第十二話「間者」《5》
「……ふぅ」
リスターは深いため息を吐いた。
シントスとリスターは壁に寄りかかり、座っていた。
他の者は、みな気絶していた。
全員大きな傷はない。
「助けられたね」
「はい……」
シントスは笑顔だったが、リスターはそれほどでもない。
確かに、助かったのは嬉しいが、助けられたのだ。
それも自分の嫌いな者に。
いや、彼はその部類に入っていないのか。
結果的には、彼が来なければ自分はこの世にいなかった。
それが事実だった。
それがリスターにとって悔しかった。
「リスター君。元々、魔法なんてものが使える者に勝てるわけがないんだよ」
リスターの表情を見て、シントスが言う。
「でも!!」
「うん。分かってるよ。だから……国に戻ったら訓練だね」
笑顔だった。
リスターもそれにつられて顔が緩む。
「……はい。そうですね」
そして笑った。
そんな様子を見てる男がいた。
その男は、屋根の上で二人を見ている。
男は、ガレスト・フォールだ。
「サイクス……それほど気を付けなくてもよさそうだ」
ガレストは呟く。
そしてまた、呼びかけるように言った。
「ミリア」
十秒……十五秒経ったときにその者は現れる。
ガレストの後ろで、少し息切れをし、汗をかきながら立っていた。
『移』の能力者だ。
瞳は青く、紺色の髪は肩にもう少しで触れるという長さ。
一見美少年のように見えるその者は、女性だ。
名を、ミリア・ハースと言う。
上級者であり、ガレストに指南されたものであり、そしてガレストの親友と言える者であった。
「ミリア。 №5 に伝えて欲しいことがある」
ガレストは№5を名前で呼ばない。
№5とは、気が合わないというか、苦手だった。
何をしたいのか分からないのだ。
が、それは全ての者に言えることだったが。
「分かりました」
ミリアは丁寧に応える。
ガレストが内容を伝えると、すぐにミリアは消える。
『移』の能力。
その為、№5内での連絡は、全てミリアに任せていた。
勿論、ガレストも『移』の魔法は使える。
しかし、ガレストがそれをしてしまうと、ミリアの立場が無くなる。
普通に、上級者の任務をこなせば良いのだが、ミリアはそれを認めなかった。
どうしても、ガレストと行動を共にしたかったのだ。
ミリア・ハース。
彼女がガレストに呼ばれる前いた場所。
それは、サードがいるレクシィ城だった。
ガレストは、そのサードとミリアが戦闘の直前の状況だったなんて、全く知らなかった。




