの小隊があり、小島は小島隊を率いている。

第1中隊はただでさえ精鋭で、夏目が中隊長になってからは、更にそのレベルが上がった。

だから、小隊長といっても、夏目の管理下の第1中隊所属の小隊長ともなると、かなりのレベルの人間である。

中でも、小島小隊長は、夏目の信頼も厚い。


「なんかやる事出たか。」


龍介は分かった事を簡潔に説明した後、付け加えた。


「抑えた方が良さそうです。お願い出来ますか。」


「了解。んじゃ、指示しろ。」


「ーえ…。」


「えじゃねえよ。中隊長から言われてんだよ。龍介にやらせてみてくれってな。」


「はああ…。凄えプレッシャーだな…。」


とはいえ、期待してくれた夏目の為にも、ここはやらねばなるまい。


龍介は、自分を奮い立たせるが如く、ニヤリと笑った。



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