表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
11/174

ちび龍介の受難

鸞の指示で、取り敢えず花のある家から離れ、真行寺を呼びつつ、拠点を近くの寺に移し、家を調べ終えた寅彦が言った。


「あの家は無人だな。

3カ月前まで、お婆さんが1人で住んでた様だが、老人施設に入った様だ。

身寄りも他に居なくて、目下のところ、廃墟的な位置づけ。」


「じゃあ、特に家主に断る必要は無い訳ね。

で、そのお婆さんはそんな危険な物を作りそう、又は関係しそう?

関係者に、そういった怪しい花の栽培をしそうな人は居る?」


「ざっと見たところ、その可能性は低い。

関係者は、電話の相手から行くと、近所のお婆さん友達って感じで、怪しげな相手は居ねえな。

カードで買い物は皆無の様だから、購入履歴は当たれねえけど。」


「そうね…。でも、あの庭の感じでは、園芸が好きという感じでも無さそうね。

この3カ月ほったらかしにしても、荒れ果て過ぎてるわ。

もっとずっとやっていなかった感じね。」


龍介を心配そうに見ているキャサリンを抱いた、まりもも言った。


「あのお婆さんが庭でお手入れしているところは見た事ないよ?

1年前に亡くなったおじいさんがやってるのは、よく見たけど。」


「そう。じゃあ、龍介君とキャサリンを若返らせたあの花は、自然発生的な物と考えた方が良さそうね。」


防護服を着た亀一が言った。


「そいじゃ、処理プラス採取して来るぜ。」


「きいっちゃん、1人で平気?」


「大丈夫。」


そして、鸞は小さい龍介の頭を撫でて、にっこり。


「原因が分かれば、元通りになる方法も、きっとあるわ。元気出してね。」


頷く龍介はトロンとした目をしていた。


「龍、おねむ?」


瑠璃が聞くと、一生懸命怒る。


「ガキあちゅかいしゅるなあ!」


「がきあちゅかい…あ、ガキ扱いするなね?

可愛いんだからもおおお〜!。

仕方ないのよ、龍。

頭は今の龍でも、身体は5歳なんだから、すぐ疲れちゃうのよ。

抱っこしててあげるから、ねんねしよ?」


瑠璃は一体、この状態の龍介をなんだと思っているのか。

あまりの可愛さに、大事な事を忘れてしまっているようだが、このまま戻らなかったらどうしようとかは、今のところ、考えないらしい。

半べそをかいてるような、お口への字の可愛い顔に、更に瑠璃は理性を失う。


「本と可愛いんだからもおおおお〜!」


ずっと見ていたまりもが勇気を出して言った。


「唐沢さん…。すんごく可愛いとは私も思うけど、不安とか心配にはならないの?加納君がこのままだったらどうしようとか…。」


瑠璃はいい笑顔できっぱり言った。


「無いよ!私、龍がこのままでもいい!そしたら、ずっと私が可愛がって面倒見てあげる!ねー?!」


ーねー!?じゃねえよ!


何を言っても可愛いと言われるし、怒った顔まで可愛いで済まされ、亀一達には笑われるし、鸞には何を言ってんだか分からないと言われるし、龍介はもう黙っている事にした。


「でも、お洋服がこのままじゃねえ…。」


瑠璃は龍介を抱っこしながら、龍介から脱げてしまった物を畳みながら言った。


「当然パンツも脱げちゃったみたいだし…。」


「パ…パンツ!?」


驚くまりもに平然として、龍介のトランクスを見せる。


「ほら、可愛いの。赤いギンガムチェック。」


パンツを奪い取って怒鳴る龍介。


「みちぇてんじゃねえよ!」


「みちぇて…見せてんじゃねえよね?もう、可愛いの。はい、龍はねんねよ。いい子いい子。」


しかし、こうして瑠璃の胸に抱かれているのは、かなり居心地がいい事もまた事実。

そして、瑠璃の言う通り、確かに疲れやすい。

あったかいし、背中をトントンされて、すーっと眠りに落ちたところに、真行寺がカイエンでぶっ飛んで来て、転がる様に車から降りて駆け寄って来た。


「龍介えええ!大丈夫かああああ!」


龍介が目を擦りながら真行寺を見た。

イケメン爺さん台無しに綻ぶ真行寺の顔。


「かっわいいなあ!こんなだったのか、お前!」


瑠璃から受け取り、頰ずりするように抱っこ。


「ぐりゃんぱ…。」


なんだか嫌な予感がしないでもないが、一応呼んでみると、更に狂喜する真行寺。


「んああああー!可愛いっ!もういいよ、戻んなくて!本と可愛い!食いたい位可愛い!」


「ですよねー!」


龍介の事をマトモに心配してくれる人は、あまり居ない様だ。


「ああ、そうだ、服な。全部脱げちゃったって寅から聞いたから、取り敢えず買って来たから。

龍彦のは、幼稚園の園服と七五三の羽織袴しか無かったからさ。」


平均の5歳児より小さめらしく、全体的にブカブカだったが、車で真行寺に着せて貰い、なんとか服は着た状態になった。

流石真行寺セレクト。

アメカジ風なお洒落な5歳児になっている。


寅彦と鸞が来た。


「真行寺さんが連絡を取って下さったお陰で、寅次郎さんの所の人が迎えに来て、研究室を貸してくれる事になったそうです。

きいっちゃんが行って、寅之君と調べるそうですから。」


「ああ、有難う。」


「柊木さん、そんな訳で、原因物質は分かったから、それの対処法が分かり次第、ご連絡するわ。」


「有難う…。加納君、ごめんね。こんな事頼んだばかりに、加納君まで小さくなってしまって…。」


「きにちゅんな!」


真行寺の膝の上で笑う龍介。

いつものかっこ良さは全く無いが、まりもはキャサリンを抱いたまま身悶えした。


「可愛い〜ん!やっぱりこのままでもいいかもしれない!」


「でしょお!?」


「そうだろう!?」


ー全くこいつらはー!なんなんだ、グランパまでー!ちっきしょ!覚えてろよ、こんちくしょー!


龍介の心の叫びは誰にも届かず、ムッとした顔で、また可愛いと言われる始末。


そして、帰宅したらしたで…。


「うおおおお!懐かしいじゃねえか、龍!ああ!可愛い!元戻んなかったらどうするって、聞いた時にはエライ心配になったが、もうどうでもよくなる可愛さだな、おい!」


そう言って、竜朗まで抱っこしてスリスリ…。


ー爺ちゃんまでええー!もうヤダ!絶対元戻って、復讐してやるううー!!!!






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