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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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やっぱり

朝5時。

薬を打たれてからきっかり8時間後、龍介は目を開けた。

腕枕でポチが一緒に寝て、ミケが脇腹の辺りに丸くなって布団に一緒に入っているのは、いつもと同じだが、違うのは、龍治が心配そうな顔で龍介の顔を覗き込んでいるのと、寝ている部屋だった。


「龍介大丈夫か!?あ、瑠璃ちゃんも起きた!?お母さーん!2人気がついたあああ!!!」


駆け込んで来たしずかは瑠璃のおでこと龍介のおでこに手を当てて、聞いた。


「大丈夫!?どっか具合悪いとかは無い!?」


「はい。大丈夫です…。」


「龍は!?」


「大丈夫だけど…、なんで客間で寝て…。あああ!蜜柑がああ!」


ガバッと起き上がった龍介に、しずかが事情を説明すると、龍介は険しい顔で言った。


「蜜柑だぜ?信じて待って大丈夫なのかよ…。」


「でも、万が一、予定通り今日の朝8時に帰って来たら、それはそれで一応約束は守ったって事になるじゃない。甚だ不安ではあるけど、一応蜜柑の成長の為にも、待って見た方がいいんじゃないかと思って…。」


「まあ、母さん達がいいんならいいけどさ…。それより、ごめんな、瑠璃。」


しずかも続けて頭を下げる。


「本当よ…。申し訳なかったわ…。こんな目に遭わせてしまって…。朝ごはん食べたら、おうちまで送って、お母様にも謝らせてね。」


「そんないいんですよ。なんかいい夢見れたし…。」


お馴染みの、にたあ…。

若干引き気味に、しずかが尋ねる。


「ど、どんな…?」


「龍にがっしり抱っこされて眠るんですう〜!」


それは半分夢では無かったと言うと、またにたあ…。


「んじゃ、もう、蜜柑ちゃん、許しちゃう。」


「いいや!許さんでいいわよ!?。瑠璃ちゃん!」


「そうだよ!許しちゃいかんだろ!薬盛ったんだぜ、あいつ!」


「いいの。ぬふふふ…。あ、でも。」


急に真顔になって、龍介を見つめる瑠璃。


「もし帰って来なくて、情報官が必要だったら、直ぐに連絡してね?」


「いや、そんないいよ…。ただでさえ迷惑かけちまってんのに、これ以上さあ…。」


すると、涙目になって、龍介に必死という様な顔で訴えた。


「だってえ!最近、私出番無しよ!?佐々木君ばっかりで、ちっともお呼びがかからないじゃない!そんなの嫌っ!寂しいの!私!加来君もフランスなんだし、お願い!」


「ごめん…。そういやそうだったな…。佐々木の事鍛えなきゃってのもあったけど、危険な事もあったから、ついつい佐々木に…。うん。じゃあ、そうするから。」


「ん!」


瑠璃も納得した所で、朝食を食べ、しずかと龍介で瑠璃を送り、瑠璃の母に謝った。


「いいんですよお、そんな。龍介君なら、色んな意味で安心してますし。お気遣いなく。」


色んな意味というのが、やけに悲しいしずか。




8時まで、ただ何もせずに待っているというのもしんどいものがあるので、龍介はいつも通り、龍治と謙輔と一緒に、竜朗と龍彦の稽古を受け、シャワーを浴び、龍太郎の宿題をこなしつつ、8時を待った。

ところが、やっぱりだが、蜜柑達は帰って来ない。

龍太郎も蔵から帰って来たので、一緒に秘密基地に行ってみたが、蜜柑達の影も形もない。


「龍太郎、これだと思うんだけどよ。」


竜朗が、例の器械を指差したが、龍太郎は帰って来た時から、どうも様子がおかしい。

蜜柑達が帰って来ないと聞いて、慌ててはいるのだが、身体が上手く動かない様な感じだ。

走れないし、動きもゆっくりしてしまい、反応も鈍い。

昨日から徹夜で疲れているのだろうかとも思ったが、普段、そんな事は物ともしないので、龍介は気になっていた。


「父さん、大丈夫?なんか顔色変だよ。」


「うーん…。なんか頭と節々が異様に痛くてね…。ごめんね…。」


と言いながら、器械を調べようと、手を掛けた所で、気絶する様に倒れてしまった。


「父さん!?」


抱き起こそうとする龍介を龍彦が羽交い締めにし、竜朗が止め、竜朗はそのまま、龍太郎の額に手を当てた。


「うわ、凄え熱だ…。こりゃあたっちゃん…。」


「インフルエンザじゃないんですか…。節々と頭痛って聞いた瞬間、なんか嫌な予感がしたんですよ…。」


竜朗はジロリと龍介を見て言った。


「だな…。龍は受験生なんだから、近寄ったら駄目だかんな。」


「そんな事言ったって、病院連れてってあげないと!」


「たっちゃん、頼む。」


龍介を後手に隠す様にしていた龍彦の顔色が、サーッと青ざめた。


「なんで…、俺です…。」


「だってしょうがねえじゃん。俺は蜜柑達なんとかしなきゃなんねえし、しずかちゃんだって、インフルエンザなんか移ったら、気管支炎起こして大変になっちまうかもしれねえじゃん。

直ぐ隔離して、陸自病院連れてってくれ。もしかしたら、未知の病原菌かもしれねえし、早く。」


竜朗と龍彦は、異様な程、無表情に見つめあった。


「未知の病原菌て、それは俺でもアウトなんですけど…?」


「早く。」


「お義父さん、復讐してんですか、昨日の…。」


「早くっ。」


龍彦は渋々感がありありと分かる様子で、龍太郎を乱暴に担ぎ上げると、片手でしずかにLINEするという、龍介並みの怪力を披露しながら加納家の方に戻って行った。


「となると、亀一に頼むしかねえかな…。」


「この器械が原因であって、誘拐じゃねえんなら、Xファイルだ。招集するよ。」


「ん。頼んだ。」




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