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龍介くんの日常 2  作者: 桐生 初
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龍介から出た…

「龍…。これは何…。」


しずかがやっとという感じで聞くと、龍介は、真っ白になった顔で、腰にバスタオルを巻きながら答えた。


「いや…、くしゃみして、目え開けたら、あったんだよ…。」


「と…、兎も角…。えー、洗い終わったの…?」


「うん。」


「じゃ、出ておいで…。」


「こ…、これは…?」


龍介は、風呂場の床に転がる龍介を指差しながら聞いた。


そう。

なんと、龍介の身体が、そこにうつ伏せで転がっているのである。

ここに龍介は居るのに、身体だけ増えた感じだ。


しずかは、転がっている龍介を仰向けにしようと顔を覗き込み、虫を見た時並みの叫び声を上げた。


「ぎゃあああああ!!!目が無い!!!」


思わず見てしまった3人も叫ぶ。


「ぎゃああああ!!!気持ち悪いいいい~!!!」


そして触ったしずかは更に衝撃的な事を言った。


「こ、これ、中身も無いわよ。龍の外側だけ。皮と髪の毛だけね。」


中には空気でも入っているのか、見た目はちゃんと立体的だったが、試しにしずかがクルクルと巻いてみると、シーツの様に巻けてしまった。


自分の身体がシーツ状に巻かれてしまった龍介は、もう泣きそうである。


「これは…。きいっちゃんかしらね…。超Xファイルだわよ、龍…。」


「そ、そうだな…。」


そしてまたくしゃみで、龍介の皮が出た。


「うわあああ!!!嫌だ!なんか嫌だ!凄え嫌だ!!!」


気持ちは分かるので、しっかりしなさいとも言えず、しずかは2つ目の龍介の皮もグルグル巻きにして、2つとも抱えて、龍介に服を着て出て来る様に言うと、瑠璃を呼び、寅彦の部屋に入った。


「寅ちゃん…。龍からこんなもんが出るんだけど…。」


見た寅彦も、瑠璃も、勿論真っ青になって悲鳴を上げる。


「んぎゃあああああ~!!!何だよ、しずかちゃん!これ、龍の抜け殻じゃねえかああああ!!!」


「いやあああああ!!!目の無い龍なんて、怖すぎるうううう~!!!」


「あたしも、久々にくらっと来たわ…。ツー訳で、これはきいっちゃんかしらね…。」


「そうなんじゃねえかな…。うちの叔父さんに頼んだら、龍の命が風前の灯火(ともしび)に…。」


しずかがより青くなり、瑠璃が泣き叫ぶ。


「加来君、それだけは止めてえええ!!!」


「わ、分かってるから、きいっちゃん呼ぼう。」


「お願いします…。私は蜜柑のお仲間帰して来るわ…。」


寅彦は亀一にメールを打ちながら、呆然とグルグル巻きにされた龍介の抜け殻見ている瑠璃に言った。


「しずかちゃんが動揺するとこなんて、虫以外で見た事無えな…。これ置いてっちまうし…。」


「本とね…。だってこんな事って…。ああ!龍が1番ショック受けてるはず!私、行って来る!」


「だな。そうしとけ。」


龍介を探すと、龍介の部屋で1人ぽつんと、本棚の前にいつもの片膝を立て、片脚を伸ばした状態で、呆然と座っていた。

龍介の前には、またもや抜け殻が転がっている。


「龍、大丈夫…じゃないよね…。」


瑠璃が龍介の隣に座ると、龍介は涙目で瑠璃を見つめた。


「くしゃみだけでなく、咳でも出るらしい…。」


「咳でも?そうなんだ…。本当、なんだろうね…。今、加来君が、長岡君を呼んでくれてるからね…。」


「うん…。」


瑠璃が手を握ると、龍介は不安そうに握り返して来た。


ーこんな龍、初めて見るわ…。でも可愛い…。


「瑠璃…。」


「なあに?」


「あの布が原因だろうか。」


「あ…、落武者さんの頭の下にあった?」


「そう。いくら古くたって、手に取っただけで、粉になるなんてさあ…。なんか妙だよな…。」


「そうね…。私もそれは思ったわ…。」


龍介は瑠璃の頭の上に、自分の頭を乗せた。


ーあら!?なんか恋人同士みたーい!


多分、立派な恋人同士のはずだが、龍介のせいで、小学生のお友達付き合いから脱していないもんだから、こんな事でも嬉しい瑠璃。

ところが、なんだか様子がおかしい。


「瑠璃、ごめん…。だるくて動けなくなって来た…。」


「えっ!?大丈夫!?」


龍介の顔を見ると、さっきよりももっと顔色が悪くなっていた。


「凄え…腹減った気がする…。」


ーお腹が空いたくらいで、こんなになるって、なんか変ね…。この抜け殻が出てるせいなのかしら…。


そうは思いつつも、瑠璃は龍介その場に寝かせ、食事を取りに走った。


そして龍介は驚いた事に、4人前の食事を平らげると、眠ってしまった。

寝顔の顔色は悪く、しずかと寅彦、瑠璃に双子は、そのまま龍介の寝顔を心配そうに見つめ続けていた。


「ごめん!遅くなった!龍は!?」


亀一が来た。

取るものも取りあえず、蔵からそのまま急いで来てくれたらしく、一応形だけ整える為に着せられている軍服のままだ。


「きいっちゃん、ごめんね。有難う…。」


しずかの心配しきった顔を見て、亀一は真剣に言った。


「俺がなんとかするから、しずかちゃんまでそんな顔すんな…。

龍太郎さんも凄え心配して戻りたがったんだけど、今、どうしても手が離せない実験に入っちまっててさ…。

任されて来たから、絶対俺がなんとかする。だから、安心しとけ、しずかちゃん。」


「うん…。宜しくお願いします。」


「ん。」



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