第十四話「戦後」《4》
サイクスとの戦いから十一日目の朝を迎えた。
この日数は覚えていた。
しかしその日数を思い出す度に、サイクスの目と言葉が頭に浮かぶ。
「お前は……良いよな」
何回も思った。
同情した。
が、同情しか出来なかった。
サイクスは実験される為に生まれた。
そしてその実験は失敗に終わった。
廃棄されるのが決まったのだ。
今までの実験台は、そうなっていった。
廃棄されるのが当然だった。
が、SIKS〇二二号はそれを受け入れることが出来なかった。
サイクスは抜け出した。
外見をファイに変えて。
目的はただ一つ、『存在が消えるのを逃れる』。
それはシャラジューマから抜け出すことによってすぐに達成された。
それは目的を失うのと一緒だった。
目的が達成された瞬間、『生きる』目的を失ったのだ。
サイクスはさまよった。
森の中を走り、走り、走った。
目的もなく、ただ走った。
ふと気付いた時には目の前に村があった。
村には赤い旗が掲げられている。
知識はある。
ここはシャルゼイナ王国の領土だ。
サイクスはフードを被った。
体が勝手に動いた。
体が勝手に、その村へ向かって行ったのだ。
村の入り口まで来た時、赤い鎧を着た者と目が合った気がした。
サイクスは何も望んでいなかった。
どんな反応でも良かった。
そう思っていた。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
その兵士の叫び声を聞く前までは。
兵士はすぐにそこを逃げた。
サイクスは止まった。
そこを去っても良かった。
が、体が動かなかった。
しばらく経つと、兵士が銃を持ってやってきたのだ。
五人。
慎重に、警戒しながら、五人はやってきた。
五人が殺気を出しているのは分かっていた。
それでも、そこから動くことも、何か言葉を発することも出来なかった。
心の何処かで期待していたのだ。
その時、自分の腹部に激痛が走った。
五つの銃声と同時に、だ。
期待はしてはいけない。
そんなことは分かっていた。
分かっていたが、してしまったのだ。
だが分からなかった。
何故、自分に殺気を向けているのか。
分からなかった。
分からないが、激怒した。
怒りはその五人に向けてではなかったのかもしれない。
「俺が、何をしたって言うんだーーーーーー!!!」
サイクスは魔法を使った。
大量の風を出し、目の前にあるもの全てを吹き飛ばした。
兵士も、旗も、家も。
そして、人間への期待も。
が、実は吹き飛ばしきれていなかった。
人間への期待は。
心の中で、心の何処かで、期待していたのだ。
サイクスは知らない。
この兵士五人も知らない。
一年後、ファイを通して、戦うことになるなんて。




