第十一話「深夜二時」《5》
深夜2時。
サードはガレストと話していた。
この時、まだサードは本物だった。
しかしサードは、この戦いに参加するつもりなんてなかった。
ガレストと会話してからではない。
もっとずっと前からだった。
そしてサードは実行する。
サイクスとの戦いが決まってから考えていたことだ。
サードは右手を前に出す。
するとそこに水の塊が出来た。
『水』の魔法だ。
その水は一瞬で形が変わる。
人型……それも、容姿がケミアにそっくりに。
これほど高速に作れるのは、手馴れな為だ。
普通ならこれほどのものは、早くて数分は掛かる。
それをサードはほんの数秒でやった。
サードはその水のケミアを、自分の代わりに家に帰らせた。
サードは元からそうするつもりだった。
自分が戦いに参加するなんて、最初から選択肢にすらなかった。
「ふっ」
サードは偽ケミアを見て、不敵に笑った。
自分は振り返り、東を向く。
行き先は決まっていた。
レクシィ城。
すぐにでも行きたかったがそれは出来ない。
東の入り口まで歩くのは面倒だったのだが。
ここで魔法を使ったら、ガレストにばれるだろう。
それはそれで面倒だった。
時間も余裕があるので歩いた。
しばらく歩くと、東の入り口に着く。
ここまで来たのならもう大丈夫だった。
サードはそこで一瞬にして消えた。
『移』の魔法。
向った先は、当然レクシィ城だ。
そこにはサイクス達の気配はなかった。
もう既にスレイタウンにいたのだ。
代わりにいたのは、スレイタウンの住人だった。
いたる所に倒れていた。
サードはそんなことは気にせず、堂々と城内を歩いた。
「やはり……な」
サードは『影』に言った。
その影は、少し遠くでサードを見ていた。
その影は、ガレストではない。
「俺が目的か?」
影は問いかける。
「違うな。俺はお前に興味が無い」
「なら何しに?」
「さぁな」
影はシャラジューマのマントを着ていない。
しかし影はサードを知っていた。
サードもまた、影を知っていた。
「変装はいいのか?」
「いつから気付いた」
「スレイタウン内での尾行に、気付かれていたことに気付いたときから疑っていた」
「あ、そう」
影はサードに背を向けた。
ここで戦いは起きない。
二人はそれを分かっていた。
ようはここでの戦いを望んでいいのだ。
「サード……お前の目的は」
「俺が話すとでも?」
「……そうだな」
影は、その場から去って行った。




