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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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お笑い枠では無い…(多分)

終業式の日、学校に向かう電車の中で、亀一は暇を見つけては調べた、例の龍介の抜け殻について話していた。


「すんげえ細かく分析して分かったんだが、あの小さな抜け殻も、龍サイズの抜け殻も、身体の毒素っていうか…、なんつーのかな…。

こんなの医薬品じゃ開発されてねえんだけど、スポックさん達の星では有るものらしいんだが、そういった悪い物を全部絡め取ってたんだよ。

尚且つ、免疫力を高めるって優れもの。

それが、なんで大小は兎も角、龍の形になってたのかと、排出された途端、龍サイズになったのかは、解明出来ねえけどな。」


「じゃあ、凄い良いものなんじゃないの…。聞くだけでも気持ち悪いけど…。」


鸞が言うと、頷いて続ける。


「そうなんだ。だから龍の抜け殻は小さいのも含めて、寅次郎さん達が持ってって、その良い成分の抽出を試みてる。」


龍介が物凄く嫌そうに顔をしかめた。


「やめてくれよ…。気持ち悪いなあ…。」


「人類の健康に役立つかもしれねえんだから、我慢しろ。」


「んな事言ったってきいっちゃん。俺の排出物じゃねえかよ。誰がそんなもんありがたがって体内に入れんだよ。」


すると瑠璃が目を輝かせ、うっとりとして言った。


「私は龍の排出物ならいいけどなっ!」


「瑠璃だって、見ただろ?あの気持ち悪い塊…。」


「でもいいのっ!」


「変なの。」


龍介が苦笑していると、寅彦がボソッと言った。


「唐沢は龍ならなんでもいいんだろ。」


「あんな気味悪いのでも?」


ウンウンと頷く瑠璃。


「柊木さんもそうなんじゃない?」


鸞が意地悪く笑って言うと、龍介の顔が途端に曇った。


「本となんなんだ、あいつは…。」


「どうかした?」


「いや、志望大学、同じだろ?他にもうちの学校に、東大受ける奴はいっぱいいんのにさあ…。」


「一緒ねって言って来る?」


「そう。わざわざLINEで。頑張って一緒に行こうねって、お前、理系だろって。」


瑠璃は別段何とも思っていないのか、面白そうに笑っている。


「瑠璃ちゃん、ヤキモチ妬かないの?」


「だって、龍がこんなに嫌がってるんですもの。それに、柊木さん、なんか健気で。」


「健気っつーのか、あれは…。」


「健気よ。ああ、そうだ。ところで龍、一義君が、なんであんな斜めに達観してるのか、蜜柑ちゃんから聞いたんだけど。」


「蜜柑から?まともな答えだったか?」


瑠璃は苦笑して頷いた。


「なんかフラれ続けてるんですって。」


「あの年で!?」


「そう。蜜柑ちゃん曰く、女を見る目が無いそうよ。」


「はあ…。どんな女の子を…?」


「所謂、キャピキャピした派手目というか、まあ、流行り大好きで、目立つタイプのちょっとおバカさんを好きになっちゃうんですって。」


「そら、見る目無えな。なんでまた。」


「蜜柑ちゃん曰く、本人が超地味で、オッさん臭いからじゃないかと。」


確かに一義はオッさん臭い。

12歳には絶対見えない。

もしかしたら、背の高さを除けば、龍介と並んだら、年上に見えてしまうかもしれないという老け顔だ。

それに、あの天然パーマのモサモサ頭。

あれだけ酷い天然パーマなのだから、寅彦の様に短くしてしまえばあっさりすると思うのだが、意外と長めにしているから、尚更むさ苦しい事になっている。


会った事のある寅彦が思い出して笑っているのをたしなめつつ、龍介が言った。


「でも、いい奴なのにな。」


