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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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蜜柑達の居場所

亀一は直ぐに来てくれた。


「一佐、インフルエンザらしいって?流行ってっからな。蔵。」


「じゃ、きいっちゃん達も気をつけないと駄目じゃん。景虎に移したら大変だ。」


「って、お袋が言うし、俺もそこは不安なので、親父と2人で蔵入る前に、ガスマスク装着しているから問題無い。」


「ガスマスク!?」


かなり大げさな気がするが、父と祖父の愛という事で処理。


「んで、これか。」


亀一は早速調べ始め、割と直ぐに分かったようだが、顔が険しい。


「きいっちゃん、何?」


「これは、瞬間移動装置ではあるんだが、先ず、この移動先の場所設定の表示が蜜柑語なんで、解読に時間がかかるのと、もう1つ、致命的ミスを犯しておる。」


「どんな。」


生死に関わるミスかと、龍介と竜朗は青くなって、亀一の答えを待った。


「戻って来る機能が無い。」


「何!?」


「作ってねえの!?」


「ねえな。忘れたのかもしれねえが。」


いかにも忘れていそうな双子の顔が、3人の脳裏に浮かぶ。


「取り敢えず、この蜜柑語を解読せねば、どこへ行ったのかも分からん。龍、手伝え。」


「は、はい。」


実の妹ながら、あまりの杜撰さに、龍介は言葉を失いながら、亀一と作業に取り掛かった。




その頃、蜜柑達は、遠い遠い、時差が昼と夜、ほぼ逆で、季節も真逆に位置する孤島で、観光客にも、誰にも邪魔される事なく、海水浴などのウォーターレジャーを満喫していた。


「蜜柑、そろそろ日本は8時だぞ。」


時計を手に一義が言うと、蜜柑はハッとした顔になった。

嫌な予感しかしない一義。


「ど、どした…。まさかお前…。」


「アレ…。帰るのどうすんだっけ、苺…。」


「ーえっ!?私知らないよ!?蜜柑がやっとくって言わなかったっけ!?」


「いや、そしたら、苺がやってくれるって言ってなかったっけ…?」


「あ…。」


今度は苺まで青ざめ、一義だけでなく、全員に嫌な予感が広がった。


「忘れてた…。」


倒れそうになりながら叫ぶ一義。


「どおすんだよ!こんな無人島で!帰るつもりだったから、野宿の用意なんかして来てねえし、食料ももう無えぞ!」


「蜜柑、苺ちゃん、今からなんとか出来ないのか…。」


無駄ながらも翔が聞くと、2人は首を横に振った。

機材も何も無い。

持って来たのは、浮き輪や水着などのレジャーグッズと半日分の食料と一応銃を持って来ただけ。

すると、青ざめつつも冷静な花梨が、いきなり銃を撃った。


「なんだよ!」


慌てまくっている一義が、飛び上がって驚きながら攻める様な口調で言うと、花梨は一義を一睨みして言った。


「ガタガタ騒ぐんじゃないわよ。サソリが居たから殺してやったの。夕方になったから、サソリだの毒ヘビだのが襲って来るわよ。取り敢えず、火を起こして、その襲撃を少しでも防御しないと。

その上で今後の対策でしょう。はい、あんたらも見たら撃つ。」


苺と蜜柑は途端に不安になって来たらしく、みるみる内にベソをかきだした。


「ごめんなしゃいい〜…。」


翔がなんとか慰めようと、蜜柑の頭を撫でた。


「仕方ないよ。取り敢えず、救助が来るまでなんとか生きてる事だけ考えよう?な?」


花梨も頷く。


「そうよ。2人に任せっきりで、そういう事チェックしなかった一義にも責任の一端はあるわよ。」


「お、俺かよ!?」


花梨はギロリと一義を睨みつけ、可愛い顔に似合わない、ドスの効いた声で言った。


「あんでしょうが。あんた、苺ちゃんが仲間に入ってくれてから、なんでもかんでも2人に任せっきりで、楽しんでるだけじゃない。この役立たず。」


「そこまで言われる筋合いあるのか!?」


「あんのよ。」


蜜柑と苺は責任を感じ、とうとう抱き合って泣き出した。


「ごめんなしゃいい!喧嘩しないでえ〜!にいに、ごめんなしゃいい!助けて、にいにい〜!!!」


流石双子。

異口同音に叫んでいた。




亀一と龍介は、機械のダイヤルの解読を急いでいた。

ダイヤルのメモリには、『でち』の隣に数字が書いてある他、車、お花、砂、ブランコなどとあるのが、2つついていて、1つのダイヤルの上には『縦』、もう1つには『横』と書いてある。


「ああ〜、きいっちゃん、もしかして、縦は緯度で、横が経度。

この『でち』は2って事で、横の数字と掛け合わせたのが、正確な数値なんではなかろうか。

で、この『車』はうちで考えると、駐車場である南。『お花』は裏のローズゼラニウムで北。『砂』は枯山水の庭で東。『ブランコ』は遊具が置いてある庭で、つまり西。」


「流石兄貴。てえ事は、南緯17度、西経149度って事だな…。」


龍介に呼ばれ、張り切って来てくれていた瑠璃が早速調べる。


「タヒチ諸島の小さな無人島よ。」


「はあああ〜!」


聞いた竜朗が頭を抱えた。


「なんつーとこに行ってやがんだ!こっから何時間かかると思ってんだよ!」


頭を抱える竜朗の横で、龍介は冷静に言った。


「ーだから行ってみたかったんだろうが…。仕方ない。救助までの間、あいつらだけじゃ乗り切れない。行って来る。」


「龍!?そら駄目だろう!?俺が行く!」


「爺ちゃんは仕事があんでしょ。俺は冬休みです。じゃあ、救助の算段をお願いします。俺は装備整えてあれで行く。」


蜜柑の作った機械を指差し、立ち上がる龍介に、亀一が言った。


「そんじゃ俺は、帰る装置を作っておく。こっちで操作して戻って来られるように。」


「いいのか?」


「当たり前だ。それに、そうすりゃ、自衛隊やらなんやらに頼んで、大事にせんで済む。」


「それはありがたいけど、大丈夫、きいっちゃん…。」


「任せろ。その代わり、唐沢にも手伝って貰わなきゃだが、いいか。」


「勿論です。」


「よし。じゃ、うちで始めよう。」


亀一と瑠璃が行き、龍介は加納家に1度戻り、装備を整え、秘密基地に戻って、機械の箱の中に入った。


竜朗はその間に用意していた衛星電話を渡した。


「これで亀一から連絡が行く様にしとくから。気をつけんだぞ。無理すんなよ?」


「おう。任せとけ。」


龍介は心配しきりの竜朗に笑いかけた。


「大丈夫だよ、爺ちゃん。こういうの慣れてますんで。」


「本とにもう…。変な事に慣れちまって…。本とに気をつけんだぞ?共通一次目前なんだからな?」


「了解。では行って来ます。」


龍介はスイッチだけは素直に『スイッチオン』と書かれたボタンを押し、振動の中消えた。




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