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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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家宅捜査

大鳥居大輔は、執務室である二階の窓から、その様子を見ていた。

ドアが乱暴に開き、イギリスで死んだ兄にかわり、新しいナンバー2となった、鳥居大吾が駆け込んで来た。


「頭領!加納竜朗が来ちまったぞ!あんた知ってたんじゃないのか!?なんで止めなかったんだ!」


「ーそうだな…。」


大輔はそう返事をしながら引き出しを開け、サイレンサー付きの銃を取り出すなり、いきなり、鳥居大吾の頭を撃ち抜いた。

それだけではない。

鳥居大吾が倒れた音で飛び込んで来る2人も同様に、あっという間に撃ち殺してしまった。

無表情に弾倉を変え、椅子に座ると、竜朗達の応対に出ていた男から連絡が入った。


「頭領、どうしますか。」


「令状があるなら仕方が無い。入れろ。」


男が小声で言う。


「ー加納竜朗、消しますか。絶好のチャンスです。」


「親父の失態を取り戻すか、真一。」


応対に出ていた男は、龍彦達に捕らわれ、龍治が脅して全てを話させた、灯籠の長男である。

灯籠が知っている事の全てを竜朗側に話したという事も、龍治が戸籍を取り、龍彦の養子になったのも、大輔の耳には入っていた。


「やらせて下さい。」


「では、任せよう。」


「ー頭領、慎也が居ます。ヤタガラスのコンバットスーツなんか着てやがる…。まずこいつから…。」


灯籠真一は恨みの篭った声で言った。

彼は完全に寝返った龍治のせいで、親父が捕らわれの身になったと思い込む事で、同様に裏切った形の父親を正当化しようとしている。

元々、龍治と真一の仲は悪かった。


「慎也はほおっておけ。我々とは関係がなくなった。奴が知っている情報など大した事は無い。」


「しかし!」


「あんな小物より、加納竜朗だ。期待してるぞ。」


大輔は一方的に電話を切り、門から入って来る、ヤタガラスのコンバットスーツを着た竜朗達を、さっきと変わらない無表情のまま窓から見ていた。





応対に出て来た真一と入れ代わりに、鳥居健一と名乗る男が出て来て、案内すると言う。


「案内は要らねえ。これは家宅捜査だ。命が惜しけりゃじっとしてな。」


竜朗に近付く前に夏目がボディチェックに入り、銃とナイフを取り上げ、図書館の人間に拘束させた。


「龍、行け。」


「はい。」


龍介は龍治としずかと共に座敷牢の方へ向かい、竜朗達は、地下から行った。

夏目は竜朗の盾の様に前に立ちはだかり、前方の全方位に目を向けて特殊作戦用ライフルを構えつつ進んでおり、あまりの隙のなさに竜朗が笑い出した。


「達也あ。お前が俺の前に立っちまったら、何にも見えねえじゃねえかよ。」


竜朗170センチ。

夏目176センチ。

それは言えている。


「敵の本拠地です。用心に越した事はありません。」


「全くもう…って、たっちゃんまで…。」


龍彦は竜朗の真後ろにぴたりと背中合わせに張り付いて、夏目同様、特殊作戦用ライフルを構えて進んでいる。


「加納さんがいけないんですよ。自ら行くなんて言い出すんだもん。」


龍彦、182センチ。

竜朗の背がもっと小さかったら、高層ビルに挟まれた、ちいさなおうちの気分である。

龍彦は、竜朗に龍介の方へ行けと言われたのだが、竜朗が行くとなると、予定を変更して、竜朗の警護に回ってしまった。


見取り図はしっかり頭に入っているので、地下への階段へは迷わず進む。

階段の途中から出て来そうだった銃を構えた男を夏目が撃てば、階段の上の方から竜朗を狙撃しようとしている男を龍彦が撃つ。


「すいません、出番ないです。」


と、柏木が苦笑混じりに言う程である。

これで入ってから1人確保し、2人射殺した。

大輔が3人も殺害しているとは、竜朗達は知らないから、残りは大鳥居大輔を含め、8人だと思っている。

地下への階段を下り切ると、そこには鋼鉄製の頑丈な扉があり、電子ロックで閉まっていた。


「加来。」


「はい。」


後方から加来が出て来て、難なく解除。

扉は開いた。

しかし、中は電気が消され、まっ暗だ。


「夏目君、来んじゃねえ?」


龍彦が言う。


「ですね。」


