第十話「開戦」《4》
街の東で、ラーチャが走っていた。
向う先は、レイン。
八時少し前に、変な感覚になり、声が聞こえたりと混乱していたら、八時丁度に音が聞こえた。
爆発音。
それもレインがいる方向からだ。
ラーチャは気付いたら体が動いていた。
自分には何も出来ないだろう。
しかしそれでも何かしたかったのだ。
武器は腰にある短剣ただ一つ。
剣についてはリスター達から習っている。
しかし武器一つは心細かった。
「あっ…………」
急にラーチャの足が止まる。
目の前に人が現れたからだ。
道幅はそこまで広くはない。
分かれ道は無く、真っ直ぐの一本道。
そこに人が二人いた。
「……」
ラーチャは言葉が出ない。
その者は知り合いだった。
が、会話出来ない。
目を見れば分かった。
操られている。
その者とは、イルド・サンシルだった。
一番会いたかった者。
しかしここでは一番会いたくなかった。
この場で出会ったら、戦闘、それしか選択肢はない。
いや、もう一つある。
逃亡。
ラーチャはすぐにそれを選んだ。
ラーチャは後ろを向き、今走ってきた道を走る。
全力で。
しかしつい先刻も走っていた為、体力がもうなかった。
それでも走った。
イルドとは戦いたくない。
その一心で。
が、体力では当然勝てなかった。
イルドがすぐ後ろで剣を右手に走っていた。
このままだと後ろから斬られる。
ラーチャは咄嗟に短剣を取はり出し、体を思いっきり右に動かす。
すぐに体勢を整え、何もないところに剣を振り下ろしているイルドを見る。
危なかった。
少しでも遅かったら斬られていた。
そんな状況、考えたくもなかった。
ラーチャは短剣を右手に逆方向、レインがいる方向に走った。
短剣はもしもの為、使いたくはなかった。
「はぁはぁ……」
しかし体力はもうなかった。
止まるわけにもいかないが、走り続ける体力もない。
「イ……ルド君……」
ラーチャは震えた声を出し、止まる。
後ろを向くと、やはり剣を持ったイルドが立っていた。
「はぁはぁ」
足が痛い。
横っ腹も痛い。
苦しい。
そんな感情を抑え、イルドを見た。
やはり死んだ目をしている。
ラーチャは短剣を右手でしっかりと持った。
「はぁはぁ」
ラーチャは息切れをしながらも、それを選んだ。
イルドと、戦うという道を。




