第十三話「悲哀」《3》
「ファイ」
僅かに残っている煙の奥からシュハードが言う。
「俺がここにいるのはイルドの作戦のおかげだ。あいつを嫌わないでくれ」
ファイは小さく頷いた。
シュハードはイルドを気に入った様子だった。
何故かはまた今度聞くことにする。
「……何でだよ」
サイクスがそんなことを発したような気がした。
声が小さすぎて上手く聞き取れなかったが。
右手には拳が作られている。
その拳を広げ、シュハードに右手を向ける。
「死ね」
サイクスは右手から大量の雷を発射させた。
それもとても高速に、だ。
避けるどころか発射したことを確認する間もなくそれはシュハードにあたった。
「ぐっ……」
当たった瞬間、数歩後ろによろめいてしまった。
しかし肉体的なダメージはそれほど大きくない。
『雷』の能力者に、『雷』の魔法はそれほど効かないのだ。
しかし、連続的な、それも強力な技だと話は違う。
「まだだ!!」
サイクスは自分の怒りをぶつける様に攻撃をしていた。
シュハードに体勢を整える暇を与えず、また雷を発射させる。
もう一発、さらに一発、そしてまた一発。
シュハードが立っている家も崩れ始めた。
「止めろー!!」
ファイは後ろに回り込んだ。
が、既にサイクスは移動していた。
「ここだ」
シュハードがいる方向から聞こえた。
正確に表すと、その真上だ。
シュハードの真上に移動していたのだ。
それも非常に高い位置に。
ファイは頭も体も追いつかなかった。
サイクスは自分を殺せない。
ならば代わりにどうするか。
サイクスは言っていた。
精神を殺すと。
ファイは脳だけ追いついた。
そして嫌な映像が思い浮かんでしまう。
サイクスが空中で、真下にいるシュハードをどうするか。
ファイはそんな映像はすぐに忘れたかった。
そんなことがあって欲しくないから。
それは自分が阻止しなければならない。
ようやく体が追いつきそうだった。
本能に。
その時、シュハードは燃えた。
立っている家ごと。
シュハードが立っていた家が爆発したのだ。
その爆風で、シュハードは高く宙に舞う。
その真下には激しく燃え盛る炎が。
ファイは駆けつけたかった。
しかし能力が追いつかない。
本能だけで体が動くがバランスを崩し、足が縺れる。
それでも前へ進んだ。
シュハードが落ちる前に。
落ちるまで数秒。
それくらいあれば楽に助けることが出来る。
混乱がなく、邪魔する者がいなければ。
ファイは空中に飛び上がろうとした。
が、それは阻止される。
目の前に現れたサイクスにより。
ファイは後ろに吹っ飛ばされた。
すぐに体勢を立て直し、風を足に集めたが、体が動かなかった。
もう、シュハードの姿は消えていたのだ。