答えた夏目と共に、龍彦がCーBDーTを出したのとほぼ同時に、暗闇の四方から激しい銃弾の雨となった。

しかし、このCーBDーTは、更に五層にしてある。

仮にBD-58971-D51撃ち込まれても、中の人間は無事だ。

その分重さは一枚当たり70キロもあり、運んで来た柏木の部下達はさすがに息が切れている。

銃撃のお陰で、暗闇の中に敵の姿が浮かび上がっているのをこれ幸いと、盾の一部分に作ってある、防弾ガラス越しに見る、龍彦と夏目。


「アレ?夏目君。5人しか居なくない?」


「やっぱりそうですね。まだ隠れてやがんのか…。」


「うーん…。」


盾に守られ、無駄だと思ったのか、今度は破れかぶれか、3人程援護を受けながら、レーザーソードで突くかの様な構えで盾を片手に突進して来た。

しかし、3人は、竜朗をCーBDーT強化盾越しに力いっぱい突く為に、両手が必要となって、盾を放り投げた瞬間に、呆気なく夏目と龍彦に、盾の隙間から狙撃され、銃撃の音は止み、残りの2人は逃げた。


柏木の部下が追い、加来が電気を配電図から探し点けると、死体は今射殺した3人だけ。

他に人の気配は一切無い。

しかし、武器の類いや、訓練施設は凄い。

特殊部隊の訓練施設と、武器庫を兼ね備えた状態だった。

龍治が言った通り、龍太郎の開発した武器がかなりの数流れて来ている。


「全部押収だな。加来。」


「はい。全部撮影してます。」


「よし。しかし、他の奴らはどこ行ってんだ。他のフロアどうなってる?」


竜朗が無線で聞くと、一階、二階の捜索に入っていた部下が答えた。


「一階、全く手応え無しです。難なく制圧。台所で泣いている女性の集団が5名程。どうしましょう。」


「一応同行させるしかねえな。つれてっとけ。さっき逃げた奴はどうだ。」


「1人確保しました。でも、もう1人見失いました。申し訳ありません。」


死体を見た竜朗が言った。


「もう1人ってのは、応対に出て来た、灯籠真一って奴じゃねえか。龍、そっちどうだ。」


「座敷牢の鍵が多くて手こずってます。もう少し。謙輔さんはお元気な様子です。」


「ん。未だ確保出来てねえ灯籠真一って奴は、龍治の事えれえ勢いで睨んでた。気をつけてな。二階は。」


ところが、二階の報告はあまり落ち着いた感じでは無い。


「一部屋以外全て制圧。只今、最後の部屋の前で抵抗に遭ってます。地雷だらけで入れません。」


「うーん。大鳥居大輔の部屋だろうな。んじゃ俺行く。」


夏目が嫌そうな顔で、竜朗を見た。


「なんだい。」


「この先、安藤の家と繋がってんですよ。安藤んち顔出して、なんですか、これはって言うんじゃないんですか。」


「そこまでたっちゃんやっといてくれ。俺は大鳥居に用があんだ。それから行く。」


龍彦が反論する前に、夏目がドスの利いたダミ声で脅す様に言った。


「んな酷え抵抗がある所に、真行寺さん無しで行くんですか。」


竜朗は、笑いながら夏目を横目で見た。


「おめえ、その言い方、もう質問じゃねえだろ。脅すんじゃねえよ、顧問を。大丈夫だよ。俺のカンが当たってりゃな。」


「だからそのカンとやらを俺たちは聞いてねえっつーんだよ。」


「聞いてませんだろ。本とにもう。たっちゃん、いいかい。」


「情報局が行って問題無いんでしたら。」


「真行寺さん。」


龍彦は夏目に迫られ、腰を引かせつつ自信ありげな笑みで言った。


「そう怒らないで。多分加納さんのカンは当たってる。5人しか居なかったのは、他の奴らは、大鳥居が殺したんだろ。」


「ーなんですか、それは…。顧問を道連れに自爆する気なのでは…!?」


「違う違う。」


「何がちが…。」


そこに二階の部隊からの無線が入った。


「顧問、大鳥居が顧問を呼べって言ってます。」


「ん。今行くって言っとけ。」


無線相手の部下が叫ぶ。


「ー何が仕掛けられているか分かりません!止めて下さい!」


「大丈夫だよ。俺だって昔は部隊長張ってたんだから。」


夏目が聞く耳持たないとばかりに、また凄んだ。


「大昔の話でしょうが!」


「おま…、お前、失礼過ぎなんだよ!俺は顧問だ!顧問命令!今から大鳥居の部屋へ行く!たっちゃんは安藤にどういうこったって言っとけ!」


顧問命令となっては仕方がない。

なんだか分かっている風の龍彦に肩を叩かれ、夏目は渋々、柏木と竜朗をサンドイッチにして、再び来た道を戻り始めた。
















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