「だから見る目無いって蜜柑ちゃんは言うのよ。キャピキャピした、流行りを只管追い掛けている様な子が、中身なんか見ると思う?」


「思わねえな。なるほどね。」


「そんな訳で、いつも『リア充爆発しろ』と呟いていると。」


「ー苺もしょっ中言ってるぞ。前にカップル歩いてると…。」


「そ、そうなの…?。じゃあ、私達も言われてるの…?」


「いや。なんか身内はいいらしい。」


「よく分からない線引きね…。」


「そうなんだ。」


亀一が面白そうに言った。


「苺と一義くっつけりゃ、丸く収まるんじゃねえの?」


しかし、龍介は首が横に折れるのではという勢いで、首を捻った。


「それはどうだかなあ…。苺の趣味はお父さんだぜ?いくらオッさん臭く老け込んでても、本当のオッさんとオッさん臭えのは違うだろう?」


「それもそうだな。大体、真行寺さんっつたらもう、完全無欠のイケメンオヤジだしな。オッさん臭いフツメンじゃ厳しいか。」


「お父さんが完全無欠って…。よそ様の家の玄関で、『しずかのおっぱいは俺のだあああ!』って叫ぶ男だぜ?完全無欠じゃあねえだろ?」


一同吹き出す。


「まあ、良いんじゃねえの。真行寺さんはお笑い枠で。」


寅彦が言うと、更に爆笑。




その頃、龍彦は盛大なくしゃみをしていた。


「また龍介がなんか良からぬ事言ってんな…。」


何故か分かってしまう父は、各国のエージェントから送られて来る、定時報告をパソコン上で読んでいた。


「京極…、面倒だからって、フランス語とごちゃ混ぜに書いてくんなよ…。」


今度は中国…。


「一本〜。お前もかあ…。」


今度は中国語とごちゃ混ぜ。

副局長の西条が顔を覗かせたので、聞いてみる。


「こいつら、いっつもこうなんですか?報告書。」


「そうなのよ。」


そう言って覗き見て笑う。

言っておくが、西条は大分太ってはいるが、イタリア製のスーツをバッチリ着こなした、れっきとしたおじさんで、オカマでも、オネエでも無い。

こういう口調なだけだ。


「あら、でも今までより酷いわね。真行寺君が本部長になったからじゃないの?」


「あいつら…。」


「とか言って、真行寺君も急いでると、全部英語だったじゃないの。」


「いや、全部ならまだいいじゃないですか。部分的にって、却って読みづらいんですが。」


「それはそうね。」


「あ、すみません。ご用件は?」


「今度の国際国防会議なんだけど。」


国際国防会議などという物は、公にはなっていないが、秘密裏に存在する国防大臣である竜朗はちゃんと出ている。


「ええ。イギリスですよね。」


「そこにね、加納一佐も行く事になったらしいのよ。」


「え…。今回は危険だからって事で、止めとくんじゃなかったんですか。」


「そうなんだけど、急遽そういう事になっちゃって…。ISISの掃討作戦で、加納一佐に相談したいって事らしいの。」


「うーん…。そうですか…。で、うちからも護衛を出すという事ですね?」


「ええ。行ってくれる?」


「ーへ?俺え?」


「そう。あなた。」


「だって、局長行くんですよね?会議に出席しなきゃだから。俺まで行っちゃって大丈夫なんですか。」


「それは仕方ないじゃない。なんとかするわよ。

イギリス、堺君がチーフになってまだ日も浅いわ。彼だけに任せるのは、ちょっとね。

それに、図書館側からも要請が来てるの。

勿論、図書館からも、精鋭が行くけど、安藤の動きが怪しいらしいわ。」


「安藤…。遂に動き出しましたか。」


「その様ね。安藤の身内ってのがイギリスに何人か渡ってるわ。恐らくミスター・Xが送り込んだ刺客よ。素性は、元自衛官に傭兵、公安。手強いわよ。」


「何人です。」


「6人。」


「ー承知しました。」


龍彦の横顔が、ほんの一瞬だが、緊張していた。


















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