第十一話「深夜二時」《1》
「レイーン」
街の北で、ファイが叫んでいた。
レインがいるはずの所に来たのだが、姿は見えない。
周りに、戦った痕跡だけ残っている。
しかし、戦いの場所が移動したとかもありえる。
「レイーン」
ファイはとにかく叫んだ。
そんなファイを、見下ろしている者がいた。
気配を消し、近くの家の屋根の上に立っている。
体をマントで覆い、それに付いているフードを深く被っていた。
「まず自分の心配をしたらどうだ」
「!!」
ファイは上を見た。
ファイはようやくその者の存在に気付いた。
その者はそれを見て、フードをとった。
髪は黒で、瞳は茶と言ったところ。
その目は鋭く、ファイを睨みつけてるようにも見える。
そしてそれらも合わせ、顔つき、背、全てが……。
「ま……さか」
ファイは一歩下がった。
その者は少しにやけ、口を開いた。
「俺がサイクスだ」
サイクスはファイを指差す。
「俺はお前を……殺してやるよ」
サイクスは小さく、そして強く言った。
ファイはその殺意が籠められた言葉に耐え、サイクスのいる前の家の屋根に跳んだ。
「俺が死んだら、お前も消えるぞ?」
サイクスは腕を組んで言う。
「それも良いかもな」
そんなことは分かっている、と言いたげな表情だった。
「だが、俺が殺すと言っているのは、お前の精神だ」
「なっ!!」
ファイは思わず声を出した。
意味は分かる。
精神を殺す。
ようは、ファイの仲間を殺す、ということだろう。
ファイはサイクスを睨みつけた。
既に右手に拳が作られ、足元には風が集まっていた。
サイクスはそれを見ても全く顔つきを変えず、腕を組んだままだった。
それどころか、魔法を使う仕草は全く見られない。
それを見て、ファイは消えた。
サイクスの背後を一瞬で取った。
空中にいるファイは、そのままサイクスを切り刻もうとした。
「!!」
が、見えていた背中が消える。
「ふっ」
後ろから微かに笑った声が聞こえた。
ファイは後ろを振り向く間もなくサイクスの右足に背中を潰され、そのまま屋根に押しつぶされた。
ファイは屋根の上でうつ伏せとなり、その背中には、重心を乗せたサイクスの右足があった。
未だにサイクスは腕を組んでいた。
しかしファイはそれを確認することが出来ない。
「諦めるんだな」
「何を……言っている」
「!!」
サイクスがほんの僅か、力を緩めた。
ファイはその瞬間、サイクスの足元から消えた。
「みんなはそう簡単に死なない」
ファイの姿は、隣の家の屋根にあった。
ファイは体勢を低くし、風を足にまた集めた。
「そうか……」
サイクスはようやく腕を解いた。
そして、ファイの方向を向き、同じ体勢を作った。
「肉体的にもやられたいようだな」
二人は、同時に消えた。




