第十一話「深夜二時」《2》
「……」
シントスはふと思った。
大丈夫なのだろうか、と。
こちらは思ったよりもうまく運んでいない。
「シントス殿、大丈夫です。あの二人ならやってくれます」
シントスの心を読み取ったようにリスターが言う。
あの二人、ケミアを抜いた、二人。
時間を、深夜の二時に遡る。
リスターはとある家で、眠れずにいた。
あることが気になっていたのだ。
そしてつい先刻、さらに動いた。
ある者が一人、何も言わずに家を出たのだ。
リスターが気になっていた者……ケミアだ。
リスターは少し経った後、自分も家を出た。
「遅くなってすいません」
リスターは外でそう言った。
目の前には人がいる。
「いや、別にいいよ」
その者は、シントスだ。
「で、何なの?」
シントスは尋ねた。
リスターが昨日、ファイの元から離れる前、こう言った。
「深夜の二時に、会いましょう」
場所は、この小道。
シントスは、この時から分かっていた。
リスターがファイの元から離れることを。
そしてそれが、何かを試そうとしてやったことだと。
「ケミア……って、分かります?」
「……ごめん」
シントスは素直に謝った。
顔と名前が一致しない……それが事実だった。
「あの、えっと、いつも笑顔の奴です」
「あぁ、何となく分かったよ」
「何となく……ですか」
リスターは苦笑いをした。
「で、本題なんですけど、そのケミアが……偽者かもしれないんです」
「??」
シントスは首を傾げた。
驚きはあった。
しかし疑問のほうが大きかった。
リスターは深刻な顔をしている。
『かも』と言っているが、確信があるような口調だった。
しかし何故そう思うのかがシントスには理解出来なかった。
ケミアには、不思議な行動は見当たらない。
「理由をまず説明しますね」
そんな表情を見て、リスターが言った。
「最初に変だと思ったのは、シントス殿に会う前、目を覚ました時です。その時、ケミアが起こしてくれたんですけど、妙じゃないですか?他の人たちはもっと後に目を覚ました。なのにケミアは起きていた。ケミアはそれほど手馴れなわけではありません。でも、あんなに平然と起きていられるのは手馴れの証拠。ケミアではないということです」
しかしこれは間違いの可能性もある。
ケミアが隠れて鍛錬をしていて、手馴れになっただとか。
シントスもその可能性に気付いたが、言わなかった。
まだ続きがあった。
「次がシントス殿、あなたと会った時です。私達が、シントス殿のお顔を忘れるわけがありません」
「え?……ありがと」
リスターが強く言い切ると、シントスが頬を赤くした。
リスターはさらに強く続けた。
「それなのに、ケミアは最初、シントス殿に会っても反応がなかったんです。私が頭を下げるとようやく同じ事をしました。そう、ただ、『同じ事を』。それは、シントス殿について知らなかった。即ち、本物のケミアではありません」
「は、はは……」
シントスは苦笑いをしていた。
リスターは自分の姿を見た。
いつの間にか右手に拳を作り、胸に当てている。
力説していたのだ。
「す、すいません」
リスターはすぐに手を戻し、一歩下がる。
シントスは笑っていった。
「んじゃ、そこの人達にも、意見を聞きましょう」
シントスはくるりと後ろを向いた。
そこには三人人が立っていた。
「隊長!」
その内の一人が言った。
その三人とは、ケミアを除いた間者だった。




