第十三話「悲哀」《2》
時は、2日前となる。
シュハードはこの日、サイクスの元へ行った。
それにイルドが付いてきたのはこの時、シュハードもサイクスも知らなかった。
「二回目だな」
サイクスがシュハードを見た時の第一声はこれだった。
レクシィ城で既に二人は顔を合わしていたのだ。
「俺を操るのか?」
シュハードはもう覚悟を決めていた。
しかしサイクスはにやけた顔で言った。
「気が変わった。それはしない」
「!!」
シュハードは驚きを隠せなかった。
今、シュハードは何もされていないのだ。
しようと思えば今すぐにサイクス、それに周りにいるケイズ達を攻撃することが出来るのだ。
しかし分かっていた。
シュハードの身動きが取れたとしても、取れなかったとしても、シュハードは何もしない。
いや、出来ないのだ。
サイクスはそれを充分に承知していた。
だから何もしないのだ。
しかしその後、その後の状況で、シュハードは分からなくなった。
シュハードは縛られることもなく、監視がいることもなく、ただ狭い部屋に居させられた。
逃げようと思えば軽く逃げれるかもしれない。
しかしそんな行為をする気はさらさらなかった。
「おい」
シュハードが、眠りに付きそうだった頃、微かにだが、声が聞こえた。
部屋の外からだ。
本当に小さな声だった為、確かとは限らないが。
「俺だ。イルドだ」
「なっ!!」
シュハードはつい大きな声を出そうとしてしまい、すぐに口を閉じた。
声を出したくもなる。
何故こんなところにいるのか分からなかった。
「ここで話すぞ」
部屋の外から言う。
イルドは何か伝えたいようだった。
「俺が話す間、何も喋らないで欲しい」
その言葉には熱が込められていた。
こんなところまで来て言うことだ。
とても重要なことくらいはシュハードはすぐに分かる。
「まず、俺はお前を殺す」
シュハードはまた声を出しそうになった。
自分を、殺すと言った。
「殺すと言っても、お前の分身だ。お前は水が使えるんだったんだな。それでお前の分身を作り、俺がその分身を殺し、サイクスとか言う奴に見せるんだ。そしたら、そいつはお前が死んだと思い込む」
段々言いたいことが分かってきた。
「そしてお前は時が来るまで隠れ、その時が来たら、ファイ達を助けるんだ。何か言いたいことはあるか?」
「あぁ。俺が死んだら『人質』はどうなるんだ」
「それは俺がなる。俺は操られるが、問題はない」
さらりと言った。
自分が死ぬかもしれないというのに。
「もう一つ。この『イルドがシュハードを殺した』という情報をファイ達が聞いたら、混乱するんじゃないのか」
「遠まわしな言い方だな。混乱というか、俺が裏切り者と疑われる、だろう?そんなのはどうでも良いんだ。ただ、俺はお前がいたほうが戦いは有利になると思ったから、この作戦を思いついた」
シュハードは驚かされた。
恐らくイルドは、ケイズの移動に付いて来た。
ならば、もうその時にはこの作戦を思いついていたことになる。
しかも自分が裏切り者になる作戦をだ。
もしこの男がシャラジューマだったら、もしこの男が国の兵士だったら。
イルドはとても優秀な人材になっていただろう。
「分かった。分身を作ろう」
そしてイルドの作戦通り、事は進んでいった。
「こんな奴、信用出来るか!俺が人質になる」
これがシュハードを殺す動機だった。
そして戦いの当日、レイン、ラーチャ、リスター、シントス、様々な者達の救出に成功した。
だがもう一人、最も重要な人物を助けなければいけなかった。




