第十三話「悲哀」《1》
「はぁ、はぁ」
ファイの体力はもう少なかった。
魔法はまだ使える。
しかし速度も威力も確実に落ちていた。
いつの間にか戦場は移動し、レインが倒れている場所はもう見えなくなっている。
ファイが隣の家の方へ飛ばされた時、それは起きた。
サイクスが立っていた家が壊れたのだ。
上から落ちてきた雷によって。
自然の雷なんてものではない。
もっと大きな、もっと危険な雷。
つまりそれは魔法だった。
その雷はサイクスを、家をも崩すほどの勢いで攻撃した。
一度ではない。
もう一度、さらにもう一回、そしてまた。
家が崩れた影響で、白い煙がそこを隠す。
ファイは考えた。
この魔法を使ったものは、恐らく味方だ。
そして雷を使うことが出来る者。
「まさか……」
ファイは一人の人物が思い浮かぶ。
もしかしたら、もしかしたら、正気に戻ってくれたのではないか。
そんな期待を持って、煙の奥にある人影を見る。
その人物が雷の能力者だろう。
「ジェイダスさん!!」
ファイは影に向って叫んだ。
しかし影は反応しない。
影は応えてくれなかった。
「誰だ!!」
煙の中から声が聞こえた。
自分にそっくりな声。
サイクスだ。
煙の中から、ファイの右前の屋根の上に着地した。
「はぁ、はぁ」
無傷だった。
しかし息切れをしている。
恐らく、咄嗟に魔法を使い自分を守ったのだろう。
サイクスは、影に注目した。
すぐ状況を理解したのだろう。
この人物が自分を攻撃した、と。
煙が薄くなり、影の姿が見え始めた。
服装。
マントだった。
シャラジューマのものではなかったが。
影はそのマントに付いているフードを被り、顔を隠していた。
ジェイダスではないことだけ分かる。
先程本人を見て、この服装ではなかったし、雰囲気が違う。
煙が完全に消えかかったところで、影はフードに手を伸ばした。
そのフードを、ゆっくりと、ゆっくりととった。
するとその影の顔が、しっかりと見える。
その顔を見て、サイクス、ファイは共に驚いた。
耳にピアス。
瞳、髪共に金色。
いつも通りだった。
目はいつもより鋭くなかったが。
その者の口元がにやけ、小さく言った。
「ファイ……」
切なそうな、しかし嬉しそうな。
そんな複雑な思いで声を発しているように見えた。
ファイも複雑な気持ちになった。
疑問と、歓喜。
しかしすぐに疑問なんてものは置いてしまう。
そして言った。
「シュハードさん!!」
その影とは、シュハード・ダリセルネ。
死んだはずの、シュハードだった。




